社会全体がDX(デジタルトランスフォーメーション)に舵を切る中で、Amazonは日本の企業の約9割を占める中小企業(小規模事業者含む)を支援し、さまざまなサービスやプログラムを通して中小企業のDXを後押ししています。デジタルがもたらす中小企業の変革とは? そして、変革を加速させるAmazonのサポートとは? 連載企画の第7回は、Amazonでの販売を通じてエシカル消費を後押しする中小企業を紹介します。
※本記事は、2022年4月19日に日本経済新聞および日本経済新聞電子版に掲載された記事を加筆したものです。

近年、エシカル(倫理的な)消費という言葉が注目を集めています。エシカル消費とは、人権や環境、社会に配慮して作られた持続可能な商品を能動的に購入すること。国連が掲げるSDGs(持続可能な開発目標)や政府・企業が取り組む気候変動対策といった社会全体の動きに伴い、消費者の意識が変化していることの表れだと言えます。
今回は、Amazonでの販売を通じてエシカル消費を後押しする2社から、エシカル消費の実態や社会に与える影響を探っていきます。

株式会社ふみこ農園 専務取締役の成戸晃子さんと、スムージー、甘酒、フルーツコンポートなどの商品がならんだ写真
株式会社ふみこ農園 専務取締役・成戸晃子さん

食品ロスに対応した商品で生産者を支える

和歌山県産の農作物の卸販売や、農作物の加工品の製造・販売を行う中で、食品ロスの減少に取り組んでいる株式会社ふみこ農園。その背景には、生産者への想いがあると専務取締役の成戸晃子さんは語ります。

成戸さん「温暖な気候の和歌山県はフルーツ王国として知られる一方、生産者の高齢化、若い世代の担い手不足という課題に直面しています。そんな状況を変えたいという想いから、地域経済の発展に貢献できるよう、無駄なく農作物を使い切ることに取り組み、EC(電子商取引)を通じてより多くのお客様に商品を届けています」

フルーツのコンポート商品や甘酒がならんだ写真
華やかな見た目のフルーツのコンポート商品や甘酒
小皿に乗ったあんぽ柿の写真
ベルギーで行われる食のコンテスト、International Taste Institute(旧名:国際味覚審査機構)で8年にわたり優秀味覚賞に輝いたあんぽ柿

食品ロスへの対応では、台風などの被害で規格外となった農作物の販売のほか、2018年から新たな加工品の開発にも取り組んでいます。

成戸さん「梅干しづくりの過程で生じる梅酢は廃棄されることが多く、塩害の恐れがあるため、廃棄にも費用がかかります。けれど、塩分やクエン酸を豊富に含んだ梅酢を捨てるのはもったいない。そこで、加工品という形であれば梅酢の力を活かせると考え、近畿大学薬学部と共同で梅酢の塩を使ったチュアブル(かみ砕いて服用する錠剤)を開発しました」

チュアブルの写真
チュアブルは梅塩のほか、ショウガやかんきつ類のジャバラを使った商品もある
衛生的な環境で商品が瓶詰めされている写真
食の安心・安全を守るため、和歌山食品衛生管理認定(和歌山県版HACCP)を取得している

それ以来、ふみこ農園はエシカルな商品づくりに取り組んできました。

成戸さん「梅酢以外にも、果物の皮などを使った加工品も開発してきました。こうした取り組みは農作物の価値を見直すことにつながり、環境改善や地域経済の活性化に貢献します。小・中学校でSDGsについて学ぶ今の時代、子どもたちは環境や社会に意識的ですし、将来的にエシカル消費は当たり前になるかもしれません。子どもたちのためにも、より良い社会を残していきたいですね」

お客様を大切にするAmazonの姿勢に共感

主な販路は、百貨店などへの卸販売と、2004年に開設した自社ECサイトでしたが、2012年にAmazonでの販売を開始しました。

成戸さん「ここ数年、Amazonでの売上が伸びています。それ以前は、商品詳細ページで私たちの想いをどう伝えればいいのか、考えが及ばずにいました。ターニングポイントは2020年、Amazonの担当者と話す中で、『ストアページを作ってブランディングをしましょう』『ギフト需要を伸ばしましょう』と、さまざまなアドバイスをもらったことです」

アドバイスをもとにストアページの作成やブランド登録を行うと、徐々にファンが増えていきました。

成戸さん「スポンサープロダクト広告の反響も大きく、多くのお客様からご注文をいただき、喜びの声もたくさん頂戴しました。箱を開けた瞬間、思わず笑顔がこぼれる商品をお届けしたいという私たちの想いが実現し、本当にうれしかったことを覚えています。自社から商品を発送する際はお手紙を添えているのですが、わざわざお手紙を返信してくださるお客様もいらっしゃいます」

