株主の皆様へ

昨年の今頃、私はAmazonの将来についての楽観的な展望と熱い思いを語りました。今日、その思いはさらに強くなっています。業績が改善し、カスタマーエクスペリエンスが向上していることを筆頭に、イノベーションが続いていること、絶好のチャンスが目の前にあることなど、その理由はいくつもあります。

2023年、Amazonの総収益は前年の5,140億ドルから12%増え、5,750億ドルになりました。セグメント別に見ると、北米の収益は前年の3,160億ドルから3,530億ドル(対前年比12%増)になりました。海外収益は1,180億ドルから1,310億ドル(対前年比11%増)に、AWS(アマゾン ウェブ サービス)の収益は800億ドルから910億ドル(対前年比13%増)に増えました。

それだけではありません。営業利益とフリーキャッシュフロー(FCF)も大きくに改善しています。2023年の営業利益は前年度の122億ドル(営業利益率2.4%)から201%伸びて、369億ドル(営業利益率6.4%)となりました。設備のファイナンスリースの直近12か月間の調整後FCFは、2022年の-128億ドルから355億ドル(483億ドル増)に改善しました。

財務指標の有意義な改善が見られることに加え、何より喜ばしいのは、すべての事業でカスタマーエクスペリエンスが向上を続けていることです。

ストア事業では、品揃え、価格、利便性に徹底的にこだわった結果、お客様から高い支持をいただいています。Amazonでは、数億点の商品を取り揃え、昨年だけで数千万点が追加されています。また複数のプレミアムブランド(Coach、Victoria’s Secret、Pit Viper、Martha Stewart、Clinique、Lancôme、Urban Decayなど)がAmazonへの出品を開始するなど、引き続きどこよりも豊富な品揃えをご提供しています。

価格に注意を払うのは常に重要ですが、特に不透明な経済状況のなか、お客様は支出に慎重になっています。そのため、2023年第4四半期に、ホリデーシーズンの幕開けとして、プライム会員限定のイベント「プライム感謝祭」を開催し、年末年始のショッピングを一足早くスタートさせることにしました。続いて、すべてのお客様を対象としたホリデーショッピングイベント「ブラックフライデー」と「サイバーマンデー」を開催しました。こちらは、これまでのAmazonのショッピングイベントのなかで最大の収益をあげる結果となりました。2023年を通して、何百万というお買い得品とクーポンのご活用により、お客様は約240億ドルを節約された計算になり、その額は前年から70%近く伸びています。

また、配送スピードも向上を続けており、社内記録を複数回、更新しています。2023年、Amazonはプライム会員の皆様に史上最速のスピードで商品を届け、70億点以上の商品(米国で40億点以上、ヨーロッパで20億点以上)が当日、または翌日中に到着しています。米国におけるこの結果は、2つのことの相乗効果によるものです。1つは「リージョナリゼーション(地域化)」のメリットであり、Amazonではお客様の近くに商品を保管するためのネットワークを再構築しました。もう1つは当日便用の施設を拡張したことであり、2023年には当日/翌日配送の商品数が前年と比べて70%近く増加しました。商品をスピーディーにお届けすることで、お客様のショッピングニーズを満たし、Amazonを選んでいただける頻度が増え、日用品事業の急成長(2023年第4四半期の成長率は前年同期比20%以上)など、さまざまな領域で成果が表れています。

また、リージョナリゼーションを進めることで輸送距離も短縮され、商品をお客様に届けるためにかかるコストである「Cost to Serve」の削減につながっています。2023年には、2018年以来初めて、全世界で商品単位当たりの「Cost to Serve」の削減を実現しました。米国だけを見ても、商品単位当たりの「Cost to Serve」は前年から45セント以上減少しています。「Cost to Serve」の削減によって、スピード向上に向けた投資が可能になるだけでなく、より低い平均販売価格でより多くの品揃えを提供することができます。より低価格でより多くの品揃えを提供できれば、購入を検討していただける機会が増えます。

2024年(そしてさらにその先)を見据えて、今後も「Cost to Serve」の削減に努めていきます。私たちは、フルフィルメントネットワークについての狭い考え方に囚われず、あらゆる点を再評価しました。結果、配送スピードを高めつつ、コストをさらに削減できると思われる分野が複数見つかりました。インバウンドフルフィルメントアーキテクチャとそれによって可能になる在庫配置は、2024年の重点分野であり、状況はさらに上向くことになると期待しています。

世界に目を向けると、先進諸国の事業は順調に軌道に乗っています。また新興地域(インド、ブラジル、オーストラリア、メキシコ、中東、アフリカなど)でも、品揃えと機能の拡充を続け、黒字化に向けて着実に前進しています(最近では、2023年第4四半期に、メキシコのストアが黒字化を達成しました)。これらの新しい地域が長期的に成長を続け、収益を生むことになると確信しています。

ストア事業と並行して、Amazon Adsも好調を維持しています。主にスポンサー広告に牽引される形で、収益は2022年の380億ドルから2023年には470億ドルに伸びました(対前年比24%増)。Amazon Adsには、新たに「スポンサーTV」が加わりました。これは、Amazon FreeveeやTwitchなど、最大30以上のストリーミングTVサービスに表示されるキャンペーンを制作するためのブランド向けのセルフサービスソリューションであり、最低予算は設定されていません。最近では、一部地域でPrime Videoの番組や映画に広告を組み込むことで、ストリーミングTV広告を拡充しました(日本での導入は未定)。Prime Videoでは、ヒットした映画やTV番組、賞を受賞したことのあるAmazon Original作品、『Thursday Night Football』のようなスポーツライブ中継など、人気の高いエンターテインメント作品を提供しており、月間2億人以上の視聴者にリーチすることが可能です。ストリーミングTV広告は急成長を続けており、出足は好調です。

