KDPで出版できるという目標を持てたことが、僕にとって大きな転機となったと思います
クロサワコウタロウさん

バイクでの旅に憧れ、23歳の時にインドからポルトガルまでユーラシア大陸横断を、25歳の時にはカナダからアルゼンチンまで南北アメリカ大陸縦断を果たしたクロサワコウタロウさん。さまざまな出会いとアクシデントに満ちた旅は、人生感を変える刺激的なものだった。

帰国し、地方のホテルで働き始めると、旅の記憶を書きとどめておこうと、旅での経験を旅行記としてまとめ始めた。それを出版したいというぼんやりとした思いはあったが、その半面、無名の自分が本を出版できるわけがないとあきらめてもいた。その後、転職して仕事が忙しくなると執筆の手は止まり、またたく間に10年が過ぎ去った。

30代半ばとなった時、クロサワさんは仕事を辞め、この先の人生をどう生きるか考える時間を持った。もっと自分に合った生き方を考えた時、思い出したのは長らく中断していた旅行記だった。そして漠然と抱いていた作家に対する憧れを現実のものにしようと、再び執筆を開始した。知人からKindleダイレクト・パブリッシング(KDP)なら、費用をかけずに自分の本が出せることを聞いていたからだった。

Kindleでの出版という目標が人生の転機に
Kindleでの出版という目標が人生の転機に
Kindleでの出版という目標が人生の転機に

これまでノートに書きとめたものをまとめ直し、ユーラシア大陸横断の旅をまとめたファーストシーズン全6巻を2013年にKDPで出版。本の題名にはおこがましさを感じたが、自分の旅の話が飲み仲間から、沢木耕太郎さんの『深夜特急』をもじって「珍夜特急」と呼ばれていたことから、その呼び名をそのまま付けた。

売上はそれほど期待していなかったが、1週間に1巻のペースで出版していくと、3巻を出した頃から部数が伸び始めた。同時にカスタマーレビューを読み、シリーズを読み続けてくれている読者がいることに励まされ、翌年に北米・南米大陸縦断の旅をまとめたセカンドシーズン全9巻もKindleで出版した。

「宣伝もSNSでの活動もほとんど何もしなかったので、売れて驚きました」というクロサワさん。

「アパート住まいで1人で食べていくのに困らない程度」という前置きが付くが、今はKDPでの売上だけで生活しているという。

「これまでは、本を書いてそれで食べていける人間なんて、ほんの一握りしかいないと思っていましたから、執筆に専念する気持ちにはなれませんでした。かといって、趣味のままでは完成までたどり着けませんでした。KDPで本を自分で出版できるという目標を持てたことが、自分にとって大きな転機となったと思います。KDPがなければ、まだノートの半分くらいしか書けていなかったんじゃないですかね」

現在クロサワさんは、SF長編シリーズなど多様なジャンルに挑戦しながら執筆に専念。毎月1冊のペースで新作を出版することを自らに課している。

「楽をしたくないんです。執筆のために、友達と会うのは1か月に1回程度にセーブしています。それでも自由に活動できる今の生活がとても楽しいですし、自分に合っていると思います。旅の経験を今度はフィクションの世界で活かしていきたいと思っています」

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