DXが社会に浸透したことで、教育分野にはどのような変化がもたらされているのでしょうか? 今回は、アマゾン ウェブ サービス(AWS)を活用し、オンライン学習サービスを提供している2社のスタートアップを通じ、DXが生み出した新たな学びの形を紹介します。
誰もがプログラミングを学べるオンライン学習サービスを提供
東京都にある株式会社Progateは、AWSを活用してオンライン学習サービス「Progate」を構築し、誰もがプログラミングのスキルを習得できる機会を提供しています。2014年、CEOの加藤將倫さんが、プログラミングを通じて人生の可能性を広げてほしいとの想いで創業して以来、サービスの利用者数は300万人を超えます。その背景には、「プログラミングを取り巻く環境の変化が大きい」と語るのは、同社のプロダクト開発を担当するCTOの島津真人さんです。
島津さん「2020年度の新学習指導要領においてプログラミングの必修化が公表されたことで、プログラミングの認知度が一気に高まりました。また、コロナ禍で働き方が大きく変化し、副業やリスキリング(学び直し)のためにプログラミングを学ぶ方も増えています」
プログラミングの魅力は、ものづくりにあると島津さんは言います。
島津さん「コードを入力して自分のイメージ通りのものが完成することは、創る喜び、ものづくりの楽しさに溢れています。スポーツで練習を重ねて上達し、目標を達成する喜びと似ています。ただし、プログラミングはあくまでも手段。『こんなアプリを開発したい』『Webサイトを作りたい』といった目的達成のために活用してほしいですね」
AWSの柔軟性はイノベーションを後押ししてくれる
スライド形式で学びながらコード入力などを実践し、スキルを高めていく「Progate」には、アプリやWeb開発、データ分析といった目的別に約20の学習コースが用意されており、学習コンテンツはすべてAWSクラウドに構築されています。
島津さん「例えば、クリックするとページが遷移する、動画が再生されるといった細かなUI/UX*もAWSを使って提供しています。AWSのクラウド上には膨大な量の学習コンテンツを保存しており、多くの人が同時にアクセスしますが、そうした負荷に耐えられる高い可用性がAWSの一番の魅力だと思います。サーバーやネットワーク機器を自社で保有するオンプレミスと比較しても、スペースやコスト面のメリットは大きいですね」
*UI:ユーザーインターフェース(ユーザーが使用する際に目にするサービスやプロダクトの外観、UX:ユーザーエクスペリエンス(サービスやプロダクトを使用する際に得る体験)
アクセス数などに応じて即座に使用量を拡張/縮小できる柔軟性もAWSの魅力だと島津さんは言います。
島津さん「簡単な設定変更で使用量をスケールアップできる上、AWSが自動で適切な量に調整してくれる機能もあるので、人的リソースの省力化につながっています。加えて、AWSは従量制料金なので、使ったぶんだけ料金が発生する仕組みです。スモールスタートでサービスを立ち上げ、徐々にスケールアップしていくスタートアップにとって、AWSはイノベーションを後押ししてくれる存在だと思います」
AWSを活用してサービスを拡大させ、大学生の就職もサポート
AWSが主催する、スタートアップの人材交流を図るカンファレンスへの参加も役立っていると言います。
島津さん「普段は知り合えない方と意見や情報を交換することは大きな刺激になっています。AWSのスタートアップ支援は多岐にわたり、担当者も丁寧に助言をくれますね。それから、AWSを利用している人が多いので、知りたいことをネットで検索すると、さまざまな情報が出てきます。そうした情報をもとに、自分たちで活用できるサービスを見つけることもありますね」
初心者向けの「Progate」に加え、より専門的なスキルを習得できる「Progate Path」を新たにAWSで構築するなど、同社のサービスは拡大傾向にあります。
島津さん「『Progate Path』は就職に結びつく実践的スキルの習得を目的としています。そのため、大学生にはサービスを無償提供し、エンジニアを募集している企業と大学生とのマッチングも支援しています。さらに、企業向けの新サービスとして、従業員のリスキリング支援も始めました。さまざまなサービスを通じて、社会にプログラミングを浸透させ、ものづくりの楽しさや自分の可能性が広がる喜びを提供していきたいですね」
eラーニングを通じて学びの資産化を図り、企業の課題を解決に導く
近年、従業員の新人研修やコンプライアンス研修などをオンラインで行う企業が増えています。東京都にある株式会社manebiの代表取締役執行役員CEO・田島智也さんは、「コロナ禍によってリモートワークが定着し、デジタル技術を活用した学習管理システム、eラーニングの需要は加速度的に増えています」と語ります。
