Amazonとコンサベーション・インターナショナル(Conservation International)は2022年11月15日、インターナショナル・ブルーカーボン・インスティテュート(International Blue Carbon Institute)の設立を発表しました。同組織は東南アジアおよびその他の地域における、沿岸域のブルーカーボン生態系の保全・再生を後押しすることで、気候変動の緩和と沿岸コミュニティの保護を支援します。
ブルーカーボンとは、マングローブ、海草、干潟といった沿岸および海洋生態系に貯留された炭素のことです。これらの生態系は、植物および植物の下に溜まった堆積物の両方に大量の炭素を隔離・貯留しています。そのため、ブルーカーボン生態系の保全・再生は、気候変動対策に欠かせない重要な要素であると考えられています。
インターナショナル・ブルーカーボン・インスティテュートは、シンガポールに拠点を置き、ブルーカーボンの巨大な潜在的能力を発揮できるよう、東南アジアと太平洋諸島において集中的に支援を行います。世界のマングローブ林の3分の1以上が東南アジアに集中していますが、マングローブ林が最も多く失われているのもまたこの地域です。アジアから太平洋諸島にいたるまで、沿岸コミュニティは海面上昇や暴風雨の影響をより一層受けやすくなっています。ブルーカーボン生態系は、水を浄化したり、生物多様性を支えたりと、自然の恩恵をもたらす一方で、ブルーカーボン生態系の保全は、沿岸コミュニティの気候変動による影響への対応力を強化することにつながります。
気候変動に対する政策としてのブルーカーボン
インターナショナル・ブルーカーボン・インスティテュートは、東南アジアをはじめとする各国政府と協力し、国際、地域、地方レベルで気候変動の緩和に向けた政策としてブルーカーボン生態系の再生・保全を取り入れるべく取り組んでいきます。これにより、実務家、政策立案者、地域社会がブルーカーボンプロジェクトに関する最新の科学的知見、基準、ベストプラクティス、リソースにアクセスするための機会が広がります。また同組織は、学術機関、NGO、民間セクター、政府と連携して、カーボンクレジットの手法や基準、政策的枠組み、現場の技術など、ブルーカーボン推進のカギとなるツールを開発する予定です。
初年度の計画には、科学に基づくブルーカーボン生態系の再生を支援するツールの構築、「国が決定する貢献(NDC; Nationally Determined Contributions)」におけるブルーカーボンについての主要ガイダンスの策定、気候変動対策において海草や昆布の生態系がもたらす価値に関する知識の拡大などが含まれます。
コンサベーション・インターナショナルの海洋科学&イノベーション担当バイスプレジデントであるエミリー・ピジョン(Emily Pidgeon)氏は「ブルーカーボン生態系は、地球のなかで特に多くの炭素を貯留する場です。一方で、世界的に崩壊の危機に瀕しているため、世界で最も優先度の高い保護対象の1つに挙げられています。東南アジアと太平洋地域のブルーカーボン生態系による、気候変動の緩和や適応に向けた潜在的能力を発揮し、沿岸の生物多様性、回復力のあるコミュニティ、そして気候変動対策に関する質の高い持続的な成果を達成するために、Amazonと共同でインターナショナル・ブルーカーボン・インスティテュートを設立できることをうれしく思っています」と話し、「コンサベーション・インターナショナルでは、最も質が高いブルーカーボンプロジェクトと投資により、沿岸の環境保全と再生を促進することに力を注いでいます。政策やインセンティブのメカニズムにブルーカーボンを取り入れるための基礎となる重要な知識とツールを提供すべく取り組んでいます」とも話しました。
自然に根ざした解決策に対する継続的なコミットメントの一環として、Amazonは東南アジアと太平洋地域において、信頼性の高いブルーカーボンプロジェクトの構築と拡大を支援するために、最初の3年間、インターナショナル・ブルーカーボン・インスティテュートの設立と運営の資金として最大300万ドルを助成します。
Amazonのワールドワイドサステナビリティ バイスプレジデントのカラ・ハースト(Kara Hurst)は「Amazonでは、自社のバリューチェーン外の炭素排出による影響を軽減し、事業全体で推進している排出削減の取り組みを補完する目的で、自然に根ざした解決策に投資してきました。豊かな海洋環境と沿岸環境が存在する東南アジアおよび太平洋地域において、ブルーカーボンプロジェクトには、炭素隔離、生態系サービス、そして人々の生活を支える大きな可能性があります。気候変動に対抗し、生物多様性を保護するには、大規模かつ地域的な活動が必要であり、Amazonはそれら両方への投資に引き続きコミットしています」と話しました。
