偏見を打ち破り、ジェンダーの公平性実現を目指す

Amazonでは、「ダイバーシティ(多様性)、エクイティ(公平性)、インクルージョン(包括性)」(DEI)を積極的に推進しています。Amazonで働く女性、ノンバイナリー社員、そしてそのアライ(支援者)のためのAmazonの有志グループWomen at Amazonは、3月の国際女性デーに合わせて、女性の管理職とのトークセッションや、男性の育休取得者による座談会などさまざまなイベントを開催しました。その最後に、日本のAmazonのリーダーであるアマゾンジャパン社長 ジャスパー・チャンさん、アマゾン ウェブサービス ジャパン社長 長崎忠雄さん、 JP オペレーション事業部 統括本部長 島谷恒平さんを招き、今年の国際女性デーのテーマ「#BreakTheBias」をテーマにしたパネルディスカッションを行いました。ジェンダー・ダイバーシティの重要性や、ジェンダー・エクイティ(「社会的に形成された性別」による公平性)に関する取り組み、職場における「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)」の解消について意見を交換しました。

Amazonにとってジェンダー・ダイバーシティが必要な理由とは

ジャスパー・チャンさん:DEI、そしてジェンダー・ダイバーシティは、なぜ大事なのか。それは、Amazonのビジョン「地球上で最もお客様を大切にする企業になること」と大きく関わっています。Amazonのお客様は多様で、性別だけでなく、年齢、国籍、文化的な背景など、さまざまです。そうしたお客様に向けて素晴らしいサービスのご提供を続けるためには、Amazonという企業自身が、その内部に同じような多様性を持つことがとても大事だと考えます。もう一つは、Amazonが次のイノベーションを起こし、新しいサービスをご提供するためのベストなアイデアは、多様性のあるチームでしか考えつくことができないからです。

チャンさんが話している写真
アマゾンジャパン社長 ジャスパー・チャンさん

島谷恒平さん: DEIは、昨年リーダーシップ・プリンシプルに加わった地球上で最高の雇用主になるという意味の「Strive to be Earth’s Best Employer」にも合致していると思います。
CEOのアンディ・ジャシ―も言っているように、わたしたちはDEIについて努力を続けていく必要があると思っています。DEIはまだ十分には社会に定着していません。企業がDEIに向き合う姿勢を示すことは、社員一人ひとりが尊重され、公平な機会を与えられるという意味においても、社員にとって、今もこれからも価値のあるものになっていくでしょう。

アンコンシャス・バイアスに気付き「#BreakTheBias」を体現した経験

島谷さん:ジェンダー・バイアスには特にアンコンシャス(無意識)な部分が大きいと感じています。そうしたバイアスを打破するためには、他者からの言葉に耳を傾けることや、身の回りのデータを基にメカニズムを作ることが有効だと思います。
「女性技術者の比率を上げたい」と考えていたとき、「でもそもそも、日本の労働市場における女性技術者の割合は極めて少ないし、これは非常困難だ」と後ろ向きに考えてしまう自分がいました。しかしグローバルチームの仲間から「島谷さん、日本には女性技術者が少ないと言うけど、Amazonに必要な女性技術者の人数と比べれば、充分な母数ではないですか」と言われ、私の考え方が間違っていたと気付いたのです。少ないのであれば、そのグループにAmazonが徹底的にリーチする戦略を作ればいいじゃないか、と。それは自分自身の視野が大きく広がる言葉であり、メンタルモデルとして大きな転換点となりました。
 そこで別の職種で、もっと女性にも応募してきてもらいたいと思ったときに、リクルーティング会社の方々に、AmazonがいかにDEIに対して取り組んでいるか、女性のキャリア形成に向き合っているかを伝えました。結果として、女性技術者の採用比率が大幅に改善しました。

