「会社員であったり、家族がいるからこそ描けた作品もあります。自分の経験が強みになることを知ってもらいたいですね」
「小学生の頃から漫画が好きで描いてはいたのですが、漫画家というのは、商業誌に連載を持っているようなごく限られた人だと思っていたので、漫画家になることは無理だとあきらめていました」
そんな岡野純さんが、漫画家として活動を始めたのは、会社員となり、父親になった後のこと。現在も会社員として働きながら、漫画家としても活躍している。
「7~8年前までは仕事に追われて、子どもが起きる前に出勤し、残業して帰宅すると子どもは寝ているという毎日で、家族と過ごす時間も短かかったですし、家事も妻に任せきりでした。漫画からもすっかり遠ざかっていましたし、何か自分でやりたいけれどもできないというモヤモヤとした気持ちがありました」
その生活を変えるきっかけとなったのは、インターネットで知ったライフハックと呼ばれる仕事の効率化術だった。早速実践を開始した岡野さんは、残業を減らして早めに帰宅し、家族と過ごす時間を確保。そして朝4時過ぎに起きて、家族が起きてくるまでの約1時間を自分のために使うことにした。その時始めたのが、IT系インストラクターの経験を生かしてIT用語を文章と4コマ漫画で解説するブログだった。開始して約1年が過ぎた頃、そのブログが編集者の目に留まり、出版社から出版依頼を受けるようになった。
「自分では絵に自信がなかったのですが、ブログで漫画を発表し、読んだ方から『わかりやすかった』と感想をいただいていくうちに、漫画でわかりやすく説明できることが自分の強みなのだと気づきました」
その強みを生かして、もともと興味を持っていた時短術や情報整理術を漫画で解説する本などを出版社を通して数冊出版。中でも『マンガでわかる! 幼稚園児でもできた!! タスク管理超入門』は、Amazonでベストセラーにランクインするなど人気を獲得していった。
次に岡野さんが挑んだのは、AmazonのKindleダイレクト・パブリッシング(KDP)を利用して、自分で本を出版することだった。
「常に出版社から依頼をいただけるとは限らないので、自分でも出版できる方法を試してみようとKDPを始めました。1冊を描き上げるとなると、目標が大きすぎてやる気が出にくいので、1週間で5ページ描くことを目標とし、約4か月をかけて1巻を描き上げるというペースで描いていきました」
その作品『やる気クエスト』は、佐々木正悟氏が執筆した仕事術の本『一瞬で「やる気」がでる脳のつくり方』を、ロールプレイングゲームのような冒険ファンタジーに大胆にアレンジした初めての長編作品で、2014年から約4年の歳月をかけて執筆し2017年に第6巻をもって完結した。
「自分でも、最終的にうまくまとめることができるのか不安でしたが、出版するという目標を明確にしたことで描き進められました。また、出版していくうちにファンになってくださる方が現れたり、好意的な反響をいただけたりしたことも大きな励みになりました」
岡野さんの地道な努力は、約8年間で9作品として実を結び、これまで発表した作品の累計販売部数は10万部を超えた。そしてこれからも、自分の強みである「物事をわかりやすく伝える表現力」を生かした作品を発表していくという。
「これは漫画に限ったことではありませんが、今は出版社に依存しなくても、KDPのように自分で作品を流通させることができるので、漫画家であることを宣言し、作品を発表すれば誰でも漫画家になれる時代だと思います。会社員であったり、家族がいても作品は描けますし、その環境だからこそ描けた作品もあります。もし自分のやりたいことができずに悩んでいる方がいたら、自分で時間を生み出せることや自分の経験が強みになることを知ってもらいたいですね」
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