「オーディオブック」というワードが2022年の「流行語大賞」にノミネートされるなど、幅広い層から「聴く読書」が注目を集めています。世界最大級のオーディオエンターテインメントサービスAmazonオーディブル(以下Audible)では、定額聴き放題で、プロのナレーターや俳優、声優が朗読するオーディオブックが豊富にラインナップ。世界的人気作家・村上春樹さんの数々の名作を音声化するプロジェクトも評判になっています。

「聴く読書」として話題のAudibleの制作現場は、どのように進行しているのでしょうか。今回は都内で行われた、大森南朋さんが朗読する村上春樹作『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』の収録現場に潜入。大森さんへのインタビューを交え、現場の様子をご紹介します。

この日は、まず収録前に作品のPRなどで使用する写真と動画の撮影が行われました。Audibleでは、朗読者の写真やコメント動画、インタビューなどを作品ページやAudibleのSNSで紹介している作品も多くあります。作品と合わせて見ることができるのも楽しみの1つです。

Audible(オーディブル)作品の収録現場の空気感

そしていよいよ収録がスタート。この日行われたのは、「リテイク」です。ノイズが入ってしまったり、アクセントの間違いがあった箇所などについて再収録していくもので、12月28日から配信される『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド(上)』の最後の仕上げともいえる作業になります。

録音ブースに大森さんが入り、監督、制作スタッフ、ミキサー担当の3名とコミュニケーションを取りながら収録が進行。収録済みのものと合わせて編集することになるため、読む速さや声のトーンなどをすでに収録済みのものと合わせなければならない、繊細な作業となります。スピーディーながらも、その都度、仕上がりの確認をしながら慎重に進めていく大森さんとスタッフ陣。これまでこのメンバーで何度も集まって収録を繰り返してきたとあって、チームの皆さんの息はぴったりで、終始和やかな雰囲気です。大森さんが「普段やっているお芝居と違うチャンネルを使うので、自分の中でもモードを変えられて気分転換にもなります」とと語る姿からも、現場に流れる心地良い空気感が伝わってきました。

audible_オーディブル_スタジオで朗読を収録する様子の大森南朋さん
ブースに入るのは大森さん1人で、ガラス越しにスタッフとやり取りをする。監督の席からの風景

またイントネーションに確信が持てないような言葉が出てくると、その都度その場で確認。「している」というセリフを「してる」と読んでいる箇所や、言葉の流れでイントネーションに若干のねじれが入るような箇所にもしっかりチェックが入るなど、非常に細かいところにまでこだわりながら、Audibleの作品が制作されていることがわかりました。

大森南朋さんの村上春樹作品との出会い

村上春樹作品との関わりについて、10代の頃に手をつけながらも「途中で読むのをやめてしまった」とあまり正面から向き合ってくることができなかったという大森さん。収録がスタートした当初は、その日に朗読する箇所を事前に読んでから現場に臨んでいたそうですが、「ここ(ブース内)で『この物語はどうなっていくんだろう』と思いながら読んでいくと、とても楽しい」と気づき、途中からは事前に読み込むことはしないようになったそうです。物語に入り込んでいく、ご自身のワクワク感も朗読にのせている点が、大森さんの朗読の特徴と言えるかもしれません。

audible_オーディブルのスタジオで原稿を確認しながら朗読をする大森南朋さんの様子

朗読していくペースは、担当される方によってさまざまだそうですが、大森さんは大体10〜20ページほどを一気に読み、休憩を挟みながら再開していくスタイルとのこと。村上春樹さんの小説は独特で複雑な言葉も多いので、それを一挙に朗読される集中力はすさまじいものがあります。長いストーリーの上下巻をじっくりと朗読していくのは骨が折れる作業にも感じられますが、大森さんは「謎が解明されてきたりと、本がどんどん面白くなっていくので。大変ながらも楽しんでやらせていただいています」と笑顔。

「こういった機会がなければ、きちんと村上春樹さんの作品と向き合えなかったかもしれないなと思うんです。そういった意味でも、このお仕事には感謝です。本当に出会えてよかったです」と改めてその魅力を噛み締めている様子。「途中で読むのをやめてしまった10代の頃の自分に『俺にも読めたぞ』と教えてあげたい。『50歳を過ぎてから始める村上春樹』。これも面白いものです」と楽しそうに話す大森さん。Audibleの楽しみ方については、「皆さん、Audibleをお風呂に入る前や寝る前に聴いたりするのかな。流し聴きも、1つの楽しみ方かもしれませんね」とおすすめしていました。

スースを着て正面を向いた大森南朋(おおもり・なお)さん

大森南朋さんと『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』とのマッチング

収録現場でも、大森さんの声色やトーンが本作の世界観とマッチしていることがたっぷりと感じられましたが、制作担当者は、「書籍(物語)の世界観と声のマッチング、世界観としてどう演出できるか。聴き手にとって、物語の世界観を『触発』をしていくような方に朗読をお願いするようにしています」とキャスティングでのこだわりについて説明。

