EC(電子商取引)において、大切に育てたブランドの知的財産権(IP)の侵害を防ぐことは、中小企業にどのような影響をもたらすのでしょうか? 今回は、Amazon IP AcceleratorとBrand Registryを利用し、ブランド保護に取り組む中小企業2社を紹介します。

自社ブランドを展開し、男性用エプロンをAmazonで販売

商社機能を持つデザイン会社として、2019年に大阪府で創業したシティブレンド株式会社は、男性向けの商品を企画・販売するブランド、Chapdaddy(チャプダディ)を展開しています。「2人の子どもがいる私自身の想いを形にするために、ブランドの立ち上げに挑戦した」と語るのは、代表取締役の小山広喜さんです。

白いTシャツにカーキ色のエプロンを着けた男性
シティブレンド株式会社 代表取締役・小山広喜さん

小山さん「家族でベビー用品を扱うお店に行くと、ママ向けのマタニティ用品はあっても、パパ向けの商品ってなかなかないですよね。そこで、パパが主役になって輝けて、かつ、パートナーや子どもが喜んでくれる商品を作りたいと考えたんです」

2022年、男性用に特化したエプロンを開発し、自社ECとAmazonで販売を開始。「当初からAmazonでの販売をメインに考えていた」と小山さんは言います。

小山さん「Amazonに出品することで多くのお客様がご利用されている販路を確保することができて、物流はAmazonが商品の保管、注文処理、梱包、配送、カスタマーサービス、返品対応を代行するフルフィルメント by Amazon(FBA)を利用できます。少人数の従業員で販売事業に参入する際の課題を解決してくれたのがAmazonだったんです」

Amazonの法人向けのビジネスアカウントをお持ちのお客様に、法人価格・数量割引で商品を販売するAmazonビジネスを利用することで、さらに販路が広がったといいます。

小山さん「Chapdaddyのエプロンはシンプルなデザインなので、レストランやカフェを経営される法人のお客様にご愛用いただいています。Amazonビジネスを通じ、数十枚単位でご注文をいただくことも多いですね」

商品を手に取り二人の男性が話をしている
商品のロゴやパッケージデザインなどは、グラフィックデザイナーの友草裕太さん(左)と考案している
PCの画面 シャツを着た男性の写真の上に六角形のすらっとエプロンのロゴ
Amazonのブランドページには動画を載せ、ブランドの世界観を伝えている

商標登録やブランド保護に関するAmazonのサービスを利用

男性でもゆったりと着られるシルエットや、速乾性・吸水性・低撥水のバランスを追求した生地など、エプロンにはこだわりが詰まっています。「当社のエプロンを着て、男性が積極的に料理を楽しんでもらえたらうれしい」と語る小山さん。そんな想いが詰まった商品だからこそ、「商社に勤めていたころ、模倣品がブランドの成長を妨げる事例を目の当たりにしていたので、知的財産権の登録は必要不可欠だと感じていた」と言います。

そこで同社は、Amazonが特に中小企業を念頭に開発したAmazon IP Acceleratorを利用。法律事務所のサポートを受けながら商標登録を行い、Brand Registryが提供するブランド保護機能や構築機能を素早く利用することができるサービスです。

小山さん「自分たちで知的財産権の法律事務所を探す選択肢もありましたが、Amazonありきでブランドを立ち上げた当社にとっては、信頼性の高いAmazon IP Acceleratorを利用することがベストだと判断しました。費用やスピード感の優位性も高く、法律事務所の説明も丁寧だったのでスムーズに始めることができました」

紺色のエプロンの上に並べられたエプロンのパッケージ
家庭用の「すらっとエプロン」は身に付けたときのシルエットにこだわっている
エプロンの表面で水が弾かれている様子
適度な低撥水で飛び散る汚れがつきにくい点も特長

知的財産権の侵害を防ぎ、しっかりと自社商品を届けることができている

実際にAmazon IP Acceleratorを利用すると、「メリットは期待以上だった」と小山さんは言います。

小山さん「スピーディな対応のおかげで、通常よりも早くブランド名を商標登録することができました。これによってChapdaddyの知的財産権の侵害を防ぎ、コンセプトに共感して商品を購入してくださったお客様に、しっかりと自社の商品を届けることができています」

販路を自社ECとAmazonに限定していることは、商社時代の経験がもとになっています。

小山さん「販路を広げ過ぎると値崩れが起きる可能性があり、結果的にブランドの価値が下がることにつながりかねないと考えています。Amazon IP AcceleratorやFBA、Amazonビジネスなど、さまざまなサービスが存在するAmazonで認知度を高め、ブランドのメッセージを浸透させていくことが当面の目標です。その後、ベビー用品やマタニティ用品の横に、当社のパパ向け商品が置かれることを目指しています」

今後は、海外のAmazonに出品できるAmazonグローバルセリングの利用を検討していると言います。

小山さん「アウトドア用のエプロンとして男性用と子ども用を販売しています。パパと子どもがペアルックのエプロンをつけて、素敵な思い出を作ってほしいからです。Amazon IP Acceleratorでは、日本以外の国での知的財産権の確立についてのサポートも受けられるので、Amazonグローバルセリングと併用してブランドを成長させ、世界中のパパが輝く瞬間をサポートしたいですね」

3つのポケッㇳがついた大きさの異なるエプロンが2つ並んでいる
親子のペアルックを想定して作られたアウトドア用の「クラフターエプロン」

Amazonで成長を遂げた、角が折れない名刺入れブランド

東京都にあるMOON-X株式会社は、2019年に創業し、自社ブランドの開発や他社ブランドのDX支援を行っています。シニアブランドマネージャーの松岡興平さんは、メーカーからブランドを譲り受け、共に育てる事業を「共創型M&Aという新しいモデル」だと語ります。

