私はここ数週間、アマゾン ウェブ サービス(AWS)のお客様やパートナー各社が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対応の最前線にいる方々や、感染拡大を防ぐために自宅に留まっている皆様を支援するために、止まることのないイノベーションを提供していることに感銘を受けています。以下では、この危機的な状況下で、AWSのお客様とパートナー各社が進めている多様な取り組みをご紹介します。
研究開発の加速
公衆衛生機関、大学、政府、そして、あらゆる規模の企業が、クラウドを活用して、パンデミックの影響を予測・監視、予防措置の効果を測定し、新しい検査や治療法の開発を進めています。例えば、世界保健機関(WHO)は、ウイルスの追跡、発生状況の把握、感染拡大の抑制に向けた取り組みを加速させています。AWSは、これを支援するために、WHOに先進的なクラウド技術と技術的知見を提供しています。これには、膨大なデータレイク(複数ソースからのデータ群)を構築して各国の疫学的データを集約することや、医療トレーニング用の動画を迅速に多言語に翻訳することなどが含まれます。
私たち自身もまた、AWS Diagnostic Development Initiative(AWS診断開発イニシアチブ)を立ち上げました。これは、より正確で優れた医療現場での診断法の迅速な市場投入に取り組むお客様を支援し、また同様の課題に取り組む組織間の連携を促進するためのプログラムです。その一環として、初期投資として2,000万米ドルを投じ、COVID-19に対する集団理解と検出に関する研究、イノベーション、開発を加速します。このイニシアチブの参加者であるカルフォルニア大学サンディエゴ校病院(UC San Diego Health)の放射線技師や医師たちは、肺炎を迅速に検出することで、病院での支持療法(supportive care)を必要とするCOVID-19患者と自宅での経過観察が可能な患者の判別の精度を高めています。
ヘルスケアシステムの支援
オンライン診療は、患者や医療従事者の感染リスクを軽減すると同時に、医療システムへのアクセスを改善し、臨床医の作業負荷をより効率的に分散させ、患者体験を向上させることが可能という意味で、重要な医療ツールとなっています。COVID-19の拡大を受けて、これらのソリューションに対する需要が高まっており、オンライン診療を提供する事業者はAWSを利用してサービスのスケールアップを図っています。カナダでは、オンタリオ州全域で遠隔医療プログラムを提供する非営利団体であるOntario Telemedicine Network(OTN)が、4,000パーセントの需要増に対応するためにビデオサービスの規模を拡大しています。これにより、すべての市民が必要な時に必要な場所で簡単に医療システムにアクセスできるようになります。イギリス・ロンドンを拠点とするスタートアップ企業Babylon Healthは、英国で患者に遠隔カウンセリングを提供しており、AIベースのシステムを使用して既知の症状や危険因子を評価し、最新の医療情報を提供しています。
世界各地でさまざまな組織がパンデミックの影響を予測・監視し、予防措置の効果を測定するためにAWSを利用しています。インターネットに接続したスマート体温計QuickCare・Smart Earやヘルストラッキングアプリを開発している米Kinsaは、発熱や症状に関する情報をリアルタイムで集計し、病気の広がりを可視化しています。Kinsaの米国ヘルスウェザーマップでは、100万台以上のKinsaの体温計からデータを収集し、保健当局者が潜在的なホットスポットを特定したり、ソーシャル・ディスタンシングの効果を測定したりするのに活用されています。ブラジルでは、公立病院がLAURA PA Digitalプラットフォームを利用してオンラインの初期スクリーニングを実施し、潜在的な患者にCOVID-19の症状を伝えています。LAURA PA Digitalプラットフォームは患者がいつ治療を受けるべきかについてもアドバイスし、そのバーチャルスクリーニングのデータを使用することで、病院はCOVID-19に関連した集中治療の需要を予測することができます。
医療弱者の見守り
