3月8日の国際女性デーは、女性の社会的、経済的、文化的、政治的な功績を祝い、男女共同参画を加速させる行動を促す日です。Amazonでは、2024年のテーマ「Inspire Inclusion(インスパイア・インクルージョン)」にちなみ、社員有志によるアフィニティグループWomen at Amazon主催によるパネルディスカッションを社内イベントとして開催しました。
当日はインクルーシブな環境や、自身の選択を通して、いかにキャリアディベロップメントを行うか、またどうすればインクルーシブな環境をつくることができるかについて議論しました。実際に女性社員たちが感じた働く環境での違和感や課題、それをどのように乗り越えたかなど、それぞれの立場から発言し、対話を深めました。
パネリストは、デジタル&デバイス事業法務部リーガルディレクターの中野咲弥さん、エンターテインメントメディア事業本部 事業本部長の川本洋子さん、デジタル音楽事業本部シニアプロダクトマネージャーの大竹麻理耶さんの3人です。司会進行は、アマゾンジャパン社長のジャスパー・チャンさんが務めました。
人生のオーナーシップを握るのは自分自身
パネルディスカッションのスタートは、まずチャンさんが、今年の国際女性デーのテーマ「Inspire Inclusion(インスパイア・インクルージョン)」に合わせて、Amazonが誰にとっても働きやすく、能力を発揮できる職場を重視し、地球上で最高の雇用主となり、地球上で最も安全な職場を提供することを目指している理由を話しました。
チャンさん:Amazonでは、インクルーシブ(包括的)な職場をつくることは非常に重要だと考えています。本来誰もが、互いを認め合う包括的な環境を求めているはずです。その環境を整えることが私の役割の1つだと考えていますし、また皆さん自身がその環境を求め、実践することが、インクルーシブな職場環境の実現につながると思います。1人1人がやりたいことをごく自然に発言し、なりたい自分に向かって前向きにキャリアを構築していくことで、結果的に多様性のあるチームをつくることができます。つまり、インクルーシブな職場環境をつくることが、ダイバーシティ(多様性)、エクイティ(公平性)、インクルージョン(包括性)をより高めていくことにつながるのです。今日は、どんな時にインクルーシブな環境だと感じるのか、そして、どのようなところがまだ十分ではないのか、ということを皆さんと探求していきたいと思います。
最初にチャンさんが大竹さんに質問したのは、さまざまな選択肢の中からどのようにキャリアアップしてきたか、という振り返りです。大竹さんは新卒入社。どのようにキャリアを積み上げ、曲がり角を感じたときにどう判断してきたのでしょうか。
大竹さん:私の初めての業務は、フルフィルメント by Amazonのプロダクトマネージャーアシスタントでした。新卒入社のため自分で選んだ仕事ではありませんでしたが、働き始めてすぐに自分の性にとても合っていると感じました。そして、プロダクトマネージャーとしての成長が、それ以降のキャリア目標になりました。参考になったのは、国内外のAmazon社員に限らず、社外の方を含め、私よりレベルの高いプロダクトマネージャーの仕事をする姿です。その方々が持っていて、自分が持っていないものに気づくことができるからです。現在のポジションでそのギャップを埋めるための業務が見当たらないときは、上司に相談して新たなプロジェクトを担当させてもらったり、インターナルトランスファー制度*を利用して、新たな部署への異動も経験しました。
*募集しているポジションに自分から異動希望を申請できるAmazonの制度
大竹さんがこの春に部署異動をしたのも、スキルアップのためでした。チャンさんが大竹さんのオーナーシップの強さを称えると、大竹さんは次のように続けました。
大竹さん:私はたまたま入社時から自分に合う職種でしたが、同期のなかにはそうではなかった人もいたと思います。でも現在、多くの同期が充実した仕事や家庭生活を送っており、その人たちに共通するのは、「人生のオーナーシップは自分にある」と理解して動いていることだと感じます。オーナーシップは、Amazonのリーダーシッププリンシプルの最初の項目ですが、人生において主導権を自分が握るということはとても重要だと実感しています。
仕事の充実感を高めるマネージャーへのキャリアアップ
女性社員のなかには、十分な実力を持っていても、部下を持つマネージャーになることに踏み切れない人もいます。チャンさんは、マネージャーとして多くの部下を率いている中野さんと川本さんに、どのようにキャリアデザインをしてきたのかを尋ねました。
中野さん:私はコツコツと自分の仕事に集中することが好きだったので、マネージャーになりたいとはまったく思っていませんでした。でも、事業が拡大するにつれて、チームで仕事をしていく必要に迫られて、マネージャーになりました。最初は消極的な理由でしたが、驚くほど自分がマネージャーに向いていることに気づきました。もともと、私が弁護士になったのは、人の役に立ちたいという気持ちからでした。マネージャーはメンバーの役に立つ仕事なんですね。私がキャリアアップすることは、自分のためだけではなく、将来、女性社員が高いポジションに就く道を拓くことにもなります。私が実践し、先例をつくることで彼女たちをサポートしたり、背中を押したりすることができます。それに気づいたときに、より高いポジションのマネージャー職に就く決心がつきました。
