社会全体がDX(デジタルトランスフォーメーション)に舵を切る中で、Amazonは日本の企業の約9割を占める中小企業(小規模事業者含む)を支援し、さまざまなサービスやプログラムを通して中小企業のDXを後押ししています。デジタルがもたらす中小企業の変革とは? そして、変革を加速させるAmazonのサポートとは? 連載企画の第29回は、女性の健康や美を支える商品のDXに迫ります。
※本記事は、2022年12月22日に日本経済新聞および日本経済新聞電子版に掲載された記事を加筆したものです。
女性の社会進出が進むに伴い、これまでも女性の毎日を応援するさまざまな商品が誕生してきました。そして、インターネットが普及し、テクノロジーが格段に発達した現在、テクノロジーと美容を組み合わせたビューティーテック、女性の健康課題解決にテクノロジーを活用するフェムテックといった商品が注目を集めています。
今回は、Amazonでの商品の販売や、AI(人工知能)や機械学習、IoT、データ分析、アプリ開発などを含む、200種類を超えるクラウドサービスを提供するアマゾン ウェブ サービス(AWS)を活用した商品開発というDXに挑む2社の事例から、女性の健康や美を支える商品の進化を紹介します。
女性社員とお客様の声を反映した商品開発
美容・健康器やマッサージ器、折りたたみベッド、寝具など、幅広い商品を販売する株式会社アテックス。「1992年の創業当時は、折りたたみベッドが主力商品でした」と語るのは、同社代表取締役社長の深野道宏さんです。
深野さん「当時、折りたたんで自立収納できるベッドが多くのお客様の支持を得る傍ら、女性社員をメインにしたチームを立ち上げ、『自分たちが本当に欲しいものを作ろう』と、健康器の開発を始めました。当時は珍しかった女性向けマッサージクッションが大ヒットを記録したことから、女性向け商品の開発に力を入れ始めたのです」
近年は、電気で筋肉を刺激するEMSや温熱といったテクノロジーを駆使したビューティーテック、フェムテックアイテムを開発。中でも、古来から親しまれているお灸に、充電式という新発想を加えた火を使わないデジタルお灸は、販売後すぐに話題を集めました。
深野さん「当社の社員のおよそ半数は女性です。彼女たちが議論を重ねて辿り着いたのが、女性特有の悩みに着目した商品を開発することでした。デジタルお灸は、血行を促進し、充電式なので匂いや火の消し忘れもありません。優しい色合いのシンプルなデザインもお客様に好評を博しています」
そんな同社は、お客様に寄り添うことを信条にしています。
深野さん「当社のような中小企業は、広告宣伝費に多くの予算を割くことができません。だからこそ、お客様のご要望やお悩みに寄り添った商品を開発し、クチコミによって商品を認知していただく。商品力こそ一番の宣伝材料であり、当社の最大の武器なのです」
Amazonでの販売を通じてお客様の声を知る
家電量販店をはじめとする実店舗での販売に加え、2014年からはAmazonのリテール部門に商品を卸しています。Amazonが販売者となり、販促や商品の保管、出荷、配送などを担っています。
深野さん「お客様の声が集まるAmazonのカスタマーレビューは、商品に関するお客様のご要望やお悩みを知る絶好の機会です。また、年々Amazonのご利用者様が増加していることを知り、ビジネスを成長させるためには、Amazonでの販売は必要不可欠だと考え、販路拡大に踏み切りました」
カスタマーレビューは、商品の改良に役立てているといいます。
深野さん「Amazonのカスタマーレビューをもとに商品を改良すると、実店舗の売上にも好影響が表れます。Amazonのカスタマーレビューを起点に、オンラインと実店舗の両方が成長を遂げることができました」
また、物流におけるメリットも大きなものだといいます。
深野さん「Amazonの物流は充実しており、納品頻度を削減できたり、配送作業の業務負荷を軽減できたりと、多くのメリットを得ています。物流業務が効率化できる分、商品開発担当者と話し合う時間が生まれ、新商品の開発や商品の改良に集中できています」
さらに、Amazonのリテール部門の担当者の存在も大きいといいます。
深野さん「Amazonの担当者が販売実績や最新のサービスについて定期的に教えてくれます。最近は、担当者のアドバイスをもとにした商品開発も進めています」
お客様の声を重視した商品開発を行う中で、目指すべきビジョンも明確になっています。
深野さん「当社は、お客様に提供する価値として、ヘルス・ヒーリング・ハピネスというスローガンを掲げています。女性の健康に寄与し、心身を癒やし、幸せをもたらす。そんな商品を一人でも多くの女性たちに届けていきたいですね」
独自のパーソナライズヘアケアアイテムの誕生
著しい進化を遂げるビューティーテックの今後を占う上で、「パーソナライズ」は重要なキーワードです。テクノロジーを活用し、その人の顔や肌、健康状態に合った化粧品や美容器具を提案し、販売する流れが加速しています。
独自のパーソナライズヘアケア商品を生み出した株式会社Spartyは、ビューティーテック業界をリードする中小企業です。2017年に創業後、一人ひとりの悩みや個性に合わせたヘアケアアイテムやスキンケアアイテムなど、パーソナライズに特化したブランドを展開し、急成長を遂げています。同社執行役員CTOの山下貴大さんは、ヘアケアアイテムは代表取締役・深山陽介さんの体験がもとになっていると言います。
