2023年からAmazonで商品を販売し、短期間で成長を遂げている地方のレストランとさつまいも農家があります。その成長の裏側には、どのようなDX戦略やAmazonのサービス活用があったのでしょうか? 短期間でECビジネスを軌道に乗せた要因に迫ります。

コロナ禍を乗り越えるために、冷凍ピッツァをAmazonで販売

株式会社スパーダは、2011年から岐阜県岐阜市でナポリピッツァ専門のレストランを運営する傍ら、2023年3月からAmazonで冷凍ピッツァを販売し、短期間で大きく成長しました。同社代表取締役の白木健さんは、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が、ECを始めたきっかけだったと振り返ります。

ピザ窯の前でほほ笑むコックコートを着た男性
株式会社スパーダ 代表取締役・白木健さん

白木さん「レストランの売上が激減し、危機感を感じながらピッツァを作り続けていました。ひとり親家庭への無償提供やテイクアウトへのシフトに取り組む一方で、自分が納得のいく冷凍ピッツァを作ってECで販売し、経営状況を改善しようと考えました」

2021年に自社ECでの販売を開始し、2023年にAmazonへ販路を拡大。そこにはイタリアの食文化を広めたいとの思いもありました。

白木さん「20代からイタリア料理を生業としながらも、本場の味を知らないもどかしさをずっと感じていて、32歳のときにナポリに料理修業に行きました。ソウルフードとして愛されるピッツァのおいしさはもちろん、家族団らんの食卓を大切にする文化やライフスタイルに衝撃を受けました。家族団らんの中心にピッツァがある食文化を広めることは、ピッツァ職人としての使命だと確信したのです。帰国して自分の店を持つようになってからも毎年のようにナポリに足を運び、現地のトレンドなどをお店のメニューに反映しています」

調理台でピザを作っている男性
世界ピッツァ職人選手権2位に輝いた技術を活かし、生地にこだわったピッツァを作っている
焼き上がりのトマトソースのピザ
ナポリから輸入した窯で焼き、イタリア産のモッツァレラチーズをふんだんに使ったピッツァ
50席ほどある明るい店内。壁にサッカーのユニフォームがかけられている
随所にイタリアと縁のあるアイテムが飾られたレストランには、県外から訪れるお客様も多い

Amazonの担当者のアドバイスをもとにスポンサープロダクト広告を活用

2023年3月にAmazonで販売を開始すると、「想像を超える数のご注文をいただいた」と白木さんは振り返ります。

白木さん「要因はいくつか考えられます。まず、レストランを経営している利点を活かし、店に来てくださるお客様に、Amazonで販売を始めたことをSNSなどで告知しました。次に、Amazonの担当者のアドバイスをもとに、検索ワードを工夫し、スポンサープロダクト広告を活用しました。広告の反響は大きく、販売から3か月後に冷凍ピザ部門のベストセラーとなり、カスタマーレビューでも高評価をいただくなど、さまざまな要因が重なって商品の注目度が高まっていきました」

2023年7月にはAmazon プライムデーに参加し、「こちらも想像以上の反響だった」と白木さんは続けます。

白木さん「いかに多くのお客様がAmazonを利用されているかを実感しました。Amazonで商品を購入したお客様が店に来てくださるなど、デジタルとリアルの垣根を超えた相乗効果も得ています。何より、日本中のお客様に当店のピッツァをお届けし、イタリアの食文化を伝えられることが大きなモチベーションになっています」

Amazonのカスタマーレビューを通じ、お客様の声が聞けることもプラスになっていると言います。

白木さん「ナポリにいるピッツァの師匠から教わった、『ピッツァの師匠はお客様だ』という言葉は私の座右の銘です。来店されるお客様以外の声を聞けるAmazonのカスタマーレビューはとても新鮮で、よりおいしいピッツァに進化させるために役立てています」

