社会全体がDX(デジタルトランスフォーメーション)に舵を切る中で、Amazonは日本の企業の約9割を占める中小企業(小規模事業者含む)を支援し、さまざまなサービスやプログラムを通して中小企業のDXを後押ししています。デジタルがもたらす中小企業の変革とは? そして、変革を加速させるAmazonのサポートとは? 連載企画の第15回は、Amazonでの販売を通じてブランドを成長させる中小企業に迫ります。
※本記事は、2022年7月28日に日本経済新聞および日本経済新聞電子版に掲載された記事を加筆したものです。

今年6月、内閣府が発表した「知的財産推進計画2022」では、知的財産・無形資産をフル活用できる経済社会への変革が掲げられるなど、知的財産・無形資産への注目が高まっています。また、商標などの知的財産は企業の価値や競争力を大きく左右するものであり、EC(電子商取引)においてもその重要性は増しています。

今回は、ブランドの知的財産保護をサポートするAmazonのツールとサービスを利用し、自社ブランドを成長させている中小企業を紹介します。

エクササイズアイテムをインテリアにする新発想

インテリアに調和するエクササイズアイテムを提供する、gymterior(ジムテリア)は、多くのメディアで紹介され、注目を集めているブランドです。ソファやオットマンとしても使えるトランポリン、シェイプキューブは、売上累計15万個を超えるヒットを記録しました。

「せっかくエクササイズアイテムを買っても、使わなくなると部屋の片隅に放置されてしまう。それってどうなんだろうという疑問から生まれたのがこのブランドです」と語るのは、gymteriorを展開する株式会社アメイズプラスの代表取締役、山田忠和さんです。

ソファスペースになじんでいるgymteriorのクッションと笑顔を見せるの山田さんの写真
株式会社アメイズプラス代表取締役・山田忠和さん

山田さん「だったら、インテリアとして暮らしになじむエクササイズアイテムを作ろうと考え、発案から1年越しで完成させたのがシェイプキューブです。普段はソファやミニテーブルとして使えるので、運動時に準備も片付けもいりません。跳躍時の衝撃を吸収する素材や安全性にも徹底的にこだわりました。今までにないコンセプトと、デザインや機能性といった商品力。その両輪がかみ合った商品だと自負しています」

2020年に発売し、コロナ禍によって増加した自宅エクササイズの需要を背景に、売上は順調に推移していきます。

山田さん「同年にAmazonでの販売も開始し、メディアで紹介されるたびに売上が伸びました。商品の検索のしやすさ、配送の迅速さ、高品質なカスタマーサービスといった多くの利点があるので、Amazonで購入するお客様が多いのだと思います。また、Amazon内の当社のストアページでは商品写真のほかに動画も載せることができるので、ブランドの魅力をしっかりと伝えられるのもうれしいですね」

Amazonの特選タイムセールへの参加も大きなターニングポイントになったと言います。

山田さん「特選タイムセールには毎月参加しており、セールに向けて商品詳細ページの改善や広告運用を実施するPDCAサイクルが生まれたことで、安定した売上を得ることができています。また、Amazonの担当者が広告運用に関するアドバイスをしてくれるので、無駄なく効果的な露出を図ることができています」

四角い箱型で取っ手がついたシェイプキューブの写真
インテリアになじむデザイン性が特長のトランポリン「シェイプキューブ」
円盤型でサイドに取っ手があるバランスディスクボードの写真
座りながら姿勢を整えられるバランスクッション「バランスディスクボード」
ソファの上の普通のクッションに見えるリングエクサクッションの写真
クッション内にエクササイズ用のリングが内蔵された「リングエクサクッション」

Amazonでブランドと知的財産権(IP)を守る

Amazonでの販売にあたっては、gymteriorをAmazonブランド登録に登録しました。商標権を侵害する悪質な事業者からブランドを保護し、正確な情報と商品をお客様にお届けするためです。

山田さん「当社が登録したブランド情報などを活用したAmazon独自の自動保護機能により、権利侵害の可能性がある商品が検出されます。また、専用の申告ツールを使うことで、権利侵害の疑いがある出品情報やコンテンツをより簡単に当社からAmazonに報告できるようになりました。これらにより、お客様は正しい商品の情報を確認したうえでお買いものを楽しんでいただけます」