大森さんの起用理由については、「作品を聴いていただくお客様が想像力を使う余地を残すという点は、すべての作品に共通して大事にしています。俳優として幅広い役柄で活躍される大森さんは、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』の物語の世界観に対する想像力を膨らませることができる方ということで、お願いしました」と語りました。

また、制作について「作品の種類にもよりますが、数カ月から、オリジナルのものに関しては構想から年単位をかけて制作することもあります。通常のオーディオブックですと、完成尺のおよそ3倍の時間は収録にかかり、演出や修正箇所の取り直しも含め、1作品ずつ丁寧に制作しております」と聴き手が楽しめるよう、試行錯誤を繰り返しながら作品づくりにあたっていると言います。

続々と新たなコンテンツが登場しているAudible。そんな中でも村上春樹さんの作品群は、年末年始のお休みにじっくり時間をかけて味わうのにぴったりです。ぜひ定額聴き放題のAudibleで、さまざまな朗読者とともに豊かな年末年始を過ごしてみてはいかがでしょうか。

Audibleで聴ける村上春樹作品

audible_オーディブル_大森南朋さん

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辺境・近境

配信日:12月15日
著者: 村上春樹
ナレーター: 永山瑛太
URL: https://www.audible.co.jp/pd/B0BPCM6Z24

Audible村上春樹作品 辺境・近境

久しぶりにリュックを肩にかけた。「うん、これだよ、この感じなんだ」めざすはモンゴル草原、北米横断、砂埃舞うメキシコの町……。NY郊外の超豪華コッテージに圧倒され、無人の島・からす島では虫の大群の大襲撃! 旅の最後は震災に見舞われた故郷・神戸。ご存じ、写真のエイゾー君と、讃岐のディープなうどん紀行には、安西水丸画伯も飛び入り、ムラカミの旅は続きます。


騎士団長殺し ―第1部 顕れるイデア編(上)―

配信日:12月28日 
著者: 村上春樹
ナレーター: 高橋一生
URL: https://www.audible.co.jp/pd/B09QW1XVLP

Audible_村上春樹作『騎士団長殺し 』

作家デビュー40周年 村上ワールドの新たな結晶!

物語の魔術師、村上春樹のすべてがここに――

一枚の絵が、秘密の扉を開ける……妻と別離し、傷心のまま、海を望む小暗い森の山荘に暮らす孤独な36歳の画家。ある日、緑濃い谷の向こうから謎めいた銀髪の隣人が現れ、主人公に奇妙な事が起き始める。雑木林の古い石室、不思議な鈴、屋根裏に棲むみみずく、そして「騎士団長」――ユーモアとメタファーに満ちた最高の長編小説!


世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド(上)

配信日:12月28日 
著者: 村上春樹
ナレーター: 大森南朋
URL: https://www.audible.co.jp/pd/B0BPK9RGJ7

Audible村上春樹作品

高い壁に囲まれ、外界との接触がまるでない街で、そこに住む一角獣たちの頭骨から夢を読んで暮らす〈僕〉の物語、〔世界の終り〕。老科学者により意識の核に或る思考回路を組み込まれた〈私〉が、その回路に隠された秘密を巡って活躍する〔ハードボイルド・ワンダーランド〕。静寂な幻想世界と波瀾万丈の冒険活劇の二つの物語が同時進行して織りなす、村上春樹の不思議の国。


海辺のカフカ(上)

著者: 村上春樹
ナレーター: 木村 佳乃
URL:https://www.audible.co.jp/pd/B09QW7RCJ5

Audible村上春樹作品

「君はこれから世界でいちばんタフな15歳の少年になる」――15歳の誕生日がやってきたとき、僕は家を出て遠くの知らない街に行き、小さな図書館の片隅で暮らすようになった。家を出るときに父の書斎から持ちだしたのは、現金だけじゃない。古いライター、折り畳み式のナイフ、ポケット・ライト、濃いスカイブルーのレヴォのサングラス。小さいころの姉と僕が二人並んでうつった写真……。


ねじまき鳥クロニクル ―第1部 泥棒かささぎ編―

著者: 村上 春樹
ナレーター: 藤木 直人
URL: https://www.audible.co.jp/nejimakidori

Audible村上春樹作品

歴史や暴力もテーマとし、世界中で高い評価を受けた壮大な長編小説。

村上春樹の九〇年代の代表作!

ねじまき鳥に導かれた謎の迷宮の旅へ。消えた猫、水の無い井戸、出口の無い路地。世田谷の住宅地から満蒙国境まで圧倒的迫力で描く探索の年代記。
(新潮社「村上春樹特設サイト」より)

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