Amazonはさまざまな配送方法で商品をお届けしていますが、その1つにデリバリーサービスパートナープログラム(通称DSP)があります。Amazonが配送を委託するさまざまな規模の配送業者が、地域に配送業者コミュニティを築き、各自の方法で配送するプログラムです。

2023年3月、AmazonはDSPの1つとして新しいプログラムの運用開始を正式に発表しました。今回発表したプログラムでは、配送ビジネスを立ち上げたいという意欲のある起業家とAmazonが連携し、ビジネスの成功を支援します。今回はこの新しい「DSP」を利用して配送ビジネスを拡大している、起業家2人の事例を紹介します。

ドライバー業とは、駅伝でいうアンカーのような仕事

ワントラック株式会社は、目羅弘司さんが2021年9月に東京都大田区に設立した運送会社です。目羅さんを含めた社員4名と契約ドライバー13名で、東京都の墨田区と江東区エリアの配送を担当しています。

赤い作業用のベストを着た男性
ワントラック株式会社 目羅弘司さん

目羅さんはかつて、大手物流企業に20年ほど所属していました。ドライバーや管理職の仕事を経験する中で物流の「ラストワンマイル」、つまり商品をお客様にお渡しするドライバー業務の重要性を実感しました。

「商品が販売元からお客様へと送られていく中で、ラストワンマイルを担うドライバーは、駅伝でいうならアンカーのようなもの。ドライバーが最後にいい仕事をすることが、お客様の笑顔につながるのですから」

物流業界に身を置いていた目羅さんは、高齢化や通信販売業界の成長などの背景のもと、個人のお客様への配送が年々増えていることを実感していました。一方で、クルマ離れが進み、貨物輸送ができるドライバーは減り続けています。そんな現状の中でも、きちんと仕事ができるドライバーを育て、一緒に仕事をしたい。そして仲間のドライバーと一緒に、お客様に笑顔を届けたい。そんな夢を持って、目羅さんは起業を決意しました。

Amazonのアプリや教育プログラムを活用

ワントラック株式会社がフードデリバリーやスポット便(単発で発生する配送の仕事)などを手がけるようになって数か月経った頃。目羅さんはさまざまなテクノロジーを活用したAmazonの配送システムに興味を持ちます。さらなる業務拡大を考えていたこともあり、Amazonに連絡したところ新しいプログラムが始まることを知りました。

「新しいプログラムは、Amazonから配送システムなどのバックアップを受けつつ、一定量の配送を請け負うという画期的なプログラム。起業したばかりの私たちが、Amazonのシステムを利用できるのが魅力的で、早速参加を決めました。仕事ができるドライバーを増やそうと募集をしたところ、『Amazonから委託された配送業務ができるなら』と、すぐに人材が集まり、現在は軽貨物車13台で仕事をしています」

ドライバーは、各自のスマートフォンにインストールしたアプリを使って配送業務を行います。アプリには配送する商品の情報やお届け先住所などが表示され、使いやすいとドライバーに好評です。一方、管理者である目羅さんも、アプリを通じて各ドライバーの位置や配送状況をリアルタイムで把握できます。そのため、配送が滞っているドライバーがいれば、別のドライバーがサポートに向かうなどして、全体の業務を効率よく進めることができます。

「弊社のドライバー13名のうち、5名は配送未経験者です。それでも弊社のチームに加わる際に配送の基本を学ぶと、他のドライバーと同じレベルで仕事ができるようになるので、助かっています」

ワントラック株式会社はペーパーレス化にも力を入れています。一般的なドライバー業務では契約書、ルート確認、経費請求や日報など、多くの紙を消費します。この問題が気になっていた目羅さんはAmazonに解決策となるサービスを紹介してもらい、そのサービスをカスタマイズして導入することに。その結果、契約書や経費請求、日報などすべての書類を電子化できました。書類作成から提出までがスマホで完結するため、ドライバーの負担軽減にも大きく貢献しています。

赤い作業用ベストを着た男性2人、一人は作業台の上でスマートフォンを操作している

ドライバーのモチベーションが「配送品質」につながる

目羅さんが起業した理由の1つは、理想の「配送品質」を実現することです。それは、目羅さんが配送業界で20年間働く中で目指すようになったもの。配送品質には、お届け時間の厳守や配送拠点に届いた日のうちに商品を確実に配送することも含まれます。