使い方の動画やCM動画をのせているストアのページ写真
動画を活用したgymteriorのストアトップページ
商品を手に話し合いをする山田さん達の写真
機能性やデザインはもちろん、触ったときの質感や素材も重視している
楽しそうに話す山田さんの写真
運営する複数のブランドを通して、豊かで健康的な毎日を提供したいと語る山田さん

山田さんには、単にブランドを保護するだけでなく、「模倣品が絶対にお客様の手に渡らないようにしたい」という強い想いもありました。

山田さん「購入した商品が模倣品の場合、安全性に対する心配もありますし、お客様が落胆されるかと思うと本当に心が痛みました。また、当社の売上にも悪影響が及び、ブランドの成長を妨げられる危機感も大きかったですね。そんなとき、先手を打って模倣品の被害を防ぐことができるAmazon Transparency(トランス・ペアレンシー)というプログラムを知りました」

Transparencyは、ユニットごとに商品のシリアル化を行い、模倣品の出品、販売、出荷を防ぐプログラムです。あらかじめ商品を登録し、付与された固有のコードを商品に貼付し出荷することで、正規品のみがお客様に配送されます。

山田さん「お客様に届くすべての商品が真正であるという安心感を得ることができました。知的財産権を持つだけでなく、Amazonが提供するブランド保護のツールやサービスを活用し、模倣品からブランドとお客様を守り、ブランドをさらに成長させていきたいと思っています」

優れた商品開発とブランドの成長は、確固たるビジョンに支えられています。

山田さん「当社の使命は、モノがあふれている今の時代に唯一無二の『欲しい!をつくる』こと。そのために、一貫して商品力にこだわってきました。多くのお客様に愛されるブランドを作るために、これからも驚きや感動のある商品を生み出していきたいですね」

商品力を追求したマッサージガンがヒット

健康器具・美容機器において、累計販売台数100万台を突破するヒット商品を生み出すMYTREX(マイトレックス)もまた、大きな注目を集めるブランドです。中でも、パワフルな振動で全身をケアできるマッサージガンのMYTREX REBIVE(リバイブ)シリーズは、確かな品質が多くの支持を集めています。

MYTREXを生み出した株式会社創通メディカルの代表取締役、薛明鶴(せつ めいかく)さんは、ヒット商品誕生の経緯をこう語ります。

テーブルに並んだ商品たちの横で笑顔の薛さんの写真
株式会社創通メディカル代表取締役・薛明鶴さん

薛さん「もともとは医療機器に用いる消耗品の販売を手がけていましたが、2018年にボディケアブランドとしてMYTREXを立ち上げました。理由はシンプルで、自分が慢性的な肩こりに悩まされていて、疲労を緩和できる商品が欲しかったから。当社の商品開発の基準は、自分が欲しいもの、自分が良いと思ったもの、そして人の役に立つもの。すごくシンプルなんです」

商品開発の基準は極めてシンプルですが、開発のプロセスは緻密で多岐にわたります。

薛さん「社内に商品を設計するエンジニアがいるので、機能やデザインなどについて彼らと議論を重ねながら、一切妥協しないモノづくりを行っています。MYTREX REBIVEシリーズでは、整体師のマッサージ技術をいかに再現するかに心血を注ぎました。また、保健学博士の方々とネットワークを築いて意見交換したり、医療機器認証を取得したり、さまざまなアプローチから品質向上を追求しています」

発売と同時にAmazonでの販売もスタートし、好調な売上を記録しました。

薛さん「スポンサープロダクト広告などを利用してブランドの認知度を高め、Amazonのストアトップページを作ることでブランドイメージを浸透させていきました。Amazonが商品の保管、注文処理、梱包、配送、さらには注文や返品に関するカスタマーサービスを代行してくれるフルフィルメント by Amazon(FBA)も利用しているので、業務が効率化され、ブランドを成長させることに集中できています」

Amazonの商品詳細ページの見やすさも魅力的だと薛さんは言います。

薛さん「欲しい商品にすぐにたどり着けるサイトの作りは大きな特長だと思います。商品を購入するまでの手間も少ないですし、配送も迅速なので、圧倒的にリードタイムが短いという利点も大きいですね」

3つのMYTREX REBIVEシリーズの写真
持ち運びにも便利なサイズ展開をしているMYTREX REBIVEシリーズ
MYTREX REBIVEの先端を腕に押し当てている写真
振動で筋肉のコリをほぐし、肩こりや血行促進などの効果が期待される
さまざまな商品が並ぶ写真
シャワーヘッド(左)や低周波治療器(右上)、振動アイマッサージャー(右下)も販売

