Amazonは、未来を担う子どもたちに「誰もがテクノロジーで世界を変えられる」と実感できる体験を届けたいと考えています。そこで2019年9月から実施しているのが「Amazon Future Engineer」(以下、AFE)です。世界120の国と地域で青少年の教育事業などを推進する公益財団法人日本YMCA同盟と、中高生に向けたIT・プログラミングキャンプを展開するライフイズテック(Life is Tech!)株式会社と協力して、さまざまなバックグラウンドを持つ若者に、ITやプログラミングを学ぶ機会を提供してきました。
その活動の集大成として3月28日、オンラインイベント「Amazon Future Engineer 2020 アッセンブリー」が開催されました。イベントでは、子どもたちが制作したWebサイトの発表や、交流会などのアクティビティが行われ、参加者や保護者、スタッフたちがAFEに対するたくさんの思いを語りました。
学びの成果を発表するAFE集大成のイベント
AFEはAmazonがグローバルに展開している取り組みで、貧困やジェンダー格差など多様なバックグラウンドを持つ若者にコンピューターサイエンスを学ぶ機会を提供して、イノベーションの担い手を育成するプログラムです。
今回のAmazon Future Engineer 2020 アッセンブリーは、全国30か所以上で、およそ350人の小中学生と50人の高校生が受講した2020年度のAFEの学びの成果を発表する会として開かれました。
「初めての体験でよかった!」
「楽しかった!」
ライブ配信には、イベントに参加した子どもたちがカメラに駆け寄り、元気いっぱいに話す姿が映し出されます。今回のイベントの開催趣旨について、公益財団法人YMCAせとうち副総主事の白鳥雅人さんは、こう説明します。
「AFE2020アッセンブリーでは、子どもたちにWebサイトづくりに挑戦してもらいます。サイトづくりを通じてテクノロジーに触れながら、その可能性や、自分の可能性みたいなものに気づいてもらえたらいいなと思っています」
そんなAFE2020アッセンブリーにはテーマが掲げられています。それは、「いのち/環境を守る」です。東日本大震災から10年。災害から身を守るためにテクノロジーをどう活用できるかを、サイトづくりを通して子どもたちが主体的に考えます。会場は近年災害に見舞われた熊本県熊本市、福島県郡山市、岡山県倉敷市。当日はそれら3拠点をオンラインでつないで、ライブ配信が行われました。
プログラミングを通じて命の大切さを考える
3拠点の小中学生たちは、AFEのクラスで制作したWebサイトや、その制作プロセスを紹介。プログラミングを学ぶと同時に、自身や命の大切さについて改めて考え直しました。
熊本市の熊本YMCAは、3月20日に終わったプログラムのそれまでの様子を、ダイジェストビデオにまとめて放映。2020年7月の熊本豪雨の災害時、避難所でAFEの特別プログラムを行った際のビデオには、段ボールで家を作り、楽しみながらプログラミングを学ぶ子どもたちの生き生きとした様子が映し出されます。
さらに別のビデオには、SDGsについて子どもたち同士で考え、そのうえでWebサイト制作が行われた模様もありました。そのうちの1つ、小学5年生の佐々木梢さんが作った「海ってきれい?」というWebサイトには、自己表現を超えた「誰か、何かのために」という思いが込められていました。
「海の汚染のことは、学校の授業やニュースを見て気になっていました。AFEでもSDGsに触れる機会があり、多くの人に問題意識を持ってもらいたくて、サイトを作りました。サイトを見てくれた人には、『環境を少しでもよくしていこう、汚さないようにしよう』と思ってもらいたいです」(佐々木さん)
福島会場の福島県郡山市の学童保育「ココネット・マム」には、小学生から新中学1年生の9人が集まりました。東日本大震災からの復興を果たしつつある今、環境問題を中心に「大人に向けて発信したいこと」をテーマにWebサイト制作に挑戦。仲良く、和気あいあいと課題に取り組む姿が中継されます。
そんな子どもたちの姿を見た保護者からは、「子どもの可能性の広がりを感じた。今日のクラスのように、これからも人とのつながりを大切にしてほしい」という声や、「Webサイトを作るのは子どもにとって初めての経験だったが、作り上げて達成感があったようでうれしい」という感想が聞かれました。
3つ目の会場、「まびいきいきプラザ」がある倉敷市真備町も、2018年7月の西日本豪雨で甚大な被害を受けた地域です。イベント当日のクラスでは、「テクノロジーで誰かを幸せにするためにできること」について話し合われました。
そして作られた「好きなことを伝え、誰かを幸せにする」がテーマのサイトは、「ポチャッコ(サンリオキャラクター)紹介」、「保育士について」、「折り紙」、「カラオケについて」、「プログラミングのおもしろさ」など、どれも個性的です。
それらの作品を見て、ライフイズテック取締役の讃井(さぬい)康智さんは、子どもたちにこう語りかけます。
「好きなことを見つけられない人は多いものですが、皆さんはすでにそれを見つけられていて、素晴らしいと思いました。サイトはどれも、見やすさや伝え方も考えられていて、プログラミングの技術だけではなく、多方面で力が発揮されていました。ぜひ皆さん、好きなものを作り続けてください。そうすれば、AFEのいう『世界を変える』というころに必ず到達できます」
