社会全体がDX(デジタルトランスフォーメーション)に舵を切る中で、Amazonは日本の企業の約9割を占める中小企業(小規模事業者含む)を支援し、さまざまなサービスやプログラムを通して中小企業のDXを後押ししています。デジタルがもたらす中小企業の変革とは? そして、変革を加速させるAmazonのサポートとは? 連載企画の第26回は、フィットネス需要の高まりに対応した中小企業のDX戦略を紹介します。
※本記事は、2022年11月8日に日本経済新聞および日本経済新聞電子版に掲載された記事を加筆したものです。
新型コロナウイルス感染症のまん延により、生活様式や価値観に多くの変化が生じました。中でも、日々の体調管理や免疫力を高める生活習慣など、人々の健康意識の変化に与えた影響は大きなものです。
スポーツ庁が2021年に行った調査※によると、運動やスポーツの機会が増加した理由として、「コロナウイルス感染症対策によるスポーツの必要性に対する意識の変化」と答えた人は25.2%と、4人に1人が新型コロナウイルス感染症対策を挙げています。
こうした健康意識の変化を受け、自宅で気軽に運動ができるフィットネス器具や、健康的な体づくりのための食品やサプリメントの需要が拡大しています。そこで今回は、Amazonでの販売を通じ、健康意識の高まりに対応する中小企業2社を紹介します。
※ スポーツ庁「令和3年度『スポーツの実施状況等に関する世論調査』」
自分らしく生きることを叶えた筋トレとの出会い
ホームフィットネスブランド「STEADY」を展開するステディジャパン株式会社が目指すのは、筋トレを通じて、心身ともに健康かつ自分らしく生きられる社会の実現です。その経緯を、カスタマーサクセス本部の山田祐希さんはこう語ります。
山田さん「代表取締役CEOの森がアパレル企業を立ち上げ、休む間もなく働いていた頃、過労で心身に不調をきたしました。つらい状態が毎日続き、さまざまな改善策を試しても良くならない。そんな中で筋トレを始めたところ、心身の調子が良くなったそうです。体調が改善されると、精神的にも自信がつき、自分らしくいられる。森は筋トレが持つさまざまな効果に魅了されていきました」
森さんは自宅用のフィットネス器具を探したものの、理想のものがなかなか見つからなかったそうです。
山田さん「フィットネス器具は海外製品が多く、日本人の体格や、コンパクトで静粛性の求められる日本の住環境にそぐわないものばかりでした。そこで、森が日本人の体格や住環境に合ったフィットネス器具を開発しようと思い立ったのが始まりです」
同社が最初に取りかかったのは、懸垂器具の開発です。
山田さん「ゼロから企画して、納得のいくクオリティの懸垂器具を作るのは大変だったと聞いています。40社近くの製造会社に連絡し、ミリ単位でこだわり抜いて、納得のいく品質の製品を完成させました」
飛躍を後押ししたAmazonのサービス
製品が完成すると同時に、2018年からAmazonでの販売を開始しました。
山田さん「当初から販路はAmazonをメインに考えていました。筋トレ人口は男性が中心で、Amazonの利用者も男性が多いと知って、親和性の高さを感じていたからです。販売を始めるとカスタマーレビューで高評価を獲得し、認知度が高まるとともに、ホームフィットネスブランドとしての立ち位置が確立されていきました」
Amazonのカスタマーレビューは、製品改良のヒントにもなっていると言います。
山田さん「カスタマーレビューは、私たちからすると宝の山のようです。お客様ご自身が気づいたことを率直に書いてくださるので、カスタマーレビューを製品の改良に役立てています。また、SNSで弊社の製品を紹介してくださったお客様に対し、SNS上で積極的にコミュニケーションをとるなど、お客様との対話を大切にしています」
コロナ禍のフィットネス需要の高まりも成長を後押ししました。
山田さん「筋トレは運動不足や肥満の解消、健康維持、さらにはメンタルの安定や改善にも効果があります。コロナ禍を機に筋トレを始めた方は多く、ブランドの飛躍につながりました」
その飛躍を後押ししているのが、Amazonの多様なサービスです。
山田さん「Amazonへの出品方法を学べる無料のオンライントレーニング、Amazon出品大学を利用したことで、販売をスムーズかつ効果的に進めることができました。フルフィルメント by Amazon(FBA)のメリットも大きいですね。FBAではAmazonが商品の保管、注文処理、梱包、配送、さらには注文や商品に関するカスタマーサービスを代行してくれるので、製品開発の時間を確保することができています。また、大型製品も全国一律の配送料で届けられる点も助かっています」
今後は従来のフィットネス器具を超えた展開も見据えています。
山田さん「将来的にはフィットネス器具に加え、毎日の生活の中に自然に取り入れられて、心身の健康に寄与する新しいソリューションもご提案したいと社内で話し合っています。これからも、より自分らしく、より健やかに生きることを応援していきたいと思っています」
サプリメントでアスリートを支える
近年のボディメイクに対する関心の高まりから、プロテインサプリメントに注目が集まっています。たんぱく質を補うことができるプロテインサプリメントは、筋肉づくりや筋力維持に必要であり、筋トレ時に摂取する人や、筋力維持のために日常的に摂取する人が増えています。
プロテインサプリメントやエナジードリンクなどの販売を行うブランド「X-PLOSION」を運営するエクスプロージョン合同会社CEOの大谷憲弘さんは、需要の増加は健康意識の高まり以外にもあると分析します。