過去に書いた手紙がファイリングされている写真
お客様への手紙には和歌山県の魅力やふみこ農園の近況をつづっている
成戸さんと女性スタッフが商品を手に楽しそうに談笑する写真
スタッフは女性が多く、フレックスタイム制などで仕事と子育ての両立を支援している

Amazonが商品の保管、注文処理、梱包、配送、さらには注文や返品に関するカスタマーサービスを代行してくれるフルフィルメント by Amazon(FBA)も業務効率化に大きく貢献しています。

成戸さん「注文処理や配送の手間が省けていることは非常に助かっています。Amazonの担当者から、『地球上で最もお客様を大切にする企業を目指している』と聞いて心から共感したのですが、配送の迅速さや商品破損時の対応など、本当にその通りだなと思います。Amazonの担当者はブランドに寄り添って施策を提案してくれますし、私たちのことも大切にしてくれていると実感しています」

笑顔の成戸さんの写真
これからもお客様の身近にある、親しみやすいブランドでありたいと語る成戸さん

現在は、Amazonのカスタマーレビューをもとに、商品の改良にも励んでいるというふみこ農園。卸販売では直接得られないお客様の声が励みになっていると成戸さんは語ります。

成戸さん「カスタマーレビューやお手紙につづられた感謝の言葉や、Amazonの担当者のサポートなど、こうした心温まる交流がECを通じて生まれるとは想像していませんでした。これからもエシカルな商品を開発し、お客様に笑顔を届けていきたいですね」

素材の力を引き出し、エシカルな製品を開発

スキンケアアイテムやフレグランスなどを幅広く展開し、多くのファンを獲得しているSHIRO。「私たちは、エシカル消費が注目を集める以前から持続可能なものづくりを行ってきました」と語るのは、株式会社シロホールディングス(以下、シロ)経営企画グループ マネジャーの野木村美里さんです。

野木村さんとSHIROの製品の写真
株式会社シロホールディングス 経営企画部門 経営企画グループ マネジャー 野木村美里さん

野木村さん「自然の恵みを余すことなく活用する。この精神は、2009年にSHIRO(旧LAUREL)を立ち上げた当初から脈々と受け継がれています。世界各国で知り合った生産者さんから素材を直接仕入れるという、素材探しの旅の成果が今の礎となっているんです」

その精神がエシカルな取り組みに結びついたのは、ごく自然な流れだったといいます。

野木村さん「たとえば、純米酒をつくるときの副産物である酒かすを化粧水に使ったり、本来なら廃棄するユズの皮をフェイスミストに用いたりと、副産物・廃棄物を応用した製品を2010年から開発しています。ただ、食品ロスだけを意識して始めたわけではなく、純粋に素材の力を最大限に引き出したい、素材本来の価値に光を当てたいという想いから開発に至りました」

SHIROの製品がならぶ写真
幅広い製品は開発・製造・販売まで一貫して自社で行っている
スキンケア商品の写真
副産物である酒かすやがごめ昆布など、選りすぐりの素材を活かしたスキンケア商品

素材の力を引き出すためなら、一切の努力を惜しまない精神もシロの特徴です。

野木村さん「毎年、年始めに『さくら219』という限定フレグランスを販売するのですが、219という数字は製品が完成するまでに重ねた試作の数。ひとつの製品に気が遠くなるほどの情熱を注ぎ、妥協しないという証のような製品です。メイクアップ製品を新たに開発する際も、ただ化粧するための製品ではなく、保湿効果のあるアマニ油を用いるなど、素材選びにこだわりました」

作り過ぎない生産体制を敷いているのも、想いを込めて作った製品を無駄にしたくないという考えから。また、ガーナ共和国の女性団体が手作業で製造しているシアバターの取引では、フェアトレード(公平・公正な貿易)に取り組んでいます。

野木村さん「私たちが常に本気で考えているのは、SHIROの製品がお客様にとって心地いいか、お客様の毎日に笑顔をもたらしているか。その先に、私たちが使う素材や自然環境への想いに共感していただくことが理想です。2020年からエシカル割を導入し、自社ECサイトおよび一部の店舗でパッケージレスを選ばれたお客様にお値引きしていたのですが、2022年4月からは、あらかじめパッケージのない製品を自社ECサイトと全店舗で販売しています。そうした取り組みがお客様に気づきを与え、社会や環境について考えるきっかけになれたらうれしいですね」

メイクアップアイテムの写真
メイクアップアイテムにはアマニ油やジンジャーといった素材を用いている

ピーク時にも対応してくれるAmazonは重要な販売チャネル

北海道札幌市の小さな店舗から出発し、全国展開へと成長を遂げてきたシロ。しかし、コロナ禍によって転機が訪れます。

野木村さん「2020年3月の緊急事態宣言を受け、実店舗は休業を余儀なくされました。その影響で、4月に入ると自社ECサイトの売上が急激に伸びたのですが、大量の注文処理に対応できず、製品を迅速に届けることができませんでした。そこで、補助的な位置づけとして外部ECを検討し始めました」