田島さん「派遣業界に特化したeラーニング『派遣のミカタ』や、広範囲の人材育成や研修などに対応するラーニングプラットフォーム『playse.(プレース)』など、私たちはAWSを活用したeラーニングを提供しています。コロナ禍によって両サービスの導入企業は増え、学びの場をオンラインに移行する流れが強まっています」
同社のサービスは、企業が抱える課題を解決するために、さまざまな現場の声を取り入れながら生み出されていることが特徴です。
田島さん「人材育成や離職防止、企業文化の醸成など、企業が抱える課題はさまざまです。当社は、サービスを単発的に提供するのでなく、導入企業や受講者の声に耳を傾け、オフラインの研修もサポートするなど、伴走型に重きを置いてサービスを提供しています。学びを資産化することが人的資本の強化につながる、それが私たちの信念です」
AWSはサービスの種類が豊富で、新しいアイデアを形にできる
役職に応じた研修やコンプライアンス/ハラスメントに関する研修など、「playse.」の教材数は5,000以上にのぼります。田島さんは「大勢の受講者が同時に動画を視聴した場合でも、遅滞なくサービスを提供するためにはAWSが不可欠でした」と言います。
田島さん「耐久性が高いことに加え、アクセス数に応じてフレキシブルに拡張/縮小できる点も魅力です。機密性の高い情報を扱うのでセキュリティも重要ですが、AWSは細かくセキュリティの設定が可能です。AWSはクラウドプラットフォームの先駆者。それゆえにサービスがきめ細やかで充実していると感じています」
AWSの240を超えるサービスは、「イノベーションを加速させてくれる存在」だと田島さんは続けます。
田島さん「音声をテキストに変換するサービスや、企業・受講者のデータ分析、高速かつ安定的な動画配信など、AWSのさまざまなサービスを活用しています。AWSには次々と時代の先端を行くサービスが追加され、新しいアイデアを思いついたときに『それ、AWSで実現できるね』となる。そのスピード感は、アップデートを繰り返す当社のサービスと相性がいいですね」
企業・受講者のデータ分析には、AWSのBI(ビジネスインテリジェンス)ツールを利用しています。
田島さん「受講者のログイン数やエリア別の分布図、どのような教材が多く視聴されているか、特定の業種別の視聴数など、新たな教材の開発などに役立つデータを取得しています。データ分析もAWSで完結できるメリットは大きいと思います」
人は学ぶことで成長し、変わることができる
田島さんは、AWSのコスト面におけるメリットをこう続けます。
田島さん「当社は動画を取り扱うケースが多いため、動画などのコンテンツを迅速に配信するCDN(Contents Delivery Network)が重要な要素となりますが、以前使っていたCDN製品に比べ、AWSでは10分の1程度まで費用を抑えることができています。コストが増加傾向にある場合は、AWSの担当者がコストを抑える方法を提案してくれます。長期にわたって利用者と伴走し、共に成長していこうというAWSのスタンスには好感を持っています」
学びにフォーカスした同社のサービスは、田島さんの「人は学ぶことで成長し、変わることができる」という実体験をもとに生まれたと言います。
田島さん「昔は勉強が苦手でしたが、就職活動を機にさまざまな講演に参加し、本を読みあさり、多くの刺激や気づきを得ました。その実体験をもとに、学びを通じた人生開発やアイデンティティの確立といった企業理念を導き出しました。当社のサービスを受講し、自ら学ぶ習慣を身につけた方が言ってくださった『学ぶことで生きる勇気がわいた』という言葉は一生忘れません」
AWSのサービスを活用し、オンラインで学びの場を提供している株式会社Progateと株式会社manebi。両社には、学びを通じて可能性を広げ、人々の新たな挑戦をサポートしたいという共通の想いがあります。両社が提供しているのは、学びの場だけではなく、学びがもたらす成長という普遍的な喜びとも言えるでしょう。
アマゾン ウェブ サービス(AWS)とは?
AWS は、世界で最も包括的で幅広いお客様に採用されているクラウドプラットフォームです。世界中のデータセンターから 240 以上のフル機能のサービスを提供しています。大企業や主要な政府機関など、何百万ものお客様がAWSを使用することでコストを削減し、俊敏性を高め、イノベーションを加速させています。
本連載について
Amazonでの販売を支援する「Amazon出品サービス」、ビジネス上の購買をサポートする法人向けサービス「Amazon ビジネス」、決済サービス「Amazon Pay」、クラウドサービス「アマゾン ウェブ サービス(AWS)」など、Amazonはさまざまな企業の課題を解決する多様な選択肢を提供しています。本連載では、DX(デジタル・トランスフォーメーション)に取り組む中小企業と、そのDXをさまざまなカタチで支援するAmazonのストーリーをご紹介します。