社会への思いを精一杯カタチにした高校生たち
小中学生の活動報告に先立って行われたのが、高校生の発表です。全国から選抜された3組の高校生は、真剣に大きな情熱で課題と向き合い、斬新なアイデアをWebサイトという形にしました。
始めに発表したのは、広尾学園高等学校1年の甘利直花さん。東日本大震災から10年目のいまやるべきことは何かと考え、高校生がアイデアを発表する場をオンライン上に構築。人、世界、社会をつなぐ(connect)Webサイト「3C project」を作り上げました。
「サイトを作るのは難しかったです。でも、自分が思っていたことを、サイトという形に表現できてよかったです。AFEがなければ、プロジェクトについて考える機会はなく、大きく成長できたと思っています」(甘利さん)
東京学芸大学附属国際中等教育学校高校1年の中山聖英子さんと本保愛璃さんは、高校生7人による有志団体「リチャリティ」を代表してイベントに参加。高校生に好かれる、おいしくてインスタ映えする「バエる非常食」を開発中で、今回はそのプロジェクトの一環としてWebサイトを制作したそうです。
「高校生の防災意識はとても低いので、防災について考えるきっかけになればと、このプロジェクトを進めています。今日は、他の高校生の発表を聞いて、いろいろ刺激をもらえるいい機会でした」(中山さん)
5秒で起業できるVR型SNS「Capsule」を開発したのは、北海道の北嶺高校1年の大杉綸さんです。災害時でも、すぐに思いついたアイデアを実現し、起業するための環境として、Webサイトを構築中です。
「AFEへの参加を通じて、自分のアイデアに真剣に向き合い、人に伝えることの難しさもわかりました。このような機会をくださった皆さまに、感謝の気持ちでいっぱいです」(大杉さん)
「高校生のパワーはすごい。このパワーがもっと活かされるべきだと改めて感じました」というのは、アマゾンジャパン パブリックリレーションズ本部ディレクターの金子みどりさん。高校生たちにエールを送ります。
「どんな問題を解決したいか。どうすれば人々の幸せにつながる仕事ができるのか。そんな思いを出発点に、『ダイバーシティ』の考え方で多様な発想を持つ人たちと協力して、結果を出していってもらいたいと思います」(金子さん)
今回の経験が夢への第一歩、第二歩
プログラミングを新しい体験として純粋に楽しんだ子ども、Webサイトという形になり達成感を得た子ども、ITによるものづくりで自身に向き合い自己を表現した子ども……。AFEの体験を経て、子どもたちは今後の目標や将来の夢について語ってくれました。
「パソコンが苦手で、打つのが早くなかったので参加してみました。サイトづくりは初めての体験で難しかったですが、慣れてくると楽しかったので、今後はテクノロジーを使って人の役に立てるようになりたいなと思っています」(中学1年・女子生徒)
「最初はどんなことをするのかと思っていたけど、プログラミングは思っていたより簡単で、手軽でした。将来はIT企業に勤めたいので、(今回の体験は)役に立つと思います」(中学2年・男子生徒)
「将来の夢はゲームクリエイターで、もっとプログラミングを学びたくて参加しました。大好きなプログラミングの魅力を伝えたくて、プログラミングの楽しさや面白さを伝えるページを作りました。新しいことをどんどん学べて楽しかったです」(小学4年・男子児童)
「(参加の理由は)普段できないことや、友達ができそうだと思ったから。プログラミングは難しかったけど、リーダーたちが教えてくれたから、できるようになりました。次は教える側になってみたいです」(小学5年・女子児童)
AFEのプログラムはきっと子どもたちに、「世界を変えられる」と自身の可能性の広がりを見せることができたのかもしれません。金子さんはAEE 2020 アッセンブリーをこう総括しました。
「カラオケのように自分が好きなものや、折り紙のように被災地で心を癒してくれたものなどの、皆さんにとっての宝物。それを自分だけの中に秘めておくのではなく、人に伝える『コミュニケーションのツール』としてテクノロジーが使われているのを今日の発表で見て、それが一番大事なテクノロジーの使われ方だと実感しました」
さらに、社会が大きく変革する時代にあっても、プログラミングの技術は今後も重要視され続けるとして、子どもたちにさらにこう伝えます。
「皆さんは、テクノロジーを使って大切な人のため、地域のために何かを作っていく、その第一歩、第二歩をすでに踏み出しています。まさに皆さんは『Future Engineer』です。私たちはこれからも、AFEの取り組みを続けて、子どもたちの個性を活かす環境を提供していきます」
公益財団法人日本YMCA同盟総主事の田口努さんは、「今日は被災地3か所を中継して、皆さんと『離れていてもつながる』ことができました。皆さんの協力にまずは感謝します」と言い、こう続けました。
「私も福島県いわき市の出身です。この10年、YMCAの一員として東日本大震災の災害支援に携わるなかで感じたのは、子どもたちが未来に向かって元気に歩んでいる地域では、復興に対する住民の力が強いということです。そのため、今回のように子どもたちが、学びを深めることで世界が広がる体験をできたことは、復興の後押しにもなると思います。そしてまた、社会を実際に動かしている大人たちが送った温かいメッセージは、子どもたちに大きな希望を与えたと思います。今日はありがとうございました」。