パンデミックがもたらす影響に、日常的なケアやリフィル処方箋、あるいは食料品さえも信頼できる方法で入手できない高齢者やその他の医療弱者へのストレスがあります。私たちのお客様の中には、クラウドの柔軟性と拡張性を活かして、こうしたリスクに直面する可能性の高い人々をサポートするためにサービスを更新し、課題に対応している企業もいます。例えば、地域住民向けSNSであるNextdoorは、ユーザーが地域コミュニティで困っている人々を支援する動きが広がったことで、3月の1日当たりのアクティブユーザー数はグローバルで80%増加しました。Nextdoorは、近所の人に支援を提供できる人として自分自身をマークできるインタラクティブなマップ「ヘルプマップ」や、食料品の買い出しなど、特定のニーズや関心事を中心にメンバーを組織化できる「Nextdoorグループ」などの新機能を迅速に追加しました。また、オーストラリアでは、高齢者向け介護施設、リタイアメントビレッジ、居宅サービスを提供するJuniper Homesが、AWSを利用したビデオ会議、チャット、通話サービスを展開しました。これにより、入居者は安全な状態を保ちながら個人的なつながりを維持することができるほか、医療スタッフは入居者や患者の様子をバーチャルに確認することができるようになりました。
教育リソースや遠隔教育へのアクセスの提供
学校がCOVID-19の影響で一時的に閉鎖されるなか、生徒の継続的な学習を支援するため、保護者、教職員、教育機関の経営者はオンライン教育への関心を急速に高めています。そのため、オンライン教育サービスを提供する事業者は、多くの場合において10倍にも達するトラフィック増などに対応するために、AWSを利用して迅速にサービス拡張する必要がありました。Blackboardは、教育コミュニケーションや学習管理ツール、トレーニングやチュートリアルを提供し、学校がオンライン教育やバーチャル教室での学習に迅速に適応できるよう支援しています。世界各地のリモート教育サービス事業者も学校システムを支援する取り組みを進めています。ブラジルの教育グループであるCognaのSomos Educaçãoは、Plurall教育プラットフォームを利用して130万人の生徒のオンライン授業をサポートしています。中東では、アラブ首長国連邦のAlef Educationがデジタル学習製品を全学生に提供しています。また、インドでは、CareerLauncherが政府と協力して、教師への効果的なバーチャル授業のテクニックと技術をトレーニングを支援しています。同社のAspiration.aiポータルのパイロットプログラムは2週間前に開始され、来月にはデリーの学校1,200校と19万人の学生に展開される予定です。
テックコミュニティにおけるイノベーション促進
世界中のテックコミュニティは政府機関や公的機関、民間企業と協力して、COVID-19への対処策を見つけるために時間、リソース、専門知識を提供しています。AWSはドイツで機械学習ソリューションプロバイダのKineo.aiと協力して、オンラインの#WirVirVsVirusハッカソンに参加する27,000人以上にAWSの技術やツールへのアクセスを提供しました。ドイツ政府やその他の組織が主導して始まったこのハッカソンでは、COVID-19に対処するための800以上のアイデアが生まれました。これらのアイデアは、パンデミックによって引き起こされている課題に対する協調的な解決策を開発するための出発点となるでしょう。ハッカソンが行われた週末には、アマゾンの従業員グループが技術メンターとして110のプロジェクトをサポートしました。米国でも同様に、マサチューセッツ工科大学(MIT)が、世界中から集まった1,500人ものハッカーが、脆弱な人々を保護し、医療システムを支援するためのソリューションを開発する一連のオンライン公開課題を実施しました。勝利したチームには開発したソリューションのさらなる発展に向けてAWSのクレジットが提供されました。
AWSはまた、米国ホワイトハウスが主導するCOVID-19ハイパフォーマンスコンピューティングコンソーシアムにも参加し、COVID-19に関連する診断、治療、ワクチン研究の進展に向けて研究機関や企業に技術支援とAWSクレジットを提供しています。
ここでご紹介した例は、COVID-19の影響を管理できるようにするための多くの取り組みのほんの一部に過ぎません。AWSは今後もお客様を第一に考え、お客様のニーズに応じて信頼性の高いインフラストラクチャを提供していきます。これらの組織のリーダー層に感謝するとともに、ここでご紹介した組織だけでなく、その他の組織によるものも含めた取り組みが、私たち全員がこの困難な時期を迅速かつ安全に乗り越える助けになることを願っています。AWSのお客様とパートナーがCOVID-19に対処し、地域コミュニティを支援するさまざまな取り組みについての詳細については、AWSブログとAWS COVID-19レスポンスページにアクセスしてください。
*2020年4月14日にアメリカ版のAmazonブログDay One に掲載された記事を日本語に翻訳し掲載しました。