2023年は不透明な経済状況下における企業の経費節減を背景に、AWSに移行することでコストを大幅に最適化する動きが見られるようになりました。AWSによるクラウド利用の効率化と、AWS Gravitonプロセッサ(AWSの汎用CPUプロセッサ。他の主要なx86プロセッサに比べて、最大で40%高い価格性能比を提供)、S3 Intelligent Tiering(AIを利用してアクセス頻度の低いオブジェクトを検出し、より安価なストレージ層にそれらを格納するストレージクラス)、およびSavings Plans(長期契約と引き換えに値下げを行うプラン)といった、より強力で価格性能の高いAWSの機能の利用が可能になったことで、コスト最適化の多くを実現しています。この移行により、短期的に収益が減少することはあったものの、お客様にとって最善の策であり、たいへん喜ばれています。長期的には、お客様とAWSの両方の明るい未来を約束するものとなるはずです。2023年末には、コスト最適化の動きは弱まり、新規の契約が加速しました。そして、大型の長期契約への乗り換えが進み、AWSへの移行が再び増加に転じました。

昨年はAWSにとっても大きな成果のあった年でした。次世代汎用CPUプロセッサ(Graviton4)を発表しました。このプロセッサは、すでにトップシェアを誇っていた前世代プロセッサ(Graviton3)よりも、演算性能が最大で30%、メモリ帯域幅が75%向上しています。また、AWS Trainium2アクセラレーターも発表しました。これによって、Trainium1アクセラレーターに比べて、生成AIアプリケーションの機械学習トレーニングが最大で4倍高速化され、メモリ容量が3倍向上します。AWSインフラストラクチャのフットプリントは拡大を続けており、現在は世界33の地域で105のアベイラビリティゾーンを提供しており、新たに6つの地域(マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、サウジアラビア、タイ、そしてドイツで2つ目のリージョンとなるベルリン)が加わる予定です。生成AIの分野では、新しい基盤モデル(FM)の構築を容易にするために、Amazon SageMakerに数十個の機能を追加しました。企業が既存のFMを活用して生成AIアプリケーションを構築できるように、新サービス(Amazon Bedrock)を発明し、提供を開始しました。また、Amazon Qにおいて高性能なコーディングアシスタントの提供を開始しました。これらの機能はたいへん好評であり、生成AIサービスの牽引力の大きさを実感しています(生成AIに向けたAmazonの取り組みと、私たちが成功を確信している理由については、本書簡の後半で詳しく述べさせていただきます)。

また、長期的に見て、お客様とAmazonにとって重要な存在になる可能性を秘めた新しい事業投資も多数、進行中です。そのうちの2つについて見てみましょう。

私たちは、Prime Videoが大規模で収益性のあるビジネスになると確信しています。このような自信の根底には、独自の魅力的なコンテンツ(『Thursday Night Football』『ロード・オブ・ザ・リング』『リーチャー ~正義のアウトロー~』『ザ・ボーイズ』『シタデル』『ロードハウス/孤独の街』など)の継続的な開発、Prime Videoをご覧になられているお客様によるこれらのコンテンツへの関与、マーケットプレイスプログラムの拡大(Prime Videoチャンネルや、お客様にレンタル/購入していただく番組や映画の幅広いセレクション)、一部の地域で始まったPrime Videoへの広告の追加があります(日本での導入は未定です)。

10月には、Project Kuiper(プロジェクトカイパー)の商業化に向けた取り組みが大きな節目を迎えることとなり、エンドツーエンドのプロトタイプ衛星2基を打ち上げ、主要なシステムとサブシステムの検証がすべて成功裏に完了しました。今回のように、最初の打ち上げで成功を収めるのは稀なことです。Kuiperは現在、ブロードバンド接続を持たない4億~5億世帯(および、遠隔地での接続性とパフォーマンスの向上を求める政府や企業)にブロードバンド接続を提供することを目的とした地球周回低軌道衛星構想であり、Amazonにとってきわめて大きな収益の機会となっています。最初の実稼働衛星を2024年に打ち上げる方向で作業を進めています。まだまだ先は長いものの、着実に前進していることに励まされます。

全体的に見て、2023年は好調な年でした。お客様のために力を尽くしてくれたすべてのチームに感謝します。これらの結果は、Amazon全社における数々の発明、協力、統制、実行、そして再考が形になったものです。とはいえ、Amazonで働く社員もこう考えているはずです。あらゆる事業において、お客様の暮らしをより豊かで便利なものにするための策はまだまだあり、投資を進めている事業はいずれも大きく上向いていくに違いないと。

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 過去3年間の年次書簡では、株主の皆様に、私たちがAmazonについてどのように考えているのか、どういった事業に取り組んでいるのか、将来どのようなチャンスが待ち受けているのか、そして何が私たちを突き動かしているのかについて知っていただけるよう努めました。当社は多様な市場セグメントで事業を展開していますが、Amazonを1つに結びつけているのは、お客様の暮らしを日々より豊かで便利なものにするという共通のミッションです。これは、私たちがサービスを提供するすべての顧客セグメント(消費者、出品者、ブランド、開発者、企業、クリエイター)に当てはまることです。お客様を大切にすることに加え、創意工夫し、何年もの先の未来を考え、必死で学び、スピーディーに配送し、世界最大のスタートアップであるかのように事業を運営してこそ、私たちは本領を発揮できるのです。

 社内外のビルダー(開発者)をどうすればエンパワーできるのかと考えることに多大なエネルギーを費やしています。発明好きというのがビルダーの特徴です。彼らはカスタマーエクスペリエンスを分析し、問題を評価し、改善することを好みます。また、カスタマーエクスペリエンスが完璧なものになるまで決して満足することはありません。これは途中での改善を妨げることなく、絶えず手を加え、反復を繰り返すための原動力となっています。彼らはゼロから何かを発明することに恐れがない一方で、高品質で、拡張性があり、コスト効率の高い他社の部品などのコンポーネントを使用することもためらいません。ビルダーにとって重要なのは、カスタマーエクスペリエンスを速やかに改善し続けるための適切なツールを手に入れることです。