川本さん:私も大竹さんと同じく、自分に合っていたベンダーマネージメントという仕事を追求できたことが、まずは幸せだったと思っています。ただ、Amazonに入社したとき、自分がマネージャーになる将来は、想像もしていませんでした。そんな私の視座を高めてくれたのが、当時の私の直属のマネージャーでした。仕事の幅を広げるチャンスを得たり、自分が統括する部門のリーダーとして、その事業の方向性やビジョンを構築していくような経験をしていくと、どんどん仕事が楽しくなっていくんです。プレッシャーを感じて不安になることもありましたが、それもやはりマネージャーが的確にサポートとアドバイスをくれました。そうやって周囲に助けられながら、ステップアップすることができたと思っています。
女性のキャリアアップを阻む障壁はどこにあるか
次にチャンさんは、リーダーシップチーム(幹部)に多様性があることで、どんな影響が生まれているかを中野さんに尋ねました。
中野さん:日本の社会ではいまだに女性は、ジェンダーバイアス(性差から生まれる偏見)から生じるさまざまな壁にぶつかることが多いと思います。また、リーダーシップチームが男性ばかりだと、女性はリーダーになれないのかと躊躇してしまうこともあると思います。そんなとき、女性のリーダーがロールモデルとして身近にいることは、心強い味方になります。それだけでなく、女性リーダーは身を持って障壁を体験し、乗り越えてきています。女性社員に共感を持って接したり、アドバイスしたりできることは1つの強みだと思います。ですから、もっと女性リーダーが増えてほしいと思います。一番の理想は、ジェンダーによるリーダー論が語られなくなる社会になることだと思います。
チャンさん:リーダーシップチームに女性が加わることで、ほかのリーダーシップチームのメンバーにも女性のニーズが理解しやすくなったり、自分の仕事の進め方についても見直しをする機会が与えられると思います。そうした実感はありませんか?
中野さん:あると思います。Amazonにはさまざまなお客様がいらっしゃいます。お客様の声をビジネスに反映するとき、ジェンダーに偏ることのないリーダーがいることは、強みになると思います。異なる視点を得ることは、新しい考えを生み出す原動力になると思っています。
中野さんの指摘を受けて、チャンさんは「壁」の問題について語りました。
チャンさん:私が担う責任のなかでも、女性の前に立ちはだかる壁を壊すことは非常に大事なことだと考えています。加えて、その壁を作ったのは誰かということを認識することも大切ではないでしょうか。自分のチームのどこに壁を感じるか。また、自分が無意識に作っている壁はないか、ということを多くの人に考えていただきたいと思っています。そこで皆さんが実際に感じた壁、今もある壁の存在について教えていただけませんか。
川本さん:私はAmazonで働くなかでは、ジェンダーの壁を感じることはあまりありませんが、例えば、取引先とのあいさつの場などでは、男性の部下の方が私より役職が高いと勘違いされることはよくあります。また、特に女性が少ない業界との仕事では、取引先の信頼を得るまでに時間がかかることもありました。徹底的にお客様のことを考えて提案し、実績を積み重ねることで信頼を得ていきました。信頼を得て影響力を持つようになると、仕事が楽しくなっていきます。そういった経験が私の力になってくれました。最初は多少の障壁はあるかもしれません。でも、それを乗り越え、仕事が楽しくなる経験を多くの人にしてもらいたいと思います。
キャリアを積み上げるなかで、1年間の出産・育児休暇を取得した中野さんは、こう話します。
中野さん:育休を終え、職場に戻ったとき、私と同じジョブレベル(職位)の方が私の上司になりました。仕事のしやすさを考えたグループリーダーの配慮だったと思うのですが、なんだか降格されたような気持ちになり、少し落ち込みました。でも、初めての育児と仕事の両立にも不安はあったので、まずは今の環境でベストを尽くそう、とポジティブ思考に切り替えました。幸いその上司がとてもサポーティブな方だったので、私は育児と両立しながら、仕事のクオリティを下げることもなく、頑張ることができました。そして、数年後、上司の後任を任せられることになり、昇進することができました。
中野さんはキャリアについて考えるとき、1つの言葉を励みにしてきたそうです。
中野さん:私が大好きな名言に『キャリアは梯子を登るのではなく、ジャングルジムを登るようなものだ』という言葉があります。キャリアは真っ直ぐ上に昇るだけでなく、立ち止まったり、横に移動したりしながら形成できるものなのだと、私も経験を通して実感しました。
チャンさん:そういうシチュエーションのときに改善できるアイデアはありますか?