コンサベーション・インターナショナルのシンガポール・コンサベーション・トラスト会長であるヨー・ラム・ケオン(Yeoh Lam Keong)氏は「コンサベーション・インターナショナルは、5年前にシンガポールで慈善団体として登録されて以来、飛躍的にプレゼンスを高めています。コンサベーション・インターナショナルのインターナショナル・ブルーカーボン・インスティテュートは、拡大を続ける学校向け環境教育プログラムや東南アジアと太平洋地域における環境プロジェクトのための持続可能な資金調達基金の先駆けであるだけでなく、気候変動対策のために急務となっているブルーカーボンの研究や、科学的な知見の提供を後押しする中心的な存在です」と述べています。
世界中で自然に根ざした解決策を支援
コンサベーション・インターナショナルは、各国の政府、研究機関、NGO、沿岸コミュニティと緊密に協力しながら、ブルーカーボンに関する科学的知見と活動を世界規模でリードしてきました。これまで、エクアドル、コスタリカ、フィジー、コロンビアなどの政府に対し、ブルーカーボン政策、保全管理、気候変動の緩和に向けた戦略について助言を行ってきました。コンサベーション・インターナショナルは、コロンビアのマングローブの保全に向けて、Verra(Verified Carbon Standard)の認証を受けた最初のブルーカーボンプロジェクトを共同で実施しました。
さらには、国際自然保護連合(IUCN; International Union for Conservation of Nature)およびユネスコの政府間海洋学委員会(Intergovernmental Oceanographic Commission)と協力して、「国際ブルーカーボン・イニシアチブ(International Blue Carbon Initiative)」を立ち上げました。同イニシアチブでは、これまでにIPCCの温室効果ガス排出量算定に関するガイドラインへのブルーカーボン生態系の統合、ブルーカーボンクレジットの手法の開発、およびブルーカーボンのNDCへの統合について助言を行ってきました。
Amazonは2019年、自然に根ざした解決策をサポートするために、世界中の森林、湿地、草原の再生と保全を目的とした1億ドルの基金「Right Now Climate Fund」を設立しました。また2021年には、「LEAF Coalition (Lowering Emissions by Accelerating Forest Finance)」の立ち上げを支援しました。これは、政府と大手企業によるグローバルなイニシアチブであり、世界の熱帯林を保護するためにすでに10億ドル以上の資金を動員しています。この官民連携のイニシアチブでは、森林破壊による炭素排出を削減するための管轄アプローチを通じて、今後10年の間に世界中で熱帯林の伐採を止めることを目指しています。
また、Amazon は2021年に、ザ・ネイチャー・コンサーバンシー(The Nature Conservancy)と協力して、ブラジルで地域の農家をサポートしつつ気候変動対策として森林の再生を行う「Agroforestry and Restoration Accelerator」を立ち上げました。この活動により、2050年までに1,000万トンの二酸化炭素が大気から除去されることが見込まれます。
Amazonは、米国の「Family Forest Carbon Program」、ドイツ・ベルリンの「Urban Greening Project」、イタリア・ミラノの「Parco Italia tree planting」、英国の「Rewilding projects」など、Amazonがサービスを提供するコミュニティにおける、自然を増やす取り組みを継続して支援しています。
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※この記事は2022年11月15日に英国版About Amazonで発表された記事を日本語に翻訳したものです。原文と日本語訳に相違がある場合は、原文の内容が優先されます。