そのための最善の策とされているのが、「プリミティブサービス」を構築することです。これらのサービスは、個別の基礎ビルディングブロックのようなものであり、ビルダーの好きなように組み合わせることができます。2003 AWS Visionの資料では、プリミティブについて次のように説明しています。

 「プリミティブは、ソフトウェア開発者にとっての原料部品、つまり基礎的なビルディングブロックのようなものです。これらは不可分であり(機能面で2つに分けられるのであれば、分割しなければなりません)、1つのことをとても上手くこなします。単独でソリューションとなることはなく、組み合わせて使用されます。そして、開発者が柔軟性を最大限発揮できるように構築されます。開発者の邪魔をすることがないよう、プリミティブに対し多くの制約を設けることはありません。むしろ、開発者が自由に用いて、イノベーションを起こせるように最適化するようにしています。」

 もちろん、このプリミティブの概念はソフトウェア開発以外にも応用できますが、特にテクノロジーにおいて大きな意義を持ちます。そして、これまでの20年間、Amazonがこれほどスピーディーにイノベーションを起こしてこれたことの根幹には、プリミティブの存在があります。

プリミティブのメリットは数多くありますが、その1つがスピードです。この点について、例を2つ挙げて説明したいと思います。最初に、創業間もないころ、Amazonは出版社、メーカー、流通業者からすべての商品を購入し、倉庫に保管し、自社で発送するという、自社在庫による小売ビジネスを成功させました。その後、トラフィック数の多い検索ページや商品説明ページでAmazonの商品の隣にサードパーティーの販売事業者様が商品を出品できるようにすることで、品揃えを充実させ、価格を下げることができることが徐々に分かってきました。私たちは、中核となる小売サービス(決済、検索、注文、閲覧、商品管理など)をいくつか構築していたので、それらの構成要素となるコンポーネントがない場合よりも、たやすくマーケットプレイスのさまざまなコンセプトを試すことができました。プリミティブの優れたセットでしょうか? そうでもありません。

こうして、これらの中核を成すコンポーネントは複雑にからまっていて、適切な区分けがなされていないことが分かってきました。2000年代初頭にMerchant.com事業でTarget社のような企業と協業したときに、私たちはこのことを痛感しました。事業のコンセプトは、target.comがAmazonのeコマースコンポーネントをウェブサイトを支えるバックボーンとして使用し、そのうえで、好きなようにカスタマイズするというものでした。これを可能にするには、アプリケーションプログラミングインターフェース(API)を使って、これらのコンポーネントを分離可能な機能として提供する必要がありました。最初の数年間でAmazonが急成長し、これらのサービス間に多くの依存関係を作り出していたことから、分離は予想以上に困難を極めました。

かつて運用していた「NPI」という複雑なメカニズムにより、問題がさらに浮き彫りになりました。複数の社内チームの関与が求められる新たな取り組みはいずれも、NPIによるレビューが必要で、週にどれだけの人が必要かをチームごとに報告するようになっていました。このボトルネックのせいで、できることが制限され、いら立ちが募っていきました。そして、私たちは、これらのeコマースコンポーネントを、十分な裏付けのある安定したAPIを持つ真のプリミティブサービスにリファクタリングすることで、これを解消することを思いついたのです。これでビルダーは、面倒な調整なしで、互いのサービスを利用することができます。

Target社とそして複雑なNPIに向き合い、奮闘する中で、私たちはAmazonがより迅速に動き、外部の開発者が想像したものを何でも構築できるようにする、新しいインフラストラクチャテクノロジーサービスの構築を考えていました。この一連のサービスは、後にAWSとして知られるようになりました。前に述べたような経験から、私たちは、自由に組み合わせることが可能な一連のプリミティブサービスを構築すべきだと確信していたのです。当時、テクノロジーサービスのほとんどが豊富な機能を持ち、複数の事柄を同時に解決しようとするものでしたが、結果として、何一つそれほどうまく解決できていませんでした。

AWSのプリミティブサービスは、最初からほかと違った設計になっていました。重要で、柔軟性が高く、しかし同時に焦点を絞った機能を提供するものでした。たとえば、最初の重要なプリミティブは2006年3月に発表されたAmazon Simple Storage Service(S3)でした。これは、高度な耐久性と可用性、インターネットスケール、低コストといった特徴を兼ね備えた、安全性の高いオブジェクトストレージを提供することを目指したものでした。つまり、卓越したオブジェクトストレージというわけです。S3の提供が始まったとき、開発者たちは興奮すると同時に、やや当惑した様子でした。たいへん便利なプリミティブサービスではあるものの、なぜオブジェクトストレージに限定するのだろうと疑問に思ったのです。2006年8月にAmazon Elastic Compute Cloud(EC2)を、そして2007年にAmazon SimpleDBの提供が始まった時点で、人々はようやく気づくことになります。私たちが、想像しうるあらゆるものを、これまでよりもはるかにスピーディーに、コスト効率よく、データセンターやハードウェアの先行投資に悩まされることなく構築するための一連のプリミティブなインフラストラクチャサービスを構築しているのだと。これらのビルディングブロックの全容が明らかになるにつれ(現在、ビルダーが自由に使えるビルディングブロックは240種類を超えており、これは他のプロバイダーを大きく上回る数です)、AWS上で多くの企業(Airbnb、Dropbox、Instagram、Pinterest、Stripeなど)が次々に起業し、複数の業界で変革が起き(Netflix、Disney+、Hulu、Max、Fox、Paramountによるストリーミングなど)、さらには重要な政府機関までもがAWSへと移行しました(CIAをはじめとする米国の情報機関など)。しかし、あまり知られていないものの、Amazonの消費者向けビジネスもまた、小売、広告、デバイス(AlexaやFireTVなど)、Prime VideoとAmazon Music、Amazon Go、ドローンなど多くの試みにおいて、AWSを利用して構築のスピードを上げることで、急速にイノベーションを起こしていきました。プリミティブがうまく機能すれば、ビルダーのイノベーション力は急速に高まります。

では、適切なプリミティブを構築するにどうすればいいのでしょう?

