10月の乳がん啓発月間では、日本を始め、世界各国で乳がんへの意識を高め、早期発見と予防、治療の支援を促す活動が行われました。Amazonでは10月18日に、社員が企画した、専門家と実際にがんを患った経験のあるゲストスピーカーを招いて「知ろう、乳がんのこと」と題するオンラインのトークイベントを開催しました。
乳がんは、若い世代も、また男性もかかる可能性のあるがんであること、早期発見が大切なこと、最新の診断技術などを学びました。
専門家3名とAmazon社員が語り合ったトークイベント「知ろう、乳がんのこと」。検診とセルフチェックで早期発見を呼びかける
10月の乳がん啓発月間に合わせて、Amazonでは、社員による有志グループWoman at Amazonのメンバーが中心となって、「知ろう、乳がんのこと」と題した社員向けのオンラインイベントを開催しました。
ゲストスピーカーは、AWSを活用しながら、乳がん向け超音波画像AI診断支援サービスを開発している株式会社Smart Opinion代表取締役社長の山並憲司さん。
女性の心と身体を理解するために必要な基礎知識“フェムテラシー”を高める社会づくりに尽力している一般社団法人日本フェムテック協会 代表理事、株式会社シルキースタイル 代表取締役の山田奈央子さん。
腫瘍内科医として乳がんなどの研究に従事し、AWSを活用しながら、全ゲノムベースのがんゲノム医療プラットフォームを提供している順天堂大学腫瘍内科非常勤助教、cBioinformatics 代表取締役社長の山口茂夫さん。
そして乳がんを乗り越えたAmazon社員としてイベントに参加した中島香織さんは、自身の闘病やがんサバイバーとしての就活体験、アマゾンジャパンの働きやすさについて語りました。
女性は8人に1人、男性は1000人に1人が罹患
トークイベントは、乳がんがどのような病気なのかを知ることから始まりました。
講師は腫瘍内科医の山口さんです。乳がんの大きな特徴の一つは、働き盛りの若い世代でも罹患率が高い病気だということです。そのため、年1回の超音波検査とマンモグラフィ(乳房X線検査)による検診、月1回のセルフチェックがとても重要です。早期に発見すれば、完治率が高いがんだからです。
「乳がんは一般的に女性に多い病気ですが、実は男性もかかります。アメリカのデータでは、女性が生涯を通じて8人に1人が罹患するのに対し、男性は1000人に1人といわれています。早期発見が増えている女性に比べ、男性は『乳がんにかからない』という誤解から発見が遅くなることがあります。自覚症状には、乳輪の近くに痛みを伴わないしこり、乳頭からの出血、皮膚の潰瘍などがあります。特に男性の場合は、女性ホルモンが比較的多い人、たとえば、肝疾患や肥満、精巣異常があったり、家系に乳がんになったりした人がいる方は、注意が必要です」(山口さん)
続いてSmart Opinion社長の山並さんが、乳がんの検診方法の紹介と、超音波検査にAI解析を利用するメリットを説明しました。
「現在、日本の乳がん検診には、マンモグラフィが多く使われています。ただ、マンモグラフィは乳房を挟んで行う検査のため、痛みを我慢する必要があります。また、若い世代は高濃度乳腺の割合が高いため、それが画像診断の邪魔をし、病変が見つけにくい場合があります。超音波検査は痛みがなく、高濃度乳腺に影響されることなく、病変を発見することが可能です。それぞれ発見を得意とする病変が違いますから、検診ではマンモグラフィと超音波検査を一緒に受けることが大切です」(山並さん)
また、現在、超音波検査の判定は、医師や検査技師が行っています。山並さんは、その判定にAI 解析を活用する研究開発を行っています。
「医師や検査技師による診断は人が判断するため、どうしても意見のバラつきが出てきます。そこで、AI 解析で診断精度を上げていくわけです。慶應義塾大学と共同開発中の私たちの技術は、これから承認されれば、臨床で活用されていく段階にあります」(山並さん)
体験談を通して闘病と仕事との両立を学ぶ
Amazonの社員である中島さんは、自身の乳がん体験を語りました。中島さんがサクランボ大のしこりに気づいたのは、35歳のとき。雑誌の記事を参考にセルフチェックをしたのがきっかけでした。以前に乳がんのサンプル模型を触った経験も、しこりの発見に役立ったそうです。周囲の友人に相談したところ、1人だけ強く病院の受診を勧めてきました。その言葉に勇気をもらい、思い切って受診したら、やはり疑わしいとの診断。マンモグラフィと超音波検査を経て、細胞の一部を採取する生体検査を行ったところ、ステージ2Bの乳がんと判定されました。
