「京菓子處 鼓月(こげつ)」は京都で戦後から続く和菓子店。主力商品の「千寿せんべい」は、京都観光の土産品としても親しまれています。長年、直営店や百貨店で販売してきましたが、2019年1月からAmazonでの販売を開始。「フルフィルメント by Amazon(FBA)」の導入を機に、全国から注文が舞い込むようになりました。代表取締役社長の中西英貴さんに和菓子づくりへのこだわりと、Amazonで販売を開始して起きた変化についてうかがいました。

Amazonへの信頼感が販売開始の決め手に

鼓月の社風は、時代のニーズを的確に読み取り、商品とサービスに生かすことにあります。代表取締役社長の中西英貴さんが、Amazonでの販売を開始したのも、食品分野でのインターネット販売の拡大を見据え、お客様の利便性を考えてのことでした。

「私自身、Amazonでよく買い物をしていましたから、お客様からすると、『なぜ鼓月の商品がネット通販で買えないのだろう』と思っているのではないかと考えていました。ネット通販は、まず自社サイトで始めたのですが、なかなかオンラインショップの認知度が上がりません。そこで、Amazonで販売を始めることにしたのです」

Amazonではすでにさまざまな種類の食品が販売されていることを知っていたこと、そして中西さん自身がAmazonで商品を購入するときの安心感を知っていたことがAmazonを選んだ理由でした。

鼓月
代表取締役社長の中西英貴さん

「Amazonでの販売に心配はありませんでした。Amazonを利用するメリットは、購入するお客様にも、販売する私たちにも安心感があることです。Amazonは、発送までのレスポンスが早く、お客様へのサービスに優れています。私自身がひとりの消費者として、その確かさを実感していたことが、販売する側としても安心感につながっています。鼓月はAmazonの「ブランド登録」に登録していますが、この取り組みも鼓月の商品を安心してご購入いただくためのひとつの方法です。お客様の信頼の支えになっていると思います」

*「Amazonブランド登録」とは、ブランドの商品出品情報を管理して、購入者が正確な情報を確認できるようにするなど、ブランドの構築と保護に役立つ一連のツールをブランド・オーナーに提供するサービスです。

鼓月のストアページでは、季節のうつろいを形や色、味で表現する和菓子の魅力を画面上で伝えるために、真っ先にお客様の目に入るページ上部には季節感を盛り込み、おいしさが伝わる季節ごとの和菓子の写真をメインに展開。商品写真をクリックして現れる、Amazonの商品詳細ページでは、商品の詳細と鼓月のこだわりが伝わる情報と写真を盛り込むなど、お客様に商品の良さを丁寧に伝える工夫をしています。

新しい和菓子への追求が生んだ「千寿せんべい」

挑戦を恐れない鼓月の精神を、中西さんは創業者である祖母、美世さんから受け継ぎました。鼓月の創業は、戦後間もない1945年10月。戦死した夫に代わり、美世さんが家計を支えるため、家にあった一缶の黒砂糖で家庭の味を生かした菓子を自宅で作り、販売したことから始まりました。

そして、1963年に誕生したのが、「千寿せんべい」です。波型のさっくりとした生地にシュガークリームを挟んだ千寿せんべいは、洋菓子の素材と製法を使いながら、茶席にも合う、当時は誰も見たことのない新感覚の和菓子でした。

鼓月千寿せんべい
千寿せんべい

「京都には老舗の和菓子屋さんがたくさんありますから、祖母は鼓月にしかないお菓子を作りたかったのだと思います。一から始めた製菓業をビジネスとして大きく育てるまでには、菓子づくりの修行をしたり、和菓子業界のしきたりを学んだり、相当な苦労があったようです」

鼓月
鼓月本店
鼓月
実店舗では季節ごとの上生菓子なども販売している

ネット販売の比率を高めたFBAの利用

鼓月は、2020年3月から、Amazonが商品の保管から注文処理、配送、返品に関するカスタマーサービスまでを代行する「フルフィルメント by Amazon(FBA)」の利用を始めました。Amazonの担当者から、FBAの説明を聞き、商品管理体制についても説明を受けた中西さんは、迷わず導入を決めたそうです。以前からお中元やお歳暮の時期には、百貨店の倉庫に商品をまとめて配送していたため、倉庫に商品を預けることにそれほど抵抗感はありませんでした。

FBAは、商品を1日でも早く届けたい鼓月にとって、最適な物流システムだと言います。FBAを利用すると、Amazonの配送品質でのお届けを意味するPrimeマークが商品に表示されます。Primeマークが表示されることで、商品の表示率が上がるなど、物流を委託できるだけでなく、販促面でもメリットがありました。

「鼓月の販売店がない東北や九州のお客様からもご注文をいただくようになったことは、驚きでした。コロナ禍の影響で京都には行けないけれど、観光気分を味わいたいから、と買って下さったお客様もいます。とくにPrime会員の方は、注文して翌日には届く配送の早さに喜んでくださっているようです」

鼓月 京都 千寿せんべい包装
ひとつずつ丁寧に包装し、出荷する
鼓月

さらに中西さんは、「Amazonスポンサープロダクト広告にもメリットを感じている」と言います。広告費に対し、どれくらいの売り上げが見込めるかという予測が、視覚的にわかりやすいシステムになっていること、そしてAmazon.co.jp上で商品を検索している時に商品が表示されるため、転換率が高くなることから、経営戦略の助けになっているそうです。

Amazonを利用し始めてから、鼓月ではインターネット経由の販売が130〜140%も上昇しました。コロナ禍で落ちた実店舗の売り上げの一部を、Amazonでの販売がカバーするようになりつつあります。

今後の商品展開では、「月見団子やおはぎなどの生菓子をネット販売したり、ネット購入でしか味わえない創作生菓子の定期便サービスを広げていきたい」と話します。鼓月では長年、和菓子の真髄である餡(あんこ)づくりにこだわり、上品で食べやすい餡を生菓子に生かしてきました。実店舗を利用するお客様にはよく知られていましたが、その餡のおいしさをネット通販のお客様にも伝えたい、という思いがあります。

「コロナを機に、お客様の意識が変わり、生鮮食料品などの食品もネット通販で買うことに抵抗感がなくなってきたと感じています。鼓月の商品も、これからさらにネット通販の需要が増えると思います。将来的には、FBAを利用して海外通販にも挑戦したいですし、多くの方に和菓子の魅力をもっと伝えていきたいと考えています」。

鼓月
和菓子の核となる、あんこへのこだわりを受け継いでいる
鼓月

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