プリミティブを追求することは、成功を保証するものではありません。構築できるものは多くあり、それらをどう組み合わせるかとなるとさらに数が増すことになります。方向を見定めるために、解決しようとしている実際のお客様の問題に焦点を絞らなければなりません。

当社のロジスティクスプリミティブはその好例です。創業間もないころ、Amazonは、商品を倉庫に保管しておき、そこからピッキングして、梱包し、迅速かつ確実にお客様に発送するためのコア機能を構築しました。マーケットプレイスにサードパーティーの販売事業者様が加わるなかで、これと同じロジスティクス機能を使いたいという要望が頻繁に寄せられるようになりました。この一連のロジスティクスプリミティブを最初に構築していたおかげで、2006年にフルフィルメント by Amazon(FBA)を導入することができました。これにより、販売事業者様はAmazonのフルフィルメントネットワークを使って、商品を保管し、それらのピッキング、梱包、発送をAmazonに依頼できるのに加え、プライム会員向けのお急ぎ便の利用が可能となりました。このサービスは、出品に要する時間とコストを大幅に削減し(通常、自ら管理するよりも約70%コストが抑えられます)、今なお最も人気のあるサービスの1つに数えられます。独自のDirect-to-Consumer(DTC)ウェブサイトの運営を始める加盟店が増えるに従い、Amazonのフルフィルメント機能を引き続き利用する一方で、Amazonの決済およびIDのプリミティブを使うことで、自社ウェブサイトでの注文のコンバージョン率を高めたいという声が多く寄せられるようになりました(プライム会員はすでにこれらの決済およびIDの情報をAmazonと共有しているためです)。数年前、私たちはこのようなニーズに応えるために、Buy with Primeの提供を開始しました。プライム会員はDTCウェブサイトにおいても、Amazonでお買い物する場合と同じように、すばやく支払い処理が完了し、プライム対象商品でお急ぎ便を利用できます。これにより、注文コンバージョン率が標準と比べて約25%増加します。

ストア事業が著しい成長を遂げ、サプライチェーンが複雑になるにつれ、比類のない品揃えを、低価格で、スピーディーにお届けするために、多数の機能を開発する必要に迫られるようになりました。私たちは、他の国々から商品を米国に輸送し、通関手続きを経て、保管施設に発送するという作業に熟達していきました。フルフィルメントセンター(物流拠点)には、求められる在庫レベルを維持するのに必要なすべての在庫を保管できるだけのスペースはありません。そこで、保管のためだけに最適化された低コストの上流工程に特化した倉庫機能を持った施設(エンドユーザー、ピッキング、梱包、出荷に関する高度な機能は備わっていない)を建設することにしました。このように2種類の在庫プールを持ったことがきっかけとなり、フルフィルメントセンターの在庫が足りなくなる時期を予測し、上流倉庫から自動的に補充するためのアルゴリズムを構築しました。また、数年前より、事業規模の拡大と利用可能な選択肢の増加に伴い、Amazonの利用を望む多くの消費者と出品者に手頃な価格でサービスを提供するために、独自のラストマイル配送機能(UPSとほぼ同規模)を構築する必要が出てきました。

Amazonのお客様により良いサービスを提供し、外部出品者の電子商取引活動の複雑化に対応するために、追加のフルフィルメントプリミティブを構築することで、このようなお客様のニーズに対応しています。たとえば、商品の輸入で支援を必要とする販売事業者様向けに、当社のノウハウを活用したGlobal Mileサービスを提供しています。国境を超えて(または国内のあらゆる場所から)在庫を当社の保管施設に発送するために、ファーストパーティのAmazon Freightサービスを利用するか、もしくはAmazonのパートナーキャリアプログラムを通じてサードパーティーの運輸パートナーを利用するかを選択していただけます。より多くの在庫を、より低いコストで保管して、在庫率を高め、配送時間を短縮するために、上流工程で倉庫・配送機能を持つ、「Amazon Warehousing and Distribution」施設を販売事業者様に開放しています(必要に応じて、フルフィルメントセンターへの自動補充も行います)。配送を自ら管理したいという販売事業者様のためには、「Amazon Shipping」というサービスにより、当社のラストマイル配送ネットワークを利用して最終顧客に荷物を配送できるようにしました。また、在庫を保管し、どこからの注文であってもお客様に商品を発送するための中心拠点としてAmazonのフルフィルメントネットワークを利用したいという販売事業者様のために、マルチチャネルフルフィルメントサービスを用意しています。これらはいずれも、販売事業者様に公開されているプリミティブです。

プリミティブを組み込むことで、自由度が大きく広がります。プリミティブを取り入れ、それをベースに魅力的な機能を構築することで、それぞれのお客様とビジネスの両方に飛躍的なイノベーションのメリットがもたらされます。AWSや最近のロジスティクスサービスで行っているように、プリミティブを有料サービスとして外部の顧客に提供することもできます。また、FBA、Buy with Prime、Supply Chain by Amazon(最近リリースされたロジスティクスサービスで、当社のロジスティクスプリミティブのいくつかが統合されています)で行っているように、これらのプリミティブを外部の有料アプリケーションに組み込むことも可能です。選択肢はいくつもあります。どのようなプリミティブを構築したのか、そして人間の持つ想像力以外に、制約は何もありません。

Amazonのストア事業の新しい、即日フルフィルメント施設を紹介しましょう。これらの施設は全米の主要都市圏(現在58か所)に設置され、回転の速い商品10万SKUを収容しています(これらの即日フルフィルメント施設は、近隣のフルフィルメントセンターから運ばれる他の商品数百万SKUにも対応)。お客様の注文をピッキングしてから、出荷の準備が整うまでの時間はわずか11分です。また、これらの施設には、ネットワークにおける「Cost to Serve」を最低限に抑える効果もあります。お客様にご好評をいただいていることから、こうした施設を倍増させる計画を立てています。

