2023年9月21日、アマゾン ウェブ サービス(AWS)が千葉県印西市の原山小学校内に日本で最初のThink Big Spaceを開設しました。Think Big Spaceは、AWSが世界で68か所に開設する地域コミュニティによるSTEAM教育*を支援するためのスペースで、今回の開設で69か所目になります。
*STEM(Science, Technology, Engineering, Mathematics)に加え、芸術、文化、生活、経済、法律、政治、倫理等を含めた広い範囲でAを定義し、各教科等での学習を実社会での問題発見・解決に生かしていくための教科等横断的な学習を文部科学省でも推進しています。

Think Big Spaceという名称には、大胆な方針と方向性を持ち、広い視野で考え、可能性を追求していくことを目指すという意味が込められています。このスペースを利用する子どもたちの可能性が最大化されることが私たちの願いです。
この施設の開設・運営を支援するのは、AWSが行う社会貢献プログラムであるAWS InCommunitiesです。今回のSTEAM教育支援を目的としたThink Big Space以外にも、若年層向けにクラウドスキルをはじめとしたさまざまなIT(情報技術)関連トレーニングを行っているほか、データセンター運用部門の社員たちによるボランティア活動等、地域の一員として幅広い活動を行なっています。
今回Think Big Spaceが開設された教室は、もともとは原山小学校の旧コンピュータ室でした。空きスペースとなっていた教室が生まれ変わったのです。椅子や机などの什器や、室内装飾、プロジェクター画面を投影できるスペース、子どもたちが自由に文字やイラストを書き込めるホワイトボードの壁などが設置されています。STEAM教育を進めていくために、大画面の電子黒板、レゴブロックのプログラミングキットなどの設備も用意されました。
子どもたちがSTEAM授業での利用を開始
開所日当日から早速、原山小学校の子どもたちがThink Big Spaceでの授業がスタートしました。
自分で描いた絵をプロジェクションマッピングに
最初に利用したのは2年生の子どもたち。絵を描くためのクレヨンなどを持って教室に入って席に着くと、先生から配布された紙に自由に絵を描き始めました。
子どもたちは絵を描き終わると、前方のスキャナーの前にいる先生のところまで絵を持って行きます。先生がそれをスキャナーで読み込むと、後方に設けられた大きなホワイトスペースに花火の様子が映し出され、描いた絵が花火として浮かび上がりました。
花火の場面に描いた絵を投影するプロジェクションマッピングです。

自分たちの描いた絵が花火の中に映し出されたのを見ると、子どもたちからは歓声があがりました。
「おぉ!」
「私の絵だ!」
「映った!!」
自分や友達の絵が花火として打ち上げられた様子を見て、子どもたちから率直な感想が自然に口からついて出ていました。一度、自分の絵が映し出されると、見栄えを良くするコツをつかみ、新しい紙を先生からもらって2枚目の絵を描き始める子もいました。デジタルならではの絵を描く新しい楽しみを満喫し、あっという間に40分間の授業は終了しました。
ロボット作りとプログラミングに挑戦
次に教室にやってきたのは3年生。「今日はロボットを作ります」という先生の掛け声のもと、Think Big Spaceに設置されたレゴブロックのプログラミングキットが2人に1つずつ配布されました。

レゴブロックのプログラミングキットは、通常のレゴ同様、ブロックを組み立てることでロボットや車といった造形物を作ることができます。さらに、でき上がったロボットなどをパソコンとケーブルでつなぐことで、Scratch(スクラッチ)などのプログラミング言語で書いたプログラムで動かすことができます。
先生からは、「どうすればロボットを早く動かすことができるかな?」という課題が上がりました。「どうすればいいと思う?」という先生の問いかけに、「ロボットを早く動くよう改造する!」というハードウェア改造が必要という意見と、「ロボットが早く動くプログラムを書く」というソフトウェア強化をあげる意見があがりました。これまでのプログラミング授業などを通して、ハードウェアとソフトウェアの両方を改良していくことで性能が上がっていくことを子どもたちは理解しているようです。
「でき上がった人は後ろのスペースでロボットを動かしていいよ」という先生の言葉に、子どもたちは自分たちで作り上げたロボットを持って空きスペースに向かいました。思い通りにロボットが動いたチームもあれば、思ったようにロボットが動かず首を傾げる子どももいます。その様子を見た先生からは、「早く動かなったところは、直してみよう」という声がかけられ、すぐに動き出す子どももいれば、困った様子の子どももいます。机の上ではなく、ロボットを動かしたスペースに端末を持ち込み、プログラムを修正するチームもありました。
力を合わせて動画を撮影
この日、最後にThink Big Spaceを利用したのは6年生。日本をはじめ、世界の皆さんに日本に誕生したThink Big Spaceを紹介することを目的としたビデオを撮影するためにやって来ました。
午前中に行ったオープニングセレモニーでは、インドの子どもたちが日頃から利用するThink Big Spaceを紹介したビデオが流れました。そのビデオと同様に、日本の原山小学校の子どもたちが日本のThink Big Spaceをプレゼンターとして紹介するビデオ撮影が行われました。