安心感をもたらしてくれるAmazonのブランド保護

ブランドを成長させ、お客様の信頼を獲得するには、「お客様目線に立って正規品のみをお届けすることが重要」だと薛さんは言います。

薛さん「当社としても模倣品が出回ることは許容できませんし、誤って模倣品を購入されたお客様への被害を考えると心が痛みます。お客様のために、どうすれば模倣品を防げるかを常に考えています」

MYTREXでも、Amazonが提供するAmazonブランド登録とTransparencyを利用し、ブランド保護に取り組んでいます。

薛さん「Amazonブランド登録を利用すれば権利侵害を防ぐことができるので、被害を最小限に抑えられていますが、それだけではありません。事前に模倣品の被害を防ぐことのできるTransparencyに一部の商品を登録しています。これによって、各商品に固有のコードを貼り付け、正しいコードが付与されているユニットを持つ販売事業者のみがAmazonで販売できます。Transparencyへの登録以降、ブランドがさらに守られているという心理的な安心感を得られたことは大きいですね。今後はほかの商品も登録していく予定です」

商品写真も統一されたデザインで掲載されているストアトップページの写真
ブランドの世界観を伝えるAmazonのストアトップページ
商品を手に女性スタッフ達と話し合う薛さん
商品開発には女性スタッフの意見も採り入れている
目を輝かせて語る薛さんの写真
人の役に立つ、愛される商品を作ることが使命だと語る薛さん

商品ラインアップの拡充など、薛さんはブランドのさらなる飛躍を期しています。

薛さん「現在の商品に満足することなく、常により良いものを目指して改良を重ねています。商品ラインアップを増やし、ブランドの認知度も高めて、いずれは海外でも通用するブランドになることが大きな目標。きっと実現してみせますよ」

お客様に支持される確かな商品力を武器に、ブランドを成長させてきたアメイズプラスと創通メディカル。Amazonのストアトップページでブランドの魅力を伝えると共に、ブランド保護のツールやサービスを利用する両社の取り組みは、EC販売においてブランドを成長させることの大切さを教えてくれます。ブランド保護は、今後多くの中小企業が飛躍するためのポイントであり、ECにおいてもますます重要になっていくでしょう。

中小企業を進化させるAmazonのDXサポートシリーズ
Vol.1 商品のリピーターを生み出す、DXにおける新たな方程式とは?
Vol.2 ECビジネスを加速させるギフト戦略の最前線
Vol.3 ECビジネスに不可欠なフルフィルメント戦略
Vol.4 既存商流のデジタル化はなにをもたらすか?
Vol.5 女性を支える商品は、社会と暮らしをどう変えるか?
Vol.6 DXと共に変化する、新生活アイテムの消費行動とは?
Vol.7 DXはエシカル消費をどのように後押しするか?
Vol.8 AWSクラウドがもたらした、農業を支えるDXの進化
Vol.9 AWSが加速させる、社会に貢献する事業のDX
Vol.10 スタートアップの革新はいかにして生まれるか?
Vol.11 AWSによるDXは、第一次産業をどう進化させるか?
Vol.12 事業承継のために老舗が挑んだ改革と守った精神
Vol.13 豊かな人生に貢献する商品を生み出した開拓者たち
Vol.14 業務効率化で生まれた時間をどう活用するか?
Vol.15 ブランドの保護・活用による中小企業の成長戦略
Vol.16 企業の情報資産を守り、ビジネスを止めないために
Vol.17 日本の健康を食で支えるために開拓したECという販路
Vol.18 社会課題にイノベーションを起こすITベンチャーの技術力
Vol.19 エッセンシャルワーカーにDXはどんな価値をもたらすか?
Vol.20 和の名産を手がける老舗が踏み出したDXの新たな一歩
Vol.21 デジタル面にとどまらない、Amazonの中小企業支援とは?
Vol.22 行動や価値観の変化を捉える、中小企業の商品開発の今
Vol.23 メイド・イン・ジャパンの品質を世界中に届けるために
Vol.24 地域活性化を後押しする、特産品の魅力とDX

2021年のこのシリーズでは、コロナ禍を乗り越えた飲食店や、OEMから自社ブランド製造に舵を切った企業、老舗の食品店や伝統工芸品店、農産物販売企業まで、Amazonで販路を広げDXを推し進める中小企業をご紹介しています。

 

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