Amazonファーマシーは、薬局による服薬指導から処方薬の配送までをオンラインでご利用いただけるサービスです。2024年11月からはマイナンバーカードの健康保険証(マイナ保険証)の利用も可能になりました。しかし、Amazonファーマシーのような、オンライン服薬指導と処方薬の配送について耳にしたことはあっても、まだ実際に利用してはいないという方もいるのではないでしょうか?
そこで、Amazonファーマシーを使うことで、患者さん、薬剤師や医療機関に具体的にどのようなメリットが生まれるのか、薬剤師で医療DXについて詳しい長久堂野村病院薬剤科科長の荒川隆之先生に、お話を伺いました。
Q:「オンライン服薬指導」とは、どのようなものでしょうか?
荒川先生:「オンライン服薬指導」とはその名のとおり、薬局に行かずオンライン上で処方薬の説明を受けることです。都合の良い時間に予約を入れ、ビデオ通話で薬剤師から服薬指導を受け、薬は自宅などご指定の住所へ配送、または薬局の店舗で受け取ることもできます。2023年1月から電子処方せんを医療機関で発行してもらうことにより、オンライン服薬指導が容易に受けられるようになりました。「オンライン服薬指導」も「対面の服薬指導」と同様、薬剤師さんから直接、服薬指導を受けることに変わりはありません。
Q:「オンライン服薬指導」の1つとしてAmazonファーマシーがスタートしたことについて、どのような感想をお持ちですか?
荒川先生:日本で「オンライン診療」や「オンライン服薬指導」が始まってすでに数年経過していますが、まだ一般化には至っていません。Amazonは利用者数が多く、使い慣れているAmazonショッピングアプリからAmazonファーマシーを利用できるため、オンライン服薬指導の普及が進むことを期待しています。
Q:どのような方にAmazonファーマシーの利用をおすすめしますか?
荒川先生:薬局での待ち時間がないことや、出かけずに済むことが大きなメリットです。たとえば仕事などで多忙な患者さん、小さなお子さんをお持ちの親御さんや外出することに何らかのハードルを抱える高齢者の方に、利便性を感じていただけるでしょう。私自身もAmazonファーマシーを利用してみて、時間管理がしやすいと感じました。また、薬局では他の患者さんもいることが気になるなど、プライバシーを重視する方にも向いています。
オンライン診療を受けている患者さんや、症状が安定していて一定期間内の反復使用が可能なリフィル処方せんを出されている患者さんは、特に親和性が高いと言えるでしょう。
待ち時間が少ないこと、自宅でも服薬指導を受けることができることが、薬の適切な服用や治療の継続につながる
Q:「オンライン服薬指導」は患者さんの治療面では、どのようなメリットがあるとお考えですか?
荒川先生:対面の服薬指導の場合は、薬局で長時間待つことが多く、服薬指導を受ける頃には早く帰りたい気持ちが先立ち、話を聞くのがおろそかになってしまいがちです。その点、オンライン服薬指導は希望の時間に予約するため予定も立てやすく、自宅などプライベートな空間で話せるため、落ち着いて薬剤師の説明を聞いたり、心配なことも相談しやすくなります。
また、薬局での待ち時間の長さが、患者さんの治療継続率に影響しているケースもあります。たとえば40~50歳代の高血圧や糖尿病など慢性疾患患者さんは治療の継続率が低いのですが、その向上も期待できます。
ご高齢患者さんのご家族の中には、薬局への付き添いはできないけれど、自宅でなら服薬指導を一緒に聞ける、という方もいらっしゃいます。ご家族にも聞いていただくことで、薬の適切な服用にもつながります。
Amazonファーマシーでオンライン服薬指導を受けるには電子処方せんが必要ですが、電子処方せんのメリットとして、複数の医療機関が処方する薬を薬剤師が確認できることも挙げられます。服薬中の薬との重複処方や不適切な飲み合わせを避けられるなど、患者さんはより正確な情報をもとに調剤サービスを受けられることになります。
オンライン服薬指導は、薬剤師の心理的負担をやわらげ、勤務場所や時間の自由度を広げ、活躍できる薬剤師が増える可能性を持っている
Q:オンライン服薬指導は、薬剤師や医療機関にとってはどのようなメリットがありますか?
