スタッフはもちろん、 地域の方たちも含めて、Amazonのフルフィルメントセンターが すべての人に価値のある場所になって欲しい
「プライムデー」が始まると、全国に20か所以上あるAmazonの物流拠点であるフルフィルメントセンター(FC)のスタッフたちも気合いが入ります。そんなスタッフに感謝を伝え、楽しく働いていただくために、毎年この時期、すべてのFCが企画しているのが、従業員向けの応援イベントです。これまでは特別なお菓子を贈ったり、ランチを無料で提供したりしてきましたが、今年は地域貢献も意識した内容に。新型コロナの影響を受けているFC近隣の企業や商店、福祉事業所などとのコラボが全国のFCで行われました。その一つ、京都府南部にある京田辺FCは、地元で農業と福祉の連携に取り組む社会福祉法人「さんさん山城」と連携。さんさん山城施設長の新免修さんとFCを率いるサイトリードの梶山浩史さんにコラボの模様をうかがいました。
高級抹茶を使用したクッキーをスタッフ全員にプレゼント
京田辺FCが用意したのは、2500個の「濃茶クッキー」。さっくりとした軽い食感の生地は、上品でふくよかな抹茶の香りが口のなかいっぱいに広がる「さんさん山城」の人気商品。それもそのはず、クッキーには茶道家が愛飲するような質の高い宇治抹茶がたっぷりと使われているのです。
イベントの初日となった6月21日には、さんさん山城施設長の新免修さんと、実際にクッキーを製作してくださったスタッフのお二人も参加。新型コロナの感染予防を徹底した配布コーナーで、京田辺FCのメンバーと一緒に、出勤するスタッフたちに「濃茶クッキー」とミネラルウォーターを渡してくださいました。
京田辺FCで今回のイベントを進めたのは、ボランティア・グループ「Amazon Gives」のメンバーです。Amazon Givesは全国のFCに存在するボランティアネットワークで、FCで働く人なら誰でも参加が可能。京田辺FCサイトリードの梶山浩史さんは、今回のプロジェクトのリーダーでもあります。
「こうしたイベントは毎年恒例として行われていますが、イベント後も楽しさが続くように、地元の人と人を結びつけるストーリー性が欲しいと考えていました。そこで今年、思いついたのが、新型コロナウイルスによる影響を受けている地元を支えようということです。FCのなかで完結するのではなく、FCの周囲の地域の人たちと交流する機会になれば、イベントにストーリー性が加わり、より参加していただく方のモチベーション向上にもなると考えたのです」(梶山さん)
社会福祉法人の利用者が地域農業の担い手に
京田辺FCのスタッフが「さんさん山城」の存在を知ったのは、ホームページがきっかけでした。同施設は、聴覚障害者の就労支援の場として2011年に開所。現在は、精神障害者や知的障害者も含め、毎日、25人ほどが、食品・菓子加工、縫製・工作、併設されたカフェの調理や給仕の仕事で働いています。しかも、食品・菓子加工とカフェ
で使われる食材の一部は、自分たちの畑で栽培し、収穫したものです。
「都市化が進む京田辺市ですが、もとは農業が盛んな場所です。なかでも宇治抹茶は名産品です。ところが、高齢化が進み、農業は担い手不足に。そこで、障害を持った方たちが農業に従事することで、地域の一次産業の助けになるのではないか、という発想が生まれました。濃茶クッキーに使われている抹茶も、耕作放棄されていた茶畑を譲り受け、3年かけて再生し、収穫したものなんです」(新免さん)
手摘みによる高品質の抹茶だけでなく、京都えびいもや、田辺なすなど、京田辺ならではの野菜を生産し、販売。いまや、さんさん山城は地域の農業を支える大切な担い手になっているのです。しかも、商品やカフェのメニュー、サービスは、質が高いのが特徴です。そのため、これまでも、まとまった数の濃茶クッキーの注文を受けていました。
「京田辺FCさんの希望数にも応じられる生産力があるので、すぐに発注をOKできました。たくさんの注文は、利用者さんたちの励みになるので、ありがたいです。でも、それ以上にうれしいのは、FCで働く大勢の方にさんさん山城の存在を知ってもらえたことです。今後、スタッフさんが私たちのランチを食べにきたり、濃茶クッキーや濃茶大福などの商品を買ってくださるかもしれない。そのご縁ができたことが、とてもうれしいんです」(新免さん)
共通するスピード感やチャレンジ精神
ユニークな取り組みを聞きつけ、全国から視察に訪れる人も多い「さんさん山城」ですが、新免さんと梶山さんの話を聞いていると、Amazonと共通点があることに気づきます。たとえば、スピード感です。農産物は新鮮さが命。収穫したらすぐに出荷したり、カフェのお客様に食べてもらわなければ、おいしさに関わります。また、施設の利用者と職員が協力し合い、アイデアを思いついたら試してみるところも、Amazonが大切にしている毎日がはじまりの日という意味の「Day One」のチャレンジ精神やリーダーシップ・プリンシプルと重なります。
「今回は初めてだったので失敗もありました。配布に協力してくださった、さんさん山城の利用者さんは、ろうあの方だったので、私たちがマスクをつけていると口の動きで会話を読むことができません。どうコミュニケーションを取ろうかとか、ソーシャルディスタンスをどう伝えようかなど、考えることがたくさんありました。その気づきを次回にも生かしていきたいですね。よりよい方向を目指して試行錯誤するKAIZENプロセスは、私が期待するストーリー性やAmazon Givesの活動の楽しさにつながりますし、成長をうながしてくれると思います」(梶山さん)
さらに梶山さんはAmazon Givesの活動に、職種や立場を超えて、もっと多くのFCスタッフが参加しやすくしたいと考えています。
「FCで働く方たちは、多くがFC周辺に住んでいます。FCで楽しく働きながら、地域の魅力を発見したり、人と交流が広がったりすると、住んでいる街への愛着がわきますよね。私はFCの立ち上げに参加したときから、働くスタッフはもちろん、地域の方たちも含めて、FCがすべての人に価値のある場所になってほしいと願っているのです」(梶山さん)