山下さん「髪質に合ったシャンプーが見つからずに悩んでいた代表のパートナーの体験がヒントとなり、『一人ひとりの悩みや個性に合ったヘアケアアイテムを作れないか』という発想から商品が生まれました。オンライン診断で髪の悩みや理想の髪などに関する10の質問にご回答いただくと、約5万通りの組み合わせの中からお客様に合ったヘアケアアイテムを提案する仕組みです。商品をご購入いただいた後も、定期カウンセリング機能を通じて使用感をフィードバックしていただき、よりお客様に最適な商品をご提案しています」
画期的なサービスはSNSを中心に話題を呼び、多くのファンを獲得していますが、商品開発やシステム開発には苦労したといいます。
山下さん「専門家の助言を得ながら、ヘアケアアイテムの処方や製造先を決めていく中で、最も苦労したのがシステムの構築です。オンラインの診断システムが肝となる商品なので、一切の妥協は許されませんでした。お客様の回答に基づいて最適な商品を提案するシステムの構築は難易度が高く、高度かつスピーディな分析を行う点でAWSが欠かせませんでした」
AWSの柔軟性はスモールスタートに最適
200種類を超えるクラウドサービスを提供するAWSは、ヘアケアアイテムの診断システムや定期カウンセリング機能などに活用されています。
山下さん「以前からAWSを利用していたので、使い慣れていたこと、ユーザーインターフェースが使いやすかったことから、AWS以外の選択肢はありませんでした。ヘアケアアイテムの診断結果を導くための分析ツールをはじめ、AWSには豊富なクラウドサービスが揃っており、セキュリティ面における信頼度も高い。新しいクラウドサービスも次々と追加されるので、エンジニアの創造性を刺激してくれるメリットもあります。また、AWSは世界的にユーザーが多いので、ネット上にさまざまな情報が公開されており、わからないところがあればユーザー同士で情報交換することができます。日々機能が改善されていて使いやすいですね」
サービスを使用した分だけ料金を支払い、サービスの使用を停止したときの追加コストや解約料金も発生しない従量制料金の利点も大きいといいます。
山下さん「CMを放送したときは、多くのお客様がサイトに訪れることを見越してクラウドサーバーやストレージを強化しました。柔軟にスケールアップやスケールダウンができる従量制料金のメリットは大きく、新しいビジネスにおいてスモールスタートを切るにはAWSは最適だと思います」
パーソナライズを起点に、今後はサービスの拡張を目指しています。
山下さん「当社のミッションは、『色気のある時代を創ろう』。色気とは、その人本来の人間らしさ、美しさを意味します。すべての人の魅力を引き出すという軸をブラさずに、今後は海外にも挑戦する計画を立てています。AWSが提供するクラウド型のコールセンターシステムも利用したいと考えており、よりお客様の満足度を高めていければと考えています」
Amazonでの販売を通じてビューティーテックやフェムテックを展開するアテックスと、AWSのクラウドサービスを活用し、パーソナライズされたビューティーテックを提供するSparty。両社の取り組みは、女性の毎日を支える商品の裏側には、お客様の声に寄り添った商品開発や、AWSをはじめとするテクノロジーの進化が存在することを教えてくれます。
中小企業を進化させるAmazonのDXサポートシリーズ
Vol.1 商品のリピーターを生み出す、DXにおける新たな方程式とは?
Vol.2 ECビジネスを加速させるギフト戦略の最前線
Vol.3 ECビジネスに不可欠なフルフィルメント戦略
Vol.4 既存商流のデジタル化はなにをもたらすか?
Vol.5 女性を支える商品は、社会と暮らしをどう変えるか?
Vol.6 DXと共に変化する、新生活アイテムの消費行動とは?
Vol.7 DXはエシカル消費をどのように後押しするか?
Vol.8 AWSクラウドがもたらした、農業を支えるDXの進化
Vol.9 AWSが加速させる、社会に貢献する事業のDX
Vol.10 スタートアップの革新はいかにして生まれるか?
Vol.11 AWSによるDXは、第一次産業をどう進化させるか?
Vol.12 事業承継のために老舗が挑んだ改革と守った精神
Vol.13 豊かな人生に貢献する商品を生み出した開拓者たち
Vol.14 業務効率化で生まれた時間をどう活用するか?
Vol.15 ブランドの保護・活用による中小企業の成長戦略
Vol.16 企業の情報資産を守り、ビジネスを止めないために
Vol.17 日本の健康を食で支えるために開拓したECという販路
Vol.18 社会課題にイノベーションを起こすITベンチャーの技術力
Vol.19 エッセンシャルワーカーにDXはどんな価値をもたらすか?
Vol.20 和の名産を手がける老舗が踏み出したDXの新たな一歩
Vol.21 デジタル面にとどまらない、Amazonの中小企業支援とは?
Vol.22 行動や価値観の変化を捉える、中小企業の商品開発の今
Vol.23 メイド・イン・ジャパンの品質を世界中に届けるために
Vol.24 地域活性化を後押しする、特産品の魅力とDX
Vol.25 中小企業が取り組むSDGsとDXの相乗効果
Vol. 26 健康意識の高まりを捉えた、中小企業のDX戦略
Vol.27 中小企業を進化させるAmazonのDXサポート地方発DXが秘める可能性とAmazonのDX支援とは?
Vol.28 中小企業を進化させるAmazonのDXサポート ふるさと納税から見る、地方創生とDXの相乗効果