荒川先生:薬剤師にとってのメリットは大きく2点あります。1点目は、服薬指導に集中できる点。対面の場合は調剤業務を行った後に服薬指導を行う流れのため、薬剤師の意識の中に「患者さんをお待たせしないように」というプレッシャーがありますが、オンラインであれば調剤業務と服薬指導のプロセスを切り離して行えるため、より服薬指導に集中できます。
2点目は柔軟に働き方を選択できる点。薬局の方針にもよりますが、オンライン服薬指導は働く場所や時間の自由度が広がるため、これまで制約があって働けなかった薬剤師にとって活躍の場が広がります。
医療機関にとっては、オンライン服薬指導をはじめ、オンライン診療、電子処方せんも含めて「医療DX(デジタル・トランスフォーメーション)」が進むことにより、複数の医療機関や薬局の間で医療に関する患者情報のスムーズな共有が行えるようになり、医療の質の向上が期待できます。
また、オンライン服薬指導によって適切に薬の服用をする患者さんが増え、国民の薬に対するリテラシーが上がれば、日本の医療全体にとって大きなメリットになります。
Q:Amazonファーマシーに期待することは何ですか?
荒川先生:利用者の多いAmazonだからこそ、Amazonファーマシーが医療DXを推進する起爆剤になることを期待しています。そしてAmazonファーマシーの利用をきっかけに、患者さんには「薬剤師は薬について何でも相談できる頼れる、身近な存在だ」ということを感じていただけたらと思います。
「Amazonファーマシー」利用時の流れ
ここまでの先生のお話で「オンライン服薬指導」のメリットが分かったところで、実際にAmazonファーマシーの利用方法について詳しくご紹介しましょう。
まず、Amazonファーマシー利用時の全体の流れは、次の簡単4ステップです。
STEP 1:医療機関で診察を受け、電子処方せんを受けとる
STEP 2:Amazonショッピングアプリで薬局を選んで、電子処方せんの引き換え番号を送る
STEP 3:ビデオ通話で服薬指導を受け、会計する
STEP 4:処方薬を受け取る
Amazonファーマシーの利用方法
次に、Amazonファーマシーを利用する際の、Amazonショッピングアプリでの入力方法をご紹介します。
①Amazonファーマシーのページを開く。ページを開く方法は2つあります。
【方法1】 Amazonショッピングアプリのトップページの検索ボックスに「Amazonファーマシー」あるいは「アマゾンファーマシー」と入力。
【方法2】 Amazonショッピングアプリの下部にあるナビゲーションの1番右、ハンバーガータブ(三本線)をクリックし、「カテゴリー別にショッピング」の中から「ドラッグストア&パーソナルケア」を選択後、「ファーマシー(処方薬)」を選択。
②Amazonファーマシーのトップページからプロフィール(個人情報の入力)を登録します。
③「薬局の検索」をすると、全国47都道府県にあるAmazonファーマシーの対象薬局の中から、お届け先住所に近い薬局の一覧が表示されます。その中からオンライン服薬指導を受ける薬局を選び、日時の予約をし、電子処方せんの引換番号を入力します。
Amazonファーマシーでマイナ保険証を利用する場合の入力方法
健康保険証情報の提供方法にマイナ保険証(マイナンバーカードの健康保険証利用)を利用する場合は、お手元にマイナンバーカードをご準備の上、服薬指導の予約ページで「マイナンバーカードを利用する」に設定し、外部サイトの「マイナ在宅受付web」にて健康保険証情報に関する同意登録をしてください。
④予約日時になったら、薬剤師による服薬指導をビデオ通話で受けていただき、通話が終了すると薬の注文が確定されます。
⑤注文した薬は指定した住所で受け取ることができ、発送状況もアプリの中で確認することが可能です。配送以外に、薬局店舗での受け取りを選択することもできます。