「高い配送品質を実現するには、ドライバーが働きやすい環境と適正な報酬を管理者側が整えることが前提だと思うんです。そうすればドライバーはモチベーションを維持して、精一杯働いてくれます。その結果、配送品質が上がり、お客様が笑顔になる。ドライバーも満足し、ますますモチベーションが高くなる。この好循環を目指したいと考えて、起業に踏み切りました」

ワントラック株式会社には現在、若者から中高年、女性や外国籍の方など多様なドライバーたちが笑顔で働いています。その輪の中心で、とりわけ大きな笑顔を浮かべているのが目羅さんです。目羅さんとワントラック株式会社の仲間はこれからも、お客様の笑顔のために一丸となって配送品質の向上に取り組みます。


自社の将来に希望が広がる

伊原雄士さんは以前、雑貨関連の企業で働いていましたが、勤務先が倒産。再就職か起業かを考えたときに、配送業なら稼働した分だけ収入が増えると聞き、未経験ながらこの業界に飛び込むことに決めました。軽貨物車を手に入れて、委託ドライバーとしてキャリアをスタート。委託契約を結んだ運送会社で経験を積み、社長の協力を得て2021年4月、埼玉県春日部市に株式会社Cruz(クルーズ)を設立しました。

作業用の白いベストを着た男性が作業場に立っている
株式会社Cruz 伊原雄士さん

「独立して2年目に入った頃、Amazonから新しいプログラムの案内をいただき、すぐに開始しました。誰もが知る企業のパートナーになることは、私にとって大きなチャンスだと考えました」

当時、株式会社Cruzと業務委託契約を結んでいたドライバーは20人程度。Amazonのパートナーとなった後は契約ドライバーを拡充し、よりたくさんの車両を確保して事業を展開しています。Amazonの業務に加えて、他の企業の業務も受注し、業績は順調に伸びています。

「Amazonのパートナーになってから仕事の規模、質が変わりました。弊社がこの仕事をしていることが知られるようになり、知名度が上がったようなのです。Amazonと直接業務委託契約を結んだことで金融機関にも一定の評価をしていただいているように思います。今後、業務拡大のために融資を受けたい場合などはきっと有利になると期待しています。将来の選択肢が広がったような感じがします」

企業理念は「幸せな家族を作る」

伊原さんは毎朝7時頃に、埼玉県上尾市にあるデリバリーセンター(DS)の中にある、株式会社Cruzのオフィスに出社して、その日に担当する商品やルートを確認します。その後、到着したドライバーに仕事を割り振り、その出発を見送ります。それが伊原さんの朝のルーティーン。

「私がDSに着いた時点で、弊社が担当する商品がDSに届いていて、商品のデータなども揃っているのでドライバーは出勤してからたった15分で出発できます。Amazonの業務を始める前は、各ドライバーが自分で商品をチェックして積み込んでいました。その頃は、出発まで90分はかかっていましたから、時間が大幅に短縮できたと、みんなも喜んでいます」

自分のスケジュールを優先しながら業務の予定が組めるという点も、ドライバーに好評です。

「私としてもシフトの調整がしやすく、ドライバーの希望に応じてスケジュールを組むことができます」

伊原さん自身も、起業してからは時間に余裕を持てるようになりました。

普段着姿の男性。子どもに笑顔を向けている

「ドライバーとして働き始めたタイミングで子どもが産まれました。その頃は仕事を覚えようと無我夢中で働いていましたから、子どもが起きる前に出勤し、帰ったときにはもう寝ているという毎日。久しぶりに子どもに会うとモジモジされて困ったこともあります。起業してからは子どもと過ごす時間が作りやすくなって、仕事と家庭生活を両立できているのが、すごくうれしいんです」

そんな経験から伊原さんが定めた株式会社Cruzの企業理念は、「幸せな家族をつくる」。

「最近は、お金がないから結婚できない、子どもを持てないと悩んでいる人が多いと聞きます。でも、私は物流業界に入ってから子どもを持ち、家族を養ってきました。だから多くの人に『この業界ならやりたいことができる』と知ってもらい、入ってきた人には第一線で活躍しながら、家族を大切にしたり、夢を叶えたりして欲しいんです。実際に弊社には家族と幸せに暮らすドライバーが多く、うちで業務をするようになってから子どもが産まれたパパさんドライバーもいるんですよ」

それぞれの夢や目標に向かって配送ビジネスを立ち上げる起業家を、Amazonはパートナーとして全力で応援します。配送ビジネスに関するアセットやサービスだけでなく、新規ビジネス立ち上げに関する支援も行い、物流業界、配送業界の発展のために皆様と手を取り合って連携を進めていきます。

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