さまざまな種類の冷凍ピザ
専用窯で焼き上げたピッツァを急速冷凍することで、お店の味を再現した冷凍ピッツァ
カウンターを挟んで話をする男性2人
ECの販促面は従業員の櫻井さん(右)が担当し、白木さんはおいしいピッツァを焼くことに専念している

Amazonビジネスの利用が売上安定とビジネスモデルの拡大に貢献

さらに、Amazonの法人向けのビジネスアカウントをお持ちのお客様に、法人価格・数量割引で商品を販売するAmazonビジネスを利用したことで、「ビジネスモデルが拡大した」と白木さんは言います。

白木さん「バーやカフェ、キャンプ場を運営している法人のお客様から大口注文をいただき、売上安定につながっています。Amazonビジネスを利用することでBtoB向けの需要に気づき、飲食店向けの卸販売を始めました」

また、スパーダとしてAmazonビジネスのビジネスアカウントに登録し、レストランで使用する備品の購入に活用しています。

白木さん「買い物に出かける時間を節約するために、Amazonビジネスで洗剤やペーパーナプキンなどを購入しています。Amazonビジネスは値段を比較し、最安値のものを探すことができるので、コストメリットが大きいと思います」

Amazonでの販売は、白木さんの経営者としての価値観に大きな影響を与えていると言います。

白木さん「コロナ禍を経て、経営者としての自覚をより強く持つようになりました。多角的な手法によって経営安定化を図り、人手不足や低賃金といった飲食業界の課題を解決したいと考えています。アナログ思考が根強い飲食業界にデジタル活用の風を起こし、地方の飲食店にこそ必要不可欠なDXを実践していきたいですね」

AIや機械学習などのサービスを提供するクラウドプラットフォームであるAWSを利用し、スポーツトレーニングの変革に挑むスタートアップ2社の挑戦に迫ります。

Amazonで干しいもを販売後、半年で年間の売上目標を達成

茨城県東茨城郡大洗町にある有限会社長生体は、横田商店の屋号の下、1970年からさつまいもの栽培、加工、販売を一貫して行っています。同社バックオフィス統括の横田光亮さんは、「2023年2月からAmazonで干しいもを販売したところ、年間の売上目標を半年で達成できた」と語ります。短期間での成長の要因はどこにあるのでしょうか?

一面に広がるサツマイモ畑の前に立ち、干し芋のパッケージを持つ男性
有限会社長生体 バックオフィス統括・横田光亮さん

横田さん「まず、自信を持って言えるのが商品の品質です。茨城県はさつまいもの栽培に適した土壌に恵まれ、全国有数の生産量を誇ります。そうした中で、当社は指定特定地域での栽培、農薬の使用制限、貯蔵保管方法などにこだわったオリジナルブランドを開発しました。低温乾燥機で通常の3倍の時間をかけて乾燥させた干しいもは、糖度が高く、しっとりと柔らかい半熟の食感が自慢です」

商品に自信があるからこそ、販路にもこだわってきたと言います。

横田さん「他社の商品と同様に扱われることを避けるため、20年ほど前から卸販売を減らし、地元の量販店や農家の直売所、電話やFAXでご注文いただいた個人のお客様に販売しています。ただ、新規の量販店を開拓する難しさや、納品から時間が経って鮮度が落ちた商品でもそのまま棚に陳列されてしまうなど、販路に関する課題を感じていました」

さつまいもを手に取る男性
徹底した品質管理のもとに生み出されたオリジナルブランドのさつまいも「天ノはるか」
さつまいも畑で会話をする男性2人
「すべての始まりは最高のさつまいもづくりから」をモットーに、栽培は弟の徳士さんが管理している