中野さん:与えられた環境でベストを尽くしてもうまくいかない場合は、声を上げることも必要だと思います。
チャンさん:マネージャーには言いづらいかもしれないけれど、自分だけで考えず、同僚やメンターなどに相談するなど、自分の気持ちを伝えたうえで改善策を探っていくことは重要ですね。
大竹さん:私は外的要因よりも、自分の内面的な理由で仕事がうまく進まないときがありました。自己嫌悪から内向的になり、悪循環に陥ることもあります。そのような時、私の場合は信頼できる同僚や上司に打ち明けることが、一番速効性がある解決法でした。「こういうことがあった」「ここがうまくいかなかった」「今、調子が悪くて」と、一言話すだけで、気持ちがすごく楽になりますし、良いアドバイスがもらえることもあります。今回のテーマにも通じますが、インクルーションをインスパイアするには、職場の環境が整うのを待つだけでなく、自分からどうインクルーシブな環境を得に行くか、というマインドセットも必要だと思います。それができるようになるには、日ごろから周囲をよく観察し、自分にも相手にも居心地のよいコミュニケーションを意識することが必要だと思います。
実績のアピールは工夫と周囲の協力で自信をつける
チャンさんは、多くの女性が苦手とする、実績をどうアピールするかのポイントも尋ねました。
大竹さん:キャリア形成のために必須のスキルだと理解はしているのですが、私も口頭で伝えるのは苦手だと感じていました。そこで、成果が出たら、すぐにメモを残すようにしました。それも、できるだけ数値データなど、客観的に成果がわかる形にしています。そうすると、自分でも客観的に自分の成果を見直すことができますし、上司との面談時にも正確に貢献度が伝わるようになったと感じます。声が大きくアピールするのがうまい人の真似ではなく、自分なりにできる方法を見つけることも大切かなと思います。
川本さん:私は自分がアピールすることで、チームをスケールアップするフィードバックが得られるのではないか、さらに大きな成功に導くことができるかもしれない、という視点を持つことで、躊躇しなくなった気がします。
一方、中野さんはディレクターとしての立場から、部下の成果を把握しやすい工夫をしていました。
中野さん:私はチームメンバー別にフォルダを作り、将来、プロモーション(昇進)するときに良い材料になるものがあったら、すぐに保存するようにしています。女性は仕事の成果を公に表現しない傾向がありますが、積極的にアピールしてほしいと依頼しています。Amazonではプロモーションについてもマネージャーと共に相談しながら進めていく方針です。臆せずにオーナーシップを発揮して、どんどん成果を上司に伝えてもらいたいですね。
キャリアディベロップメントを続けていく上でのアドバイス
最後にチャンさんは、キャリアを構築していくのに役立つアドバイスを3人に尋ねました。
中野さん:ベストを尽くすことは大切ですが、自分のコントロールが及ばないことには、くよくよしないことです。悩むエネルギーがあったら、自分がコントロールできることにベストを尽くす方向に向けましょう。そうすれば、結果はついてくると思います。
川本さん:何をしたいのか、正直に自分の心に耳を傾けてください。そして、どうやったら実現できるかのプランを作っていくことが、道しるべになると思います。
大竹さん:キャリアの正解は1つではありませんし、人によっても、タイミングによっても違ってきます。そこで重要になるのは、自分で選んだものを自分がドライブすることで正解にすることだと思います。Amazonにはキャリア形成を自分でドライブしやすい環境があるため、もしまだその環境を活かしていないのであれば、有効活用してほしいと思います。
Amazonでは、「ダイバーシティ(多様性)」「エクイティ(公平性)」「インクルージョン(包括性)」の頭文字をとったDEIを会社を支える重要な土台であると考えています。なぜなら、Amazonのお客様は多様で、性別、年齢、国籍、文化的な背景など、さまざまです。そうしたお客様のニーズを知り、あらゆるお客様にご満足いただけるサービスをご提供するためには、まず自分たちが多様であることが必要だと考えているからです。
また、多様性を向上させ、誰もが受け入れられるインクルーシブな環境は、性別にかかわりなくすべての人にとって働きやすい職場環境をつくり、より仕事を楽しみ、より良いアイデアを生むことにつながると信じています。
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