島谷さんが話している写真
JP オペレーション事業部 統括本部長 島谷恒平さん

チャンさん:いろいろなところに無意識の偏見が存在していますから、問題は、どうやって無意識な状態から、意識的な状態になるかだと思います。私が経験したことを踏まえて役立つアイデアとして、二つ挙げます。
一つ目は、ミーティングが始まる前に参加者の前で誰かに「アンコンシャス・バイアスを打破する役割、『アンコンシャス・ブレイカー』を担ってください」と頼むことです。これを言うだけで、ミーティング中にアンコンシャス・バイアスへの意識が高まり、ダイバーシティを大切にしていることを全員に伝えられます。
 アンコンシャス・ブレイカーになった人は、誰かの発言や議論がヒートアップしたときに、どういうふうにDEIを念頭に皆さんの意見を引き出すか、一歩引いて俯瞰する視点を持ちます。それがDEIの推進には有効です。ぜひミーティングの際には、試してみてください。ミーティングの雰囲気が変わると思います。
 二つ目は、子育て中の社員のニーズに対するサポートは、チームメンバーみんなで戦略的に、メカニズムから考え、実行することが大事だということです。たとえば社員が育休から復帰し、時短勤務を申し出た場合。ひと昔前だと、「育児中の社員にだけ時短勤務を認めることは、公平だと言えるのか」という議論になってしまったと思います。しかし現在は、その人のニーズに対し、どういうメカニズムがあればサポートできるのか、制度の改善、必要な体制の整備、マネージャーの教育、マネージャーのゴール設定などを考え、チーム、そして企業全体でサポートする仕組みづくりが始まっています。

長崎さん:私からは「#BreakTheBias」について、身近な事例を挙げたいと思います。私には息子がいるのですが、以前から彼が泣くと、よく「男なんだから、泣くな」と言っていました。あるとき息子から「どうして男は泣いちゃいけないの?」と聞かれて、それまでまったく気付いていなかった自分の中のアンコンシャス・バイアスに、はっと気付いたんです。
逆に、自分が受けたアンコンシャス・バイアスに気付いた経験もあります。私が保育園に子どもを送って行くと、母親が子どもを送る家庭の方がまだ多いせいか、女性の保護者の方々から「偉いわね」と褒められます。私が小学校のPTAに出席すると、やっぱりそこでも女性の保護者が多く、「偉いわね」と言われるのです。父親が子育てに参加するという、私が当然のことだと思っていることが、その人たちにとってはそうではないのだと感じました。
でも実はそういうことに気づいたことの背景には、グローバルな仲間たちと話していて、父親が学校の送り迎えなど育児に参加することが当たり前なんだと気付いたという経験があります。仕事上でもそうですが、プライベートにおいても、自分と同じ環境ではない、多様性のある人たちと話す、フィードバックをもらうということが、自分の成長にもつながるし、アンコンシャス・バイアスに気づくきっかけになると思います。

長崎さんが話している写真
アマゾン ウェブサービス ジャパン社長 長崎忠雄さん

ジェンダー・バイアスを打ち破るためにこれから実行したいアクションとは

長崎さん:まず、ジェンダー・バイアスの観点で、採用やインターンシップ、キャリア形成などでのサポートを充実させたいと思います。自分の中のアンコンシャス・バイアスを疑い、門戸を広げること、リーダーがDEIを「腹落ち」して理解し、メンバーとコミュニケーションを取ることなどです。今年、私はIWDの期間に女性社員と対話する機会を定期的に設けました。彼女たちから多様な意見を聞けてすごく学びとなりましたし、会社や私がDEIについてどう考えているのかを伝える、いい機会になったと思います。
そして、女性は男性と比べて控えめであり、自己承認欲求が低い傾向にあると言われています。だとしたら、「あなたはもっとできるよ」、「だからもっと発言していこうよ」と、女性自身がもっと自分のキャリアに対して「オーナーシップ」を発揮し、勇気を出して前進できるようなサポートをしていきたいですね。

島谷さん:公平性を保つのは難しいことですが、チームでディスカッションをしながら、素地をつくり、「この場合にはこういう風に公平性を実現できるよね」とアイデアを形作っていきたいというのが、今年の私の目標です。

チャンさん:DEIは「会社がなすべきこと」ではなく、「自分自身がなすべきこと」だと考えていただけたらと思います。小さなゴール設定からで構いません。皆さん一人ひとりが参加するだけで、多様性が生まれ、アイデアが出てくるのです。次のミーティングでアンコンシャス・ブレイカーに立候補してみる、アイスブレイクの話題にDEIを出してみる、来年度の国際女性デー関連のイベントに参加してみるなど、できることからで構いません。
そうすることによって、DEIに関する一人ひとりの認識が高まり、自分の中のアンコンシャス・バイアスが明らかになり、周囲にもプラスの好循環が生まれると確信しています。自分の仕事を通して、DEIに貢献できることは何かを考え、実行していくことで、これからさまざまな可能性が生まれてくることでしょう。

メンバーが笑顔で集合写真
イベントを主催したWomen at Amazonのメンバーと
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