「子どもはまだ10歳と3歳でしたし、将来、どうなるのだろうと不安でいっぱいになりました。すぐに大学病院に転院。切除手術を受け、抗がん剤治療、放射線治療、薬物療法という乳がんの標準治療のフルコースを受けました。しこりの発見から10年経った昨年、ようやく治療が終わりました。治療は楽なものではありませんでしたが、セルフチェックで早期発見できたことが大きかったと思っています」(中島さん)
乳がんが見つかった頃、中島さんは専業主婦として子育てに専念していました。仕事を再開しようと思った矢先の闘病です。病魔との闘いが落ち着き、再発の心配も少なくなってきたときに、中島さんは再就職を決意。就職活動を経て、2016年に入社したのがアマゾンジャパンでした。
「治療中に行った就職活動では、なかなか採用が決まりませんでした。唯一、採用してくれたのがAmazonです。アマゾンジャパンには、定期的な治療や検査、通院に利用しやすい傷病休暇やパーソナル休暇があります。緊急時にはリモートや電話でも仕事ができるようにサポートしてくれたことも、とても助かりました」(中島さん)
中島さんの体験談からも、早期発見のためにセルフチェックがいかに重要かがわかります。そこでイベントでは、山口さんの指導を受けながら、セルフチェックの方法を学びました。さらに、山口さんが研究している遺伝子診断についても説明がありました。
「現在、10万人の遺伝子を調べています。持って生まれた自分の体質、遺伝子が原因となる病気は、約30%あります。乳がんにも遺伝性乳がんがあり、生まれつき乳がんになりやすい遺伝子変異を持って生まれてしまうこともあります。疾患リスクの判定で、もし見つかった場合は、遺伝子カウンセラーとともに診療を行う専門の外来もあります」(山口さん)
ウェルビーイングが社会のヘルスリテラシーを上げる
最後に登壇したのは、日本フェムテック協会代表理事の山田さんです。山田さんは、女性のウェルビーイングとは何か、社会全体で女性にまつわる健康課題についての理解、フェムテラシーを高めることの重要性について話しました。
「ウェルビーイングの定義には、健康であることはもちろんですが、自分らしい生き方ができていることも含まれます。そのためには、周囲との相互理解が重要です。まず女性が自分自身の心と身体を知ること、そして、周囲が身近な女性との関係性を向上させ、相互理解を深めることが大切なのです」(山田さん)
また山田さんは、女性のウェルビーイングを考えることは、実は男性のウェルビーイングを考えることでもあると言います。性別や年代、既婚未婚にかかわらず、自分のこととしてウェルビーイングを考えることが相互理解を深め、会社組織、そして社会のヘルスリテラシーを上げることにつながると語りました。
さらに広げたい乳がんの啓発活動
Amazonでは、社員により関心を持ってもらうため、トークイベントと連動する形で、オフィスやFCにある食堂やカフェで、乳がん啓発活動のカラーであるピンク色を盛り込んだランチメニューも提供しました。
配信の終了後、今回のイベントを企画運営したWoman at Amazonのメンバー、キム・ミン・ジョンさんと山藤あすかさんに感想を聞いてみました。
「実は私自身が今年1月に乳がんの疑いがあり、検査を受けていました。良性だったのですが、結果が出るまで、病気への恐怖心と子どもや仕事のことなど将来への不安で押しつぶされそうでした。今回のイベントを企画したのも、私と同じような思いを他の人にさせたくないという気持ちからでした。今日のお話を伺って、私自身、さまざまな学びがありました。乳がんは早期発見が大切です。乳がん検診も歯の検診のように、多くの方に気軽に受けてもらいたいと思っています」(キムさん)
「私はキャリアのスタートが診療放射線技師だったのですが、乳がんの患者さんと接した際、なぜこんなに症状が進むまで受診しなかったのかと悔やむケースがありました。このようなバックグラウンドもあり、人事として健康支援の面から、Amazon/AWSの社員の誰もが働きやすく、活躍できる環境を醸成する活動をしたいと思い、乳がんのことや、検診の大切さをもっと多くの人に知ってもらいたいと考えました。これからも、社員の皆さんが働きやすい環境を醸成する活動を続けていきたいです」(山藤さん)