潜在ニーズを引き出せるスポンサープロダクト広告のメリットを実感

販路を広げ、できる限り鮮度の良い状態で商品をお客様に届けるために、ECでの販売を検討する際、横田さんは複数のECサイトで競合商品の干しいもを購入したと言います。

横田さん「市場リサーチのために競合商品をひと通り試食し、これなら勝負できると確信を持ちました。その上で、1商品からでも販売できて、後発ブランドでも参入しやすいAmazonを販路に選び、2023年2月から販売を始めました」

販売開始後、想定以上の売上を記録したもう1つの要因として、横田さんはスポンサープロダクト広告を挙げます。

横田さん「スポンサープロダクト広告はクリック課金制のため、費用の上限額をあらかじめ設定するのですが、日によっては午前中だけで上限額に達することもありました。干しいもというニッチな商品でも、Amazonならこれほど多くのお客様の目に触れるのかと驚きました。類似商品を閲覧しているお客様に対してもスポンサープロダクト広告が表示されるので、潜在ニーズを引き出せるメリットも大きいと感じています」

Amazonでの販売を通じて、新たなニーズを発掘できたと横田さんは続けます。

横田さん「量販店では100グラム単位の少量規格のニーズが高いのですが、少量規格ほど製造コストは高くなります。一方、Amazonでは1,000グラムといった大容量規格の商品をお買い求めになるお客様がたくさんいらっしゃいます。多くのお客様がご利用されるAmazonだからこそ、多様なニーズを発見することができました」

黒い皿に載った干し芋
通常の干しいもよりも水分含有率が高く、しっとりと柔らかい食感が特徴
干し芋のパッケージ
Amazonで販売している大容量規格の干しいも

Amazonのカスタマーレビューによって商品の信頼が高まった

Amazonのカスタマーレビューは、さつまいもを生産する従業員たちの励みになっていると言います。

横田さん「カスタマーレビューでの高評価によって商品の信頼が高まり、多くのお客様に商品を購入いただくことができました。こうした当社の事例が、直販や販路拡大を苦手とする農家の皆さんに刺激と希望を与えられたらうれしいですね。デジタル活用によって儲かる農業の仕組みを作ることができれば、就農人口の減少や資材高騰といった課題解決に、高品質な農作物を作るための資金と時間の捻出につながると思います」

将来的には、「ECをメインの販路にしたい」と横田さんは言います。

横田さん「Amazonの販売によって予想以上の成果を得られたこともありますが、従来の販路ではリーチできなかったお客様に商品を購入いただける点に大きな魅力を感じています。しかし、私たちは日本一売上が高い農家を目指しているわけではありません。自分たちがこだわりを持って生産できる分量を、しっかりとお客様に届けたい。目指すとしたら、日本一愛される農家ですね」

後発ブランドでも参入しやすいAmazonで販売を開始した後、短期間で成長を遂げた株式会社スパーダと有限会社長生体。両社はAmazonのサービスを活用することでブランド力を高め、多くのお客様に商品を届けることを実現しました。両社の成長は、DXがそれぞれの業界が抱える課題解決にも結びつくことを示しています。


スポンサープロダクト広告とは?
スポンサープロダクト広告は、Amazon内で個々の商品をプロモーションするクリック課金制(CPC)の広告です。商品検索結果ページや商品詳細ページに表示され、関連する商品を積極的に探している購入意欲の高い購入者にリーチするのに有効です。

2022年のシリーズでは、事業承継、地域活性化、働き方改革などの社会課題の解決のためにDXを活用した事例や農業や水産業などの第一次産業における中小企業が実践するDXについてご紹介しています

本連載について
Amazonでの販売を支援する「Amazon出品サービス」、ビジネス上の購買をサポートする法人向けサービス「Amazon ビジネス」、決済サービス「Amazon Pay」、クラウドサービス「アマゾン ウェブ サービス(AWS)」など、Amazonはさまざまな企業の課題を解決する多様な選択肢を提供しています。本連載では、DX(デジタル・トランスフォーメーション)に取り組む中小企業と、そのDXをさまざまなカタチで支援するAmazonのストーリーをご紹介します。

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