しかし、この機能を中核のビルディングブロックと考えた場合、ほかにどのような利用法があるでしょうか。Amazonは、オーガニック食品(Whole Foods Marketと連携)と保存可能な食料品(消耗品、缶詰、健康・美容食品など)を扱う大規模な食料品事業を展開しており、順当に成長しています。また、生鮮食品を快適に購入できる大規模な実店舗サービス(Amazonフレッシュ)の構築に懸命に取り組んできました。即日配送施設を利用して、お客様がAmazonの注文に牛乳や卵といった日持ちのしない生鮮食品を簡単に追加し、当日に受け取れるようになるとしたらどうでしょう。毎週の食料品を分けて購入しなくて済むようになり、日持ちのしない食品の買い物が、日持ちする食品の買い物と同じように便利になるのではないでしょうか。

また、疑問を呈する声もあるものの、大きな進歩を遂げつつあり、将来的にはきわめて重要なプリミティブ機能になると思われるものに、「Prime Air」という配送ドローンサービスがあります。ドローンにより、最終的には1時間以内にお客様の元に荷物を届けることがきるようになります。最初のうちは荷物のサイズや受け取れる場所が限定されるものの、時間とともに普及していくと思われます。1時間以内の配送により、生鮮食品の注文体験がどう変わるのか想像してみてください。

Amazon Pharmacyについても同様のことが言えます。のど飴や、Advil(消炎・鎮痛剤)、抗生物質などの医薬品が必要な場合、即日配送施設ではすでにこれらの商品の多くを数時間以内に配送しています。Prime Airの対象範囲を広げることで、さらに早く受け取れるようになることでしょう。柔軟性に富んだビルディングブロックを、複数の事業にまたがるように、新しい組み合わせで構成することで、お客様にとって可能になることが増えます。

プリミティブを意図的に構築するには忍耐が求められます。ビルディングブロックの組み合わせを明らかにする前に、最初にいくつかのプリミティブサービスだけを公開すると、お客様(または、世間一般の人々)にはただの思い付きのように映ってしまう可能性があります。先ほどAWSとS3について触れましたが、もう1つの例としてヘルスサービスがあります。10年前から、さまざまなチームで健康に関する実験をいくつか試みてきましたが、それらはプリミティブアプローチに基づくものではありませんでした。これが変わったのは2022年のことです。このとき、私たちは世界規模のヘルスケアの問題と機会に対してプリミティブという考え方を応用することにしました。お客様の健康体験を変革するために、いくつかの重要なビルディングブロックを構築しました。それらは、Acute Care(Amazon Clinic経由)、Primary Care(One Medical経由)、そして患者さんにとって必要なあらゆる薬を購入するためのPharmacyサービスというものでした。成功例が広がっていることから、健康・栄養食品の購入機会を望む声がお客様からあがっています。これは、Whole Foods MarketやAmazonフレッシュといった既存の食料品ビルディングブロックのいくつかを利用することで、部分的に実現可能です。

ビルダーとしては、これらのビルディングブロックの構築を待つのは簡単なことではありません。特定の問題を解決するのに、一連のコンポーネントを組み合わせれば良いだけとは違います。後者はたしかに手っ取り早くはあるものの、後々、必ずといっていいほど減速することになります。フルフィルメントネットワークのロボティックスの取り組みにおいて、私たちはこのような誘惑を経験しています。安全性、生産性、コストを改善するには、何十ものプロセスを自動化しなければなりません。大きな機会を形にするには、保管の自動化、操作、仕分け、大型ケージの長距離移動、商品の自動識別といった分野での発明が求められます。多くのチームが複雑なソリューションに飛びつき、共同ソリューションを機能させるのに必要な「最低限」のものを組み込もうとすることでしょう。ですが、これで解決できることは多くはありません。新しい要件が出てきた場合に進化させるのは容易ではなく、同じコンポーネントの多くを必要とする他の取り組みに再利用することもできません。しかし、当社のロボティクスチームのようにプリミティブを基準に考えた場合、ビルディングブロックに優先順位を付け、それぞれのプリミティブからメリットを得られる重要な取り組みを選択し、将来の複雑なニーズに合わせてより自由に(そして迅速に)構成するためのツールチェストを構築することになります。ロボティクスチームは、先に述べたそれぞれの分野においてプリミティブを構築しました。これらは、マルチフロア保管、トレーラーの積み下ろし、大型パレットの移動、出荷プロセス全体(車両内を含む)での柔軟な仕分けなど、次なる一連の自動化の要となるものです。また、複雑な環境で商品を正しく識別できるようにし、増加し続けるロボットの動きの最適化を図り、施設内のボトルネックを適切に管理するための一連の基礎AIモデルの構築も進めています。

時として、「次の柱は何か?マーケットプレイス、プライム、AWSの次に来るのは何なのか?」と尋ねられることがあります。もちろん、これは考えさせられる質問です。しかし、決して尋ねられることのない、そしてもしかしたらさらに興味深いのではないかと思われる質問があります。それは、画期的なカスタマーエクスペリエンスを可能にする次の一連のプリミティブは何かというものです。もし今、こう聞かれたら、私は真っ先に生成AIを挙げることでしょう。

当初の世間の関心は、2022年にChatGPTの発表により注目を浴びた生成AIアプリケーションに集中していました。しかし、Amazonの「プリミティブ」という考え方では、生成AIスタックは3つの異なる層を持ち、これらはそれぞれが巨大で、私たちはそれぞれに多額の投資をしています。