原山小学校の子どもたちが紹介するThink Big Spaceの映像は、後日公開予定です。
オープニングセレモニーには印西市市長なども参加
開所日当日には、印西市 板倉正直市長、印西市教育委員会 大木弘教育長、原山小学校 松本博幸校長、AWS パブリックセクター 官公庁事業本部 本部長の大富部貴彦とAWSのインフラストラクチャー・オペレーションズリーダー(東京リージョン)ゴーリ・ステファノも出席しオープニングセレモニーが開催されました。
AWSのインフラストラクチャー・オペレーションズリーダー(東京リージョン)のゴーリ・ステファノは、Think Big Space開設の狙いと今後の展望を次のように話します。

「Think Big Spaceは、科学・技術・工学・芸術・数学とSTEAM分野を実践的に体験することで、子どもたちが自分自身で考え、現実問題を解決していくことを最終目的としています。AWS InCommunitiesは、子どもたちが大きな視野を持ち、既存の価値観にしばられることなく、分野にかかわらず横断的に物事を考えられる人材に成長し、さまざまな可能性に好奇心を持って挑戦していくお手伝いを行っていきたいと考えています。このスペースは、原山小学校の皆さんだけでなく、他校の子どもたちにも利用していただく予定です。さらにコミュニケーションの輪を広げ、AWSの社員や世界中のThink Big Spaceを利用している子どもたちとコミュニケーションをとる機会も設けます」
この言葉通り、この施設を使ったさまざまな学習機会や、コミュニケーション機会の創出などを計画しています。
またAWSジャパン パブリックセクター官公庁事業本部 本部長の大富部貴彦が、Think Big Space開設にあたり感謝の言葉を述べました。

「自治体の皆様とデジタルトランスフォーメーション(DX)において連携させていただく機会が増えるなか、行政、教育、医療等の公共分野においても、デジタルスキルへの高い関心と期待をAWSとして日々感じております。今回、多くの皆様のご理解とご支援によって、STEAM教育を学び次世代の人材を輩出する施設をオープンすることができました。今後、さらに地域の皆様にとって有効な施設となるよう、長期的にご支援させていただきます」
次に印西市の板倉正直市長から祝辞をいただきました。

「科学・技術・工学・芸術・数学など幅広い教育環境であるSTEAM教育環境を無償で提供いただいたことは、印西市の子どもたちにとって本当に光栄なことです。未来ある子どもたちの探究心を、最新テクノロジーを使って育んでいただく試みと聞き、私自身も大変興味深く思っている次第です。今後、こうした最新技術を活用した取り組みが広がることにより、本市の教育環境がより質の高いものとなることを期待します。さらに、AWS InCommunitiesとの連携がさらに深まっていくことにも期待します」

原山小学校の松本博幸校長からは、次のような歓迎の言葉がありました。
「教育現場においても、科学技術、そして情報やデータの適切な活用は、子どもたちの豊かな成長と社会貢献の鍵となってくると考えられるようになっています。こうした状況の中、AWS InCommunitiesの皆様のご協力により、子どもたちがより良い環境で学ぶ機会を得たことを本当に喜んでおります。この環境を活かし、データサイエンス、情報デザイン、メタメディア、表現プログラミング、コンピュータとネットワークなどの領域に関するカリキュラムを開発し、第1学年から第6学年まで、系統的な学習を実践していく所存です。子どもたちが具体的で社会的な文脈から課題を見つけ、仮説を立て、検証していくことや、チームでの協力を通し問題解決する経験を積むことで、子どもたちの主体性、創造性が育成されていくよう支援していきます」

STEAM教育とは
STEM(Science, Technology, Engineering, Mathematics)に加え、芸術、文化、生活、経済、法律、政治、倫理等を含めた広い範囲でAを定義し、それぞれの頭文字をとった教育の総称。各教科等での学習を実社会での問題発見・解決に生かしていくための教科等横断的な学習を文部科学省でも推進しています。