メガネをした男性が名刺入れを3つ手に持っている
MOON-X株式会社 シニアブランドマネージャー・松岡興平さん

松岡さん「根底にあるのは、ものづくりに携わる日本の中小企業を応援したいという想いです。さまざまなメーカーさんとパートナーシップを結びながら、より多くのお客様に愛されるブランドとして育てていくのが当社のミッションです」

中でも、名刺入れブランドのRoffalは、2021年に同社がブランドを譲り受けて以降、Amazonで成長を遂げています。

松岡さん「名刺を交換する際、名刺の角が折れていると、あまり印象が良くありませんよね。角が折れることを防ぐ頑丈なステンレス製で、スタイリッシュなデザインにこだわったのがRoffalです。Amazonでブランドイメージを浸透させるために、Brand Registryへのアクセスを取得できるAmazon IP Accelerator を通じて商標登録を行いました。ストア機能の利用が可能になるので、没入型の体験を創造するブランドページを作成し、ブランドの世界観を打ち出しました」

皮や木などさまざまな素材が表面に張られた名刺入れが15個ほど並んでいる
表面に使用するレザーや木材といった材質にもこだわり、商品ラインナップの拡充を図っている
名刺入れを開き、名刺を取り出している様子
大きく開く開口部によって名刺が取り出しやすい構造も特長

お客様のためにも、ブランド保護は必要不可欠

同社は、Roffalのほかにもベビー・マタニティ用品や寝具などのブランドを展開し、Amazonで商品を販売しています。それらのブランドに共通しているのは、何よりもお客様の声を大切にする姿勢だと松岡さんは言います。

松岡さん「商品開発・改良の際は、複数人のお客様にインタビューしたり、アンケートをとったり、お客様の声を徹底的に分析し、そこに独自のデータを掛け合わせる手法をとっています。Amazonの出品サービスは操作のしやすさやFBAによる配送業務の効率化など、運用面の負荷が本当に低いんです。そのおかげで、お客様の声をお伺いするための時間を生み出すことができています」

Amazon IP Acceleratorを利用した理由も、お客様のためにブランドを守りたいという思いからだったと言います。

松岡さん「ブランドはお客様の信用によって成り立つものです。当社の商品を購入してくださったお客様のもとへ、しっかりと正規の商品が届く安心感を常にご提供したいという思いは強いですね。知的財産権を侵害されることは、それまでブランドが築き上げてきたものが一瞬にして崩れ去る損失につながります。だからこそ、Amazon IP Acceleratorを利用し、商品名とロゴの商標登録を行いました。ブランドを成長させるためには、商標を保護してブランドを守ることが必要不可欠だと思います」

和やかに会議をしている様子
社員にはものづくりが好きな人材が多く、メーカーとのコミュニケーションを大切にしているという
PCの画面。Amazonの商品ページが表示されている
Amazonの商品詳細ページでは、商品の特長が端的に伝わる商品名や説明文を心がけている

Amazonはブランドを成長させることができる魅力的な販路

Amazon IP Acceleratorで商標を登録することで、自動保護機能と権利侵害を申告するツールの使用を通じて、知的財産権を保護するBrand Registryへいち早くアクセスできるメリットも大きいと言います。

松岡さん「Brand Registryの存在はブランド登録前から知っており、Amazon IP Acceleratorを利用したきっかけの1つです。Brand Registryによって商品詳細ページのコンテンツと写真の正確性を確保できるので、常にブランドが守られている安心感を得ています。Amazonはブランドを大きく成長させることができる販路ですし、海外展開をサポートしてくれるAmazonグローバルセリングも魅力的です。また、利用しているAmazonのマーケットプレイスコンサルティングサービスのコンサルタントは非常に親切で、二人三脚でブランドの成長を考えてくれます。Amazonのさまざまなサービスを活用することで、日本のものづくりを応援したいという当社の想いが形になっていると感じています」

こだわりや想いが詰まったブランドを展開するシティブレンド株式会社とMOON-X株式会社。Amazonの商標登録やブランド保護に関するサービスを通じた両社の取り組みは、ブランド戦略において多くの示唆を与えてくれます。ブランドを守るため、お客様の信頼を守るため、ブランド保護は極めて重要だと言えるでしょう。

2022年のシリーズでは、事業承継、地域活性化、働き方改革などの社会課題の解決のためにDXを活用した事例や農業や水産業などの第一次産業における中小企業が実践するDXについてもご紹介しています。

Amazon IP Accelerator(商標登録促進)とは?
Amazonが特に中小企業を念頭に開発したサービスです。知的財産権の知識を有する法律事務所と連携し、販売事業者の商標登録をサポートするほか、Amazon Brand Registryのブランド保護機能やブランド構築機能にいち早くアクセスすることができます。Amazonでは、商品の購入転換率を改善したり、商品を発見されやすくしたり、知的財産権を保護するために役立つブランドオーナー向けのツールセットを提供しています。


本連載について
Amazonでの販売を支援する「Amazon出品サービス」、ビジネス上の購買をサポートする法人向けサービス「Amazon ビジネス」、決済サービス「Amazon Pay」、クラウドサービス「アマゾン ウェブ サービス(AWS)」など、Amazonはさまざまな企業の課題を解決する多様な選択肢を提供しています。本連載では、DX(デジタル・トランスフォーメーション)に取り組む中小企業と、そのDXをさまざまなカタチで支援するAmazonのストーリーをご紹介します。

過去のストーリーはこちら


そのほかのAmazonのニュースを読む