最下位の層は、基盤モデル(FM)の構築を望む開発者や企業のためのものです。主要なプリミティブは、モデルをトレーニングして推論(または予測)を生成するために必要なコンピューティングと、これらのモデルの構築を容易にするソフトウェアです。まず、コンピューティングで鍵となるのが内部のチップ(プロセッサやアクセラレーター)です。これまでのところ、主要なFMのほとんどすべてがNvidiaチップでトレーニングされており、Amazonはどのプロバイダーよりも幅広いNvidiaインスタンス群を提供し続けています。とはいえ、供給不足が続いており、お客様がモデルやアプリケーションを拡張する際のコストが課題として残ります。お客様からは、汎用CPUチップのAWS Gravitonプロセッサの場合と同じように、AIチップの価格性能比をさらに高めてほしいとの要望が寄せられています。そのため、カスタムのAIトレーニングアクセラレーター(AWS Trainium)と推論アクセラレーター(AWS Inferentia)を構築することにしました。Amazonは2023年に、第2世代のAWS TrainiumおよびAWS Inferentiaを発表しました。これらはいずれも、第1世代や他のチップよりも価格性能比が大幅に向上しています。2023年秋、大手FMメーカーのAnthropicは、今後FMの構築、トレーニング、展開にAWS TrainiumとAWS Inferentiaを使用すると発表しました。すでに、Anthropic、Airbnb、Hugging Face、Qualtrics、リコー、Snapなど、複数のお客様が当社のAIチップを使用しています。

お客様が独自のFMを構築する場合、モデルを本格稼働させる際に取り組むべき課題がいくつかあります。データを整理して微調整し、拡張性と効率性に優れたトレーニングインフラストラクチャを構築したうえで、低遅延でコスト効率の高い方法によりモデルを大規模に展開するのは容易ではありません。Amazon SageMakerの構築を決めたのはこのような理由からです。これはマネージド型のエンドツーエンドサービスであり、AIのデータの準備、実験の管理、モデルのトレーニングの高速化(例:Perplexity AIはSageMakerでのモデルのトレーニングを40%高速化)、推論レイテンシの短縮(例:Workdayは、SageMakerを使うことで推論レイテンシを80%短縮)、開発者の生産性の向上(例:NatWestはSageMakerを使うことで、AIの価値実現にかかる時間を12~18か月から7か月足らずにまで短縮)に変革をもたらしています。

中間の層は、既存のFMを活用し、独自のデータによりFMのカスタマイズを行い、大手クラウドプロバイダーのセキュリティと機能を利用して生成AIアプリケーションを構築したい、そしてこれらすべてを1つのマネージドサービスとして提供してほしいと考えるお客様のためのものです。Amazon Bedrockは同層を発明し、ファーストパーティおよびサードパーティーのFMからなる幅広い選択肢と、生成AIビルダーがより高品質のモデルをすばやく構築するための使いやすい機能により、生成AIアプリケーションをきわめて容易に構築・拡張する方法をお客様に提供します。Amazon Bedrockは好調なスタートを切り、わずか数か月で数万人のアクティブ顧客を獲得しました。チームはAmazon Bedrockにおいて迅速な反復を続けており、最近ではガードレール(アプリケーションが回答する質問を保護)、ナレッジベース(検索拡張生成(RAG)とリアルタイムクエリによりモデルのナレッジベースを拡張)、エージェント(マルチステップのタスクを完了)、微調整(継続的なモデルの教育と改良)を提供しており、これらすべてがお客様のアプリケーションの品質を向上させています。さらには、Anthropic(新しくリリースされたClaude 3は世界最高性能の大規模言語モデル)、Meta(Llama 2搭載)、Mistral、Stability AI、Cohere、そして独自のAmazon Titan FMファミリーの新しいモデルも追加したところです。生成AIの黎明期において、お客様が学んだのは、必要なエンタープライズ品質を備えた本番環境向けの生成AIアプリケーションを、必要なコストとレイテンシで構築するには、有意義な反復が不可欠だということです。お客様が求めているモデルは1つだけではありません。アプリケーションの種類に合わせて、さまざまなモデルとモデルサイズにアクセスしたいと考えておられます。お客様はこうした実験と反復を容易にするサービスを求めており、Amazon Bedrockはまさにこれを可能にします。お客様の高い期待が寄せられているのはそのためです。Amazon Bedrockをすでにご利用いただいているお客様には、ADP、Amdocs、Bridgewater Associates、Broadridge、Clariant、Dana-Farber Cancer Institute、Delta Air Lines、Druva、Genesys、Genomics England、GoDaddy、Intuit、KT、Lonely Planet、LexisNexis、Netsmart、Perplexity AI、Pfizer、PGA TOUR、リコー、Rocket Companies、Siemensなどがあります。

このスタックの最上位の層はアプリケーション層です。Amazonはあらゆる消費者事業において、かなりの数の生成AIアプリケーションを構築しています。これらのアプリケーションは、Rufus(AIを活用した新しいショッピングアシスタント)から、さらにインテリジェントで高性能なAlexa、広告機能(自然言語プロンプトを用いて、高品質の画像、広告コピー、動画を容易に生成、カスタマイズ、編集)、お客様および販売事業者様のサービス生産性アプリケーション、その他数十のアプリケーションまで、多岐にわたります。また、AWSにおいてもいくつかアプリを構築しており、そのなかにはコーディングコンパニオンが含まれます。これは、最も魅力的な初期の生成AIのユースケースといえるものです。先頃、AWSのエキスパート機能であるAmazon Qの提供が開始されました。同機能は、コードの記述、デバッグ、テスト、実装に対応するだけでなく、変換(Javaの旧バージョンから新バージョンへの移行など)を実行し、お客様のさまざまなデータリポジトリ(イントラネット、ウィキ、Salesforce、Amazon S3、ServiceNow、Slack、Atlassianなど)を照会して質問に答えます。また、データを要約し、理路整然とした会話を行い、そして行動を起こします。Qは、現在入手可能な最も高性能な作業アシスタントであり、急速に進化を続けています。