大谷さん「ひと昔前に比べて、たんぱく質という言葉を目にする機会が増えました。その背景には、厚生労働省が65歳以上の高齢者が1日に摂取するたんぱく質の目標量を引き上げるなど、社会全体の動きも影響していると思います」
そう語る大谷さんは、パワーリフティングの日本記録保持者。アスリートとして現役生活を続けながら、プロテインサプリメントの販売を始めたのには理由があります。
大谷さん「学生などの若手アスリートを育成する中で、彼らが金銭的な理由からプロテインサプリメントを購入できない現実を目の当たりにしました。安価な海外製の商品を購入し、ドーピング検査で引っかかってしまうケースもありました。そこで、安全かつ低価格のプロテインサプリメントを作れないかと考えたのが始まりです。若いアスリートを応援したいという気持ちが今も原動力になっています」
最もこだわったのが価格設定です。
大谷さん「当社の最大の企業価値はコストパフォーマンスにある。そう断言できます。たんぱく質は毎日欠かせないものだから、継続的に購入できる価格を追求しました」
大谷さんが自らモニターとなって安全性を確認し、プロテインサプリメントの原料の製造工程や配合比率なども厳密にチェックし、商品化を実現。当初は教え子たちに販売を始めました。
大谷さん「全国に教え子がいるので、彼らの間でクチコミが広がり、教え子以外にも商品をお求めになるお客様が増えていきました。そこで、2015年に自社ECを立ち上げ、販路を広げたのです」
利用者の多いAmazon Payのメリット
自社ECの決済にはAmazonの決済サービス、Amazon Payを導入し、成果を上げています。
大谷さん「商品を購入する際、お客様にとってネガティブな要素はすべて排除しようと考えています。Amazon Payは多くのECサイトが導入しており、導入していないことでお客様の選択肢から外れることは避けようと思いました。Amazonのアカウントをお持ちのお客様なら、クレジットカード情報などの入力が省けるので、多くのお客様にAmazon Payをご利用いただいています」
2016年からはAmazonでの販売を開始し、販路の拡大に踏み切りました。
大谷さん「自社ECの場合、メインの顧客層はアスリートで、その多くは私の存在を知ってくださる方々です。一方、Amazonは利用者層が幅広く、初めてプロテインサプリメントを購入される方や高齢者の方などもいらっしゃいます。今までアプローチできなかったお客様にも商品を届けることができたのは、Amazonのおかげだと思います」
Amazonの担当者のコメントも役立てられていると言います。
大谷さん「Amazonのサービスは日々進化しています。Amazonの担当者の方が、新しいサービスや今後のセールについて親身になって教えてくれるので、変化にすぐに対応できるので助かっています」
今後はより多くの人に、商品を届けるための構想を描いています。
大谷さん「年々販売量が増えていることもあり、自社工場の建設を計画しています。開発から製造、販売までを自社で担いつつ、他社の商品の製造も請け負うOEMを視野に入れています。ブランドとメーカーを両立することで、どこよりも安全で低価格のプロテインサプリメントを安定的に供給することが当面の目標です」
フィットネス器具を通して心身の健康状態を改善し、自分らしい生き方を提案するステディジャパンと、プロテインサプリメントによって体づくりをサポートするエクスプロージョン。健康意識が高まる中、両社はAmazonを通じた販売によってDXを実現し、大きな飛躍を遂げました。さらなる需要の拡大が見込まれる中で、DXが果たす役割は増していくことでしょう。
中小企業を進化させるAmazonのDXサポートシリーズ
Vol.1 商品のリピーターを生み出す、DXにおける新たな方程式とは?
Vol.2 ECビジネスを加速させるギフト戦略の最前線
Vol.3 ECビジネスに不可欠なフルフィルメント戦略
Vol.4 既存商流のデジタル化はなにをもたらすか?
Vol.5 女性を支える商品は、社会と暮らしをどう変えるか?
Vol.6 DXと共に変化する、新生活アイテムの消費行動とは?
Vol.7 DXはエシカル消費をどのように後押しするか?
Vol.8 AWSクラウドがもたらした、農業を支えるDXの進化
Vol.9 AWSが加速させる、社会に貢献する事業のDX
Vol.10 スタートアップの革新はいかにして生まれるか?
Vol.11 AWSによるDXは、第一次産業をどう進化させるか?
Vol.12 事業承継のために老舗が挑んだ改革と守った精神
Vol.13 豊かな人生に貢献する商品を生み出した開拓者たち
Vol.14 業務効率化で生まれた時間をどう活用するか?
Vol.15 ブランドの保護・活用による中小企業の成長戦略
Vol.16 企業の情報資産を守り、ビジネスを止めないために
Vol.17 日本の健康を食で支えるために開拓したECという販路
Vol.18 社会課題にイノベーションを起こすITベンチャーの技術力
Vol.19 エッセンシャルワーカーにDXはどんな価値をもたらすか?
Vol.20 和の名産を手がける老舗が踏み出したDXの新たな一歩
Vol.21 デジタル面にとどまらない、Amazonの中小企業支援とは?
Vol.22 行動や価値観の変化を捉える、中小企業の商品開発の今
Vol.23 メイド・イン・ジャパンの品質を世界中に届けるために
Vol.24 地域活性化を後押しする、特産品の魅力とDX
Vol.25 中小企業が取り組むSDGsとDXの相乗効果
Vol.26 健康意識の高まりを捉えた、中小企業のDX戦略