同年6月からAmazonでの販売を開始。数あるECからAmazonを選んだ理由はひとつではないといいます。

野木村さん「大量の注文処理に苦戦した経験から、FBAには大きな魅力を感じました。また、FBAを利用することで、お急ぎ便に対応できる配送の迅速さも決め手のひとつです」

製品を囲んで話をする野木村さん達の写真
自分たちが本当に良いと思ったものだけを扱うことがポリシー
フレグランスアイテムの写真
ルームフレグランスはコロナ禍のステイホーム需要で売上が伸びたという

販売開始後は、Amazonの担当者のサポートもメリットに感じたと言います。

野木村さん「わからないことがあったときに問い合わせをすると、クイックにレスポンスがあるのでとても助かっています。広告やセールの案内をくれるときも、シロにとってどうプラスになるかという視点で話してくれます。ブランドとして価格を下げることはポリシーに反するのでセールには参加していませんが、ポイントアップキャンペーンに参加し、スポンサープロダクト広告の利用も検討しています」

配送の迅速さは、Amazonでの販売を加速させました。

野木村さん「SHIROの製品はクリスマスなどのギフトシーズンに売上が伸びます。2020年12月も、堅調に自社ECサイトとAmazonで注文が増えていたのですが、クリスマス直前になると注文がAmazonに集中しました。自社ECサイトでは最短でも注文日の翌日発送のところ、Amazonでは注文日の発送にも対応しているため、Amazonでご購入されるお客様が一気に増えたのです」

この出来事を機に、「Amazonはシロにとって重要な販売チャネル」であることを確信し、製品ラインアップを拡充していきました。

野木村さんの写真
製品を通してお客様に笑顔をもたらしたいと語る野木村さん

野木村さん「自社ECサイトでは限定アイテム販売時に注文が集中し、サーバー障害が起きてしまったこともあり、配送のリードタイムも含め、Amazonという信頼性の高い販売チャネルを持つことはリスク回避につながります。同時に、利用者の多いAmazonは、より多くの方にSHIROのことを知っていただく入り口としてのメリットも大きいと考えています。今後は、実店舗、自社ECサイト、そしてAmazonを通して、より多くのお客様に製品や私たちの想いを届けていきたいですね」

素材の持つ力や価値を引き出すことでエシカルなアイテムを生み出し、その先に環境改善や地域経済の発展を見据えるふみこ農園とシロホールディングス。Amazonという販売チャネルを活用し、新規顧客と出会う機会を増やすことで、両社が後押しするエシカル消費はさらに加速し、より良い社会のバトンを未来につないでいくことでしょう。

中小企業を進化させるAmazonのDXサポートシリーズ
Vol.1 商品のリピーターを生み出す、DXにおける新たな方程式とは?
Vol.2 ECビジネスを加速させるギフト戦略の最前線
Vol.3 ECビジネスに不可欠なフルフィルメント戦略
Vol.4 既存商流のデジタル化はなにをもたらすか?
Vol.5 女性を支える商品は、社会と暮らしをどう変えるか?
Vol.6 DXと共に変化する、新生活アイテムの消費行動とは?
Vol.7 DXはエシカル消費をどのように後押しするか?
Vol.8 AWSクラウドがもたらした、農業を支えるDXの進化
Vol.9 AWSが加速させる、社会に貢献する事業のDX
Vol.10 スタートアップの革新はいかにして生まれるか?
Vol.11 AWSによるDXは、第一次産業をどう進化させるか?
Vol.12 事業承継のために老舗が挑んだ改革と守った精神
Vol.13 豊かな人生に貢献する商品を生み出した開拓者たち
Vol.14 業務効率化で生まれた時間をどう活用するか?
Vol.15 ブランドの保護・活用による中小企業の成長戦略
Vol.16 企業の情報資産を守り、ビジネスを止めないために
Vol.17 日本の健康を食で支えるために開拓したECという販路
Vol.18 社会課題にイノベーションを起こすITベンチャーの技術力
Vol.19 エッセンシャルワーカーにDXはどんな価値をもたらすか?
Vol.20 和の名産を手がける老舗が踏み出したDXの新たな一歩
Vol.21 デジタル面にとどまらない、Amazonの中小企業支援とは?
Vol.22 行動や価値観の変化を捉える、中小企業の商品開発の今
Vol.23 メイド・イン・ジャパンの品質を世界中に届けるために
Vol.24 地域活性化を後押しする、特産品の魅力とDX

2021年のこのシリーズでは、コロナ禍を乗り越えた飲食店や、OEMから自社ブランド製造に舵を切った企業、老舗の食品店や伝統工芸品店、農産物販売企業まで、Amazonで販路を広げDXを推し進める中小企業をご紹介しています。

 

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