現在、Amazonは相当数の生成AIアプリケーションを自社で構築しているものの、最終的には、大多数が他社により構築されるようになることでしょう。しかし、私たちがAWSで構築しているのは、魅力的なアプリや基盤モデルだけではありません。スタックの3層すべてで提供されるAWSサービスは、AIの次なる重要フェーズを民主化する一連のプリミティブを構成し、私たちの知るほぼすべてのカスタマーエクスペリエンスを変革する(そしてまったく新しいエクスペリエンスを発明する)力を社内外のビルダーたちにもたらします。私たちは、世界を変えるAIの多くがAWS上に構築されることになるだろうという楽観的な見通しを持っています。

(ただし、生成AIにおけるセキュリティの重要性を過小評価することがあってはなりません。お客様のAIモデルには、非常に機密性の高いデータが含まれます。AWSとパートナーは、世界最強のセキュリティ機能を提供し、実績をあげています。その結果、AWSでの生成AIの実行を望むお客様はますます増えています。)

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最近、挑戦的な興味深い質問を受けました。それは、Amazonはどうやってレジリエンス(逆境や困難に負けない強さや回復力)を維持しているのかというものです。言葉遣いはシンプルですが、当社のこれまでの、そしてこれからの成功についての、核心を突いた深い内容の質問です。答えは、以下の5つの基本原則に深く根差した規律にあります。1)可能なことを絶えず改善・拡大していこうという意欲のあるビルダーを雇用する。2)興味深い技術に飛びつくのではなく、お客様の実際の課題を解決するようにする。3)プリミティブを構築することで、可能なかぎり速やかにイノベーションを起こし、実験を行えるようにする。4)カスタマーエクスペリエンスを高めるテクノロジーを見つけたら、それを取り入れる――重力に逆らおうとして時間を無駄にしない(かならず負けるからです)。5)実験の失敗を受け入れ、そこから学ぶ――実際、新たな知識を得て、再挑戦する意欲が湧いてきます。

現在、私たちは前例のない変化の時代に事業活動を続けており、すべての分野でまたとない成長の機会に直面しています。例えば、当社は5,000億ドル規模の消費者事業を展開していますが、世界の小売市場セグメントの約80%が依然として実店舗での営業を行っています。同様に、クラウドコンピューティング事業の収益実行率が1,000億ドルに近づいているにもかかわらず、いまだに世界のIT支出の85%以上をオンプレミスが占めています。これらの事業のオンラインとクラウドへの移行は今後も続くことでしょう。メディア・広告の分野においては、リニア形式からストリーミングへのコンテンツの移行が続くと見込まれます。ブロードバンドに十分にアクセスできない世界中の何億もの人々が、今後数年のうちに接続できるようになるでしょう。最後になりましたが、生成AIは、クラウド(これ自体、まだ初期段階にあります)以来、そしておそらくはインターネット以来、最大の技術変革になると考えられます。オンプレミスのITインフラストラクチャを本格的にクラウドへと刷新するには、移行作業が必要です。これに対して、生成AI革命は、最初からクラウド上で繰り広げられることになります。実現可能なソリューションによってもたらされる社会的利益とビジネス上の利益の大きさに、誰もが驚かされることでしょう。

Amazonの歴史において、これほどお客様の生活をより豊かで便利なものにする大きな機会を手にしていると感じたことは、かつてありませんでした。私たちは、何が可能になるのかと思うと興奮せずにいられません。そして未来の発明にフォーカスし、その実現のために一丸となって取り組んでいきます。

Amazon.com, Inc.社長兼CEO
アンディ・ジャシー

追伸:これまでの慣例にならい、1997年に初めて発行した株主への手紙を以下に添付します。1997年に書かれた内容は今も生き続けています。

*この2023 Letter to Shareholdersの日本語版は、2024年4月11日に公開された英語版を参照用に翻訳したものです。日本語版が英語版と矛盾又は抵触した場合、英語版の内容が優先されます。

Amazon.con logo with text below it that reads "1997 letter to shareholders (Reprinted from the 1997 annual report)"

To our shareholders:

Amazon.com passed many milestones in 1997: by year-end, we had served more than 1.5 million customers, yielding 838% revenue growth to $147.8 million, and extended our market leadership despite aggressive competitive entry.

But this is Day 1 for the Internet and, if we execute well, for Amazon.com. Today, online commerce saves customers money and precious time. Tomorrow, through personalization, online commerce will accelerate the very process of discovery. Amazon.com uses the Internet to create real value for its customers and, by doing so, hopes to create an enduring franchise, even in established and large markets.

We have a window of opportunity as larger players marshal the resources to pursue the online opportunity and as customers, new to purchasing online, are receptive to forming new relationships. The competitive landscape has continued to evolve at a fast pace. Many large players have moved online with credible offerings and have devoted substantial energy and resources to building awareness, traffic, and sales. Our goal is to move quickly to solidify and extend our current position while we begin to pursue the online commerce opportunities in other areas. We see substantial opportunity in the large markets we are targeting. This strategy is not without risk: it requires serious investment and crisp execution against established franchise leaders.

It’s All About the Long Term

We believe that a fundamental measure of our success will be the shareholder value we create over the long term. This value will be a direct result of our ability to extend and solidify our current market leadership position. The stronger our market leadership, the more powerful our economic model. Market leadership can translate directly to higher revenue, higher profitability, greater capital velocity, and correspondingly stronger returns on invested capital.

Our decisions have consistently reflected this focus. We first measure ourselves in terms of the metrics most indicative of our market leadership: customer and revenue growth, the degree to which our customers continue to purchase from us on a repeat basis, and the strength of our brand. We have invested and will continue to invest aggressively to expand and leverage our customer base, brand, and infrastructure as we move to establish an enduring franchise.

Because of our emphasis on the long term, we may make decisions and weigh tradeoffs differently than some companies. Accordingly, we want to share with you our fundamental management and decision-making approach so that you, our shareholders, may confirm that it is consistent with your investment philosophy:

  • We will continue to focus relentlessly on our customers.
  • We will continue to make investment decisions in light of long-term market leadership considerations rather than short-term profitability considerations or short-term Wall Street reactions.
  • We will continue to measure our programs and the effectiveness of our investments analytically, to jettison those that do not provide acceptable returns, and to step up our investment in those that work best. We will continue to learn from both our successes and our failures.
  • We will make bold rather than timid investment decisions where we see a sufficient probability of gaining market leadership advantages. Some of these investments will pay off, others will not, and we will have learned another valuable lesson in either case.
  • When forced to choose between optimizing the appearance of our GAAP accounting and maximizing the present value of future cash flows, we’ll take the cash flows.
  • We will share our strategic thought processes with you when we make bold choices (to the extent competitive pressures allow), so that you may evaluate for yourselves whether we are making rational long-term leadership investments.
  • We will work hard to spend wisely and maintain our lean culture. We understand the importance of continually reinforcing a cost-conscious culture, particularly in a business incurring net losses.
  • We will balance our focus on growth with emphasis on long-term profitability and capital management. At this stage, we choose to prioritize growth because we believe that scale is central to achieving the potential of our business model.
  • We will continue to focus on hiring and retaining versatile and talented employees, and continue to weight their compensation to stock options rather than cash. We know our success will be largely affected by our ability to attract and retain a motivated employee base, each of whom must think like, and therefore must actually be, an owner.

We aren’t so bold as to claim that the above is the “right” investment philosophy, but it’s ours, and we would be remiss if we weren’t clear in the approach we have taken and will continue to take.

With this foundation, we would like to turn to a review of our business focus, our progress in 1997, and our outlook for the future.

Obsess Over Customers

From the beginning, our focus has been on offering our customers compelling value. We realized that the Web was, and still is, the World Wide Wait. Therefore, we set out to offer customers something they simply could not get any other way, and began serving them with books. We brought them much more selection than was possible in a physical store (our store would now occupy 6 football fields), and presented it in a useful, easy- to-search, and easy-to-browse format in a store open 365 days a year, 24 hours a day. We maintained a dogged focus on improving the shopping experience, and in 1997 substantially enhanced our store. We now offer customers gift certificates, 1-Click shopping℠, and vastly more reviews, content, browsing options, and recommendation features. We dramatically lowered prices, further increasing customer value. Word of mouth remains the most powerful customer acquisition tool we have, and we are grateful for the trust our customers have placed in us. Repeat purchases and word of mouth have combined to make Amazon.com the market leader in online bookselling.

By many measures, Amazon.com came a long way in 1997:

  • Sales grew from $15.7 million in 1996 to $147.8 million – an 838% increase.
  • Cumulative customer accounts grew from 180,000 to 1,510,000 – a 738% increase.
  • The percentage of orders from repeat customers grew from over 46% in the fourth quarter of 1996 to over 58% in the same period in 1997.
  • In terms of audience reach, per Media Metrix, our Web site went from a rank of 90th to within the top 20.
  • We established long-term relationships with many important strategic partners, including America Online, Yahoo!, Excite, Netscape, GeoCities, AltaVista, @Home, and Prodigy.

Infrastructure

During 1997, we worked hard to expand our business infrastructure to support these greatly increased traffic, sales, and service levels:

  • Amazon.com’s employee base grew from 158 to 614, and we significantly strengthened our management team.
  • Distribution center capacity grew from 50,000 to 285,000 square feet, including a 70% expansion of our Seattle facilities and the launch of our second distribution center in Delaware in November.
  • Inventories rose to over 200,000 titles at year-end, enabling us to improve availability for our customers.
  • Our cash and investment balances at year-end were $125 million, thanks to our initial public offering in May 1997 and our $75 million loan, affording us substantial strategic flexibility.

Our Employees

The past year’s success is the product of a talented, smart, hard-working group, and I take great pride in being a part of this team. Setting the bar high in our approach to hiring has been, and will continue to be, the single most important element of Amazon.com’s success.

It’s not easy to work here (when I interview people I tell them, “You can work long, hard, or smart, but at Amazon.com you can’t choose two out of three”), but we are working to build something important, something that matters to our customers, something that we can all tell our grandchildren about. Such things aren’t meant to be easy. We are incredibly fortunate to have this group of dedicated employees whose sacrifices and passion build Amazon.com.

Goals for 1998

We are still in the early stages of learning how to bring new value to our customers through Internet commerce and merchandising. Our goal remains to continue to solidify and extend our brand and customer base. This requires sustained investment in systems and infrastructure to support outstanding customer convenience, selection, and service while we grow. We are planning to add music to our product offering, and over time we believe that other products may be prudent investments. We also believe there are significant opportunities to better serve our customers overseas, such as reducing delivery times and better tailoring the customer experience. To be certain, a big part of the challenge for us will lie not in finding new ways to expand our business, but in prioritizing our investments.

We now know vastly more about online commerce than when Amazon.com was founded, but we still have so much to learn. Though we are optimistic, we must remain vigilant and maintain a sense of urgency. The challenges and hurdles we will face to make our long-term vision for Amazon.com a reality are several: aggressive, capable, well-funded competition; considerable growth challenges and execution risk; the risks of product and geographic expansion; and the need for large continuing investments to meet an expanding market opportunity. However, as we’ve long said, online bookselling, and online commerce in general, should prove to be a very large market, and it’s likely that a number of companies will see significant benefit. We feel good about what we’ve done, and even more excited about what we want to do.

1997 was indeed an incredible year. We at Amazon.com are grateful to our customers for their business and trust, to each other for our hard work, and to our shareholders for their support and encouragement.

Jeffrey P. Bezos
Founder and Chief Executive